一応有能なんだよな
この国は結構物騒だ。街の真ん中で鉄製のヘルメットをかぶったジャックは周囲を見回す。
さっきサンダース大佐は車載サイレンを鳴らした。
サイレンが聞こえたら周辺住民はすべて建物に入り、建物内部の世情をして立てこもっていなければならない。
この国の建物は頑丈なドアと窓は細かい金属製の枠にガラスがはまった形なので、施錠してしまえば侵入はできない。
窓がそんな形なのは一番大きな理由はガラス板が大きくなればなるほど技術的に難しくなって高価になるのと、社会情勢があまり安定していいないので、一枚ガラスの窓など危なくて使えないからだ。
締め出されて、適当な店や家のドアを叩いている人間もいたが、それは兵士達が押さえて、兵士達の中心部に今は連れ込まれている。
万が一テロリストが混じっていた時の判断だ。
政治犯が武器を手に国家主要施設を襲ったり、街中で無差別テロを行ったり、そうしたことは結構珍しくない。
新聞の死者何名なんて記述も、ああまたかで済まされてしまう。
彼らの文句の行き先は軍部が力を持ちすぎているということだが、そうして騒ぎを起こせば、軍はますますのさばりそしてテロリストはますますいきり立つ。
見事なイタチごっこだと思う。
ちょっと考えれば自分だってわかることなのに、あほ士官なんて言ってくれたなと前回捕まえたテロリストのことを思い出して少しむっかりする。
隣国ともいろいろきな臭い状況になっているというのに今軍部を倒してどうする気だ。国政が気に食わないなら別のアプローチを考えろと言いたい。
まあ国内の騒ぎを起こすテロリストの背後に隣国が糸を引いているらしいという噂も聞いているが、まだ確認は取れていないことになっている。
隣でボルト准尉は落ち着きなく周囲をうかがっている。
ぽっちゃりした体型ゆえ的になることを恐れているらしい。
体型ゆえに狙われるとしても主要な臓器は守れるよう、軍服の胴体は金属繊維で覆われた作りになっている。致命傷は避けられるはずだ。
だから気にするなといったらすごい眼で睨まれた。
とりあえず、今の段階では殺気は感じていない。
金属製のヘルメットはとにかく暑くて重い、視界も狭まる。これも本末転倒な気がした。
この国の機構が基本的に低いことに感謝すべきだ。春夏秋冬軍服は厚い。
首筋にひんやりとした風を感じた。
その時にはジャックは引き金を引いていた。
殺気を感じれば脊椎反射で引き金を引く。
銃を手にした民間人の恰好をした男が倒れていたのが視界によぎる。その時にはその向こうにいる男を撃っていた。
「とっさだったから急所を外せなかったな」
下級兵士達が撃たれた男を回収しに行く。
狙いをつけて撃ったように見えなかったが、二人とも射殺されていた。
下級兵隊達は化け物を見る目でジャック・ピータース准尉を見る。
「つうかもうちょっと普段から緊張感を持った顔をしてろよ」
ボルト准尉が文句をつける。
「あり?」
軽く見まわした窓の向こうでミュゲを見つけた気がした。
「ついに幻覚を?」
「どうした、お前」
ボルト准尉が胡乱な顔でジャックを見ていた。
「おっと」
何か包みを持ってサンダース大佐に向かって突っ込んでいく男を見つけた。たぶん中身は爆弾だろう。
「危ないなあ」
緊張感のない顔でそれを見守っている。
射殺できるが、そうしても爆弾は爆発するだろう。
サンダース大佐は右手の人差し指を顔の前で立てて、そして小さな輪を作りだし、それを男に向けて放った。
輪は人一人飲み込むほどに大きくなり、爆弾を抱えた男を包み込む。
壁にぶつかったように男は止まり、そのまま動けなくなった。
そして爆発、しかしその爆発も輪を出ることはなかった。
サンダース大佐は、魔道と軍人としての訓練を二つ同時にこなす稀有な人材だった。彼が何故魔道子とならなかったかと言えば。軍のほうが将来性があるからだったと言い放ったからだが。
そのため魔道士達からの受けはすこぶる悪い。
しかしどちらも片手間にできることではないのにそれを両方人並み以上にこなしてしまう彼は天才と言ってもいいだろう。
人格は欠損しているが。




