3
父が勤めている会社に行ってみたが、父は数年前退職すると言いだし、退職した後の事は分からないと言われてしまったのであった。
数か所ある別荘地にも行ってみたのだが、既に別の持ち主に代わっていたり、荒れ放題だったりして家族の皆が居るような気配は全くと言っていい程感じられなかった。
兄二人の会社にも行ってみたのだが、一様に「急に退職をした、その後は分からない」というばかりであった。
心当たりのありそうな人に連絡したり、行ってみたりもしたのだが、一向に家族のその後が分かる有力情報はなかったのだった。
もっと早く連絡していれば、こんな事にならなかったかもしれないと焦りと不安を感じつつ、何も出来ない自分に歯がゆく…そして、行きづまり…考え抜いて探偵に調べてもらう事にした。
しかし、探偵ですら、時間が過ぎるばかりで、なかなか見つけることが出来ないのであった。
家族は元気で生きてくれているだろうと信じながら、仕事の合間に、かつて、よく行っていた海辺の別荘の辺りのホテルに一泊することにした。
こうやって、家族と共に笑いあったこの場所に来るだけでも、家族がすぐ近くに居る様な気がしたからだった。
車を走らせ別荘の傍に車を停め、別荘の外観を眺めた。
年月が経ち古びてはいるけれど、新しくここの持ち主になった方が時々来ては掃除をしているのだろうことが窺えて安心するのだった。
その時、クラクションの音が聞こえて、振り向くと私が停めた車が邪魔になり前に進めずトラックが私の車の後ろに止っていた。
「すみません、今移動させますから」そう言って直ぐにエンジンをかけた。
コンコン___。
麦わら帽子をかぶったおじいさんが私の車の運転席側の窓を叩いているのだった。
きっと怒られるのだろうとそう思いながら「すみません、今車をどけますから」と頭を深々と下げながら言う。
「君、そこの別荘の前の持ち主じゃねぇけ?」そのおじいさんは私の顔をジッと見て言った。
「はい、私のと言うよりも両親のでしたが…」
「やはり、そおかぁ。似ていると思ったんだでな。」
このおじいさんならもしかしたら何か知っているかもしれない…。
「あの、私の両親を見ませんでしたか?」
「最近見ないもんでどうしているかと思っていたんだがお前さんだと分かって安心したでさ、あの家に突然大勢の人が来てな「幸せになりたいなんだの言ってな、あのお方たちは上に行くために修行に入られる…とかなんだか聞こえてきたんでな」
「・・・しあわせになりたい…?」
「いや~誰だかは分からんが、たまに来るもんでな畑作業をしに来ると聞こえてくるで、なにやらお祈りをしてたんでよ」
「ここの別荘は、随分前に売却したんですよ」
「それでか、まぁお前さんの顔が見れて安心したで、ほんなら元気でな」おじいさんはそう言って車に乗り込んだのだった。




