嘘から出た誠
決裁書類がある程度まとまったら再び書類を各部署に届けに行く。
最後に検察庁に行った。何故検察庁が最後なのかと言えば、一番遠いからだ。
ここはいつ来てもにぎやかだ。電話が鳴り響き怒号が響きあっている。
「書類一式持ってきました」
「そこおいといて」
電話片手にこの場の司令官、憲兵総長が答える。
通りかかった一室の扉がなぜか開いていて、そこになぜかミュゲがいた。
さっきいたのを確認したので、いてもおかしくないと思うが、それでもなぜか驚いた。
ミュゲは巨大な机に座り、書類をひたすらさばいている。
その横顔は何となくカーター少尉をほうふつとする。嘘から出た誠ってあるんだなあと思ったがいったい何をしているのか見当がつかない。
何事か書き込んだ書類。速記で書かれているのでジャックには読めなかったそれを何枚も傍らに控えているタイピストの机に積んでいく。
タイピストはなんだか顔色が悪い。
タイピストがいきなり絶叫した。
「どうした」
あわてて憲兵総長が駆け付ける。なんだか三人でもめているようだ。しかしなんだか話に加わるのも何なのでそのまま帰ることにした。
その昼の休憩時間。昼食を取りに行こうとしてさっきのタイピストに出くわした。
何となく泣きはらしたかのように眼のまわりが赤い。
気まずそうにミュゲがあちらをちらちら見ながらそれでも目が合わないように眼をそらす。
「ええと、何があったの」
恐る恐るミュゲに尋ねた。
「いえ、私のミスです」
ミュゲが何となくしゅんとした顔をして見せる。
「憲兵総長が来るのを待っているんです」
ミュゲの顔色は少し青い。
「どうしよう、こんなことで報酬を減らされたら」
「報酬って、お金に困ってるの?」
意外なことを聞く。ミュゲは一応お嬢様な育ちのはずだ。そして高給取りの旦那がいる。お金に困ることなどあるはずがない。
「私の分はいいんです、でも弟が」
ミュゲには確か二人弟がいるはずだ。
ミュゲは沈痛な面持ちで顔を伏せている。
無精ひげがトレードマークの憲兵総長は一枚の書類を手にようやくやってきた。
「まあ、こんなことは想定外だが、報酬は基本三日分出す」
ミュゲの顔がようやく晴れた。
「すいません、仕事のペース配分を間違えてしまって」
「何があったんです」
憲兵総長にようやく尋ねた。
「いや、三日分の予定で、魔道関係の書類を置いておいたんだが、半日で一日半分終わらせてくれてね」
魔道関係は素人にはチンプンカンプンだ。そのため魔道士を呼んで書類を作ってもらうのだが、魔道庁の魔道士はいま人手が足りないというので有資格の魔道士を紹介してもらったのだそうだ。
その魔道士がミュゲだったらしい。
「このままいったら二日分しか報酬が出ないかと思って、どうしようかと」
ミュゲは書類を抱きしめて涙ぐまんばかりだ。
「あっちは」
ジャックがタイピストのほうを指差す。
「書類が裁く間もなくたまっていくのでパニックを起こしたらしい」
やれやれと憲兵総長は肩をすくめた。
だが、ジャックはその気持ちはよくわかると頷いていた。
ミュゲ、ハイスペック。




