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「ちょっと…や…めてよ」そう言う桜の目からは涙が溢れ出ていた。
とんでもないことをしてしまった事に気が付いた俺は、「ごめん」と必死に謝った。
「…」桜はそのまま何も言わず走って行ってしまった。
その後から桜が家に来ることはなかった。
薫さんに桜の事を聞いてみようとおもうのだが、自分がしてしまった事を思うと何もいう事が出来なかったのだ。
薫さんは、桜から聞いているかもしれなかったが、薫さんは俺に何も言ってこなかった。
薫さんの態度は何一つ変わることなく、普段通りだった。
一か月が経ったころ、会社から家に帰ると、久しぶりに桜が家に遊びにきたのだった。
最近、桜が来ない事を心配した母が、一緒にご飯食べましょうと誘ったのだった。
桜は家に入ると、家族全員と楽しそうに話していた。俺は階段を上り自分の部屋に入った。
…俺はどんな顔をして会えばいいのだろうか…。
コンコン__ッ、
「お兄様…」ドアをコンコンとノックしてくるのは桜だった。
「桜…」俺は部屋のドアを開けた。
「お兄様、ご飯で来たから降りてきてだって」桜は可愛い声で言った。
「あぁ…桜…俺…あの…あの時は…酔っていて…その…」
「ごめんなさい、私の方こそ…家でいっぱい考えたの。私ね別に良かったかもって」俺は直ぐにその桜の言葉の意味が分からず放心状態だったのだが、桜は俺の額にキスをしてきた。
俺は一瞬の間に何がおこったのか分からなかったが、俺の脳内は桜の得意のお花畑状態になっていった。
そして、俺は桜をベットに押し倒し、唇に熱いキスをながら右手は足首から少しずつ上へと伸びていく…。
その後、桜と結婚前提に付き合うことになった。
*
「なんだか嬉しそうだね」母はいつも以上に機嫌がよさそうだった。
「実はね、お兄ちゃん結婚前提に付き合う事になったのよ」
「結婚って…ちょっと待って…兄さん結婚するの?」
私の頭の中は真っ白になる。
あれだけ私が反対したのに…付き合う所か結婚なんて…。
…駄目、あの人だけは絶対駄目…すぐにやめさせなくちゃ…。
「もしもし、お兄ちゃん仕事終わったら駅前の喫茶店にきて」
「なんで?」
「話があるのよ」
「分かったよ」
喫茶店の中に先についた私は新聞を手に取り読んだ。
「おう久しぶり」声の先を見ると兄はいかにも幸せそうな顔で立っていた。
「結婚前提で付き合っているって本当なの」と聞いた。
「そうだよ、お前も応援してくれよな」兄はそう言うとデレンとニヤついた。
「冗談じゃない、その人の妹なんでしょう、やめた方がいい。絶対なにか裏があるから」
「おまえなぁ、薫さんと今まで一緒に住んでいるけど別に困ったことなんて起きてないだろう、そうやって人を信じないのはどうかとおもうよ俺は」
「海辺の別荘だってその人が勝手に売ったじゃない」
「お前ねぇいつまでそんな事言ってんの。しかもあの時結局プラスになったんだぞ」
「でも絶対おかしいわよ。他人の土地を勝手に売るなんて普通しないわよ」
「おまえ、そんな事ばっかり言うんなら俺は帰るからな」兄はそう言って私を一人喫茶店に残して帰って行った。




