まだ続くんかい
「証拠はありますの」
ミュゲはにっこりと笑った。
「貴女、まさかあなたの部下の証言だけで、この人を讒言で有罪にできると思っていますの?」
甘く少女は笑いかける。
今まで見たことのない蠱惑的な笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってきた。
「いつまでそんなところでのたうっているの、さっさと起きなさい」
そう言って床に突っ伏したラウールに蹴りを入れてそれからサンダース大佐に向き直る。
「裁判ならとても証拠になりませんわ、貴方の子飼いの部下の証言一つじゃね」
いやになるほど魅力的な笑み。だが目は笑っていなかった。
「とりあえずだ、小休止しようじゃないか」
サンダース大佐の眼は目の前のミュゲよりも、ジャックとその仲間たちに向けられていた。
「ああ、そうですのね、時間稼ぎですか、その間じっくり首を洗ってらっしゃいな」
晴れやかに笑う。確かに、サンダース大佐直属の部下ジャックの証言ではかなり勝ち目は薄いのだ。
「どういうことだ」
地の底から立ち上るような低い声。しかしそれに恐れ入ってくれるようなかわいげのある部下達はこの場にいない。
基本的にサンダース大佐は自分の頭で考えられる人間しか直属の部下に取ってこなかった。
自分の頭で考えられる人間をそれでも従わせるには決して間違えてはいけない。間違えた瞬間彼らはてんでバラバラに自分の思う通りに行動してしまうからだ。
だから仕事ではサンダース大佐は間違えたことはない。
また、自分の頭で考えられる部下なら、いざという時には自力で何とかしてしまうので一面楽ができるのだ。
「大佐、無論私どもは自分達の職分を心得ております、大佐のプライベートにむやみに立ち入らないこともその一つです、ですが起訴される党言うなら話は別です、配置転換は私どもの進路にかかわりますので」
カーター少尉は胸を張って言う。その顔にやましさのかけらも見受けられない。
「つまり、私の墓穴を掘られるのを黙ってみていたということか?」
「半分は自分で掘ったようなものでしょう」
カーター少尉はそう言い切った。
真相を知っていて、わざと情報を止めていたおそらくは面白がって。
自分で考えられる部下達。ある意味便利で、ある意味使いにくい部下達はそろって悪びれない顔をしていた。
「まあ、今ならあのバカ息子落とせるんじゃないですかね、どこに隠してあるのか知らないけど、脅迫された写真を手に入れれば」
「そんなもん探している暇があるか」
「ああ。そうですね、だったらあちらを説得しないと」
「ああ、何としても説得してみせる」
「大佐じゃ無理ですよ」
「むしろ面白がって起訴に持ち込みますよ」
「崖から落ちそうになった大佐を見たらら指先を踏みにじる子だと思います」
全員が大佐にミュゲは説得できないと断言された。
「じゃあどうしろと」
[ここはひとつ彼に頑張ってもらいましょう]
そう一スミス少尉達はジャックを指差した。
「まあ、乗りかかった船と言うじゃないか」
ボルト准尉がポンと背伸びしてジャックの肩をたたく。
ジャックはほとんど終わった気でいたので、それを聞いて眼を丸くする。
「最後まで、責任を取りなさいね」
カーター少尉はそう言ってジャックの両肩をたたいた。
ジャックは頭脳というより本能で正しさを見分けております。




