やっぱり日ごろの行いが
案の定、話し合いにならなかった。
ものすごい悲鳴をあげて、耳をふさいでいたので、聞こえなかったが。後、ナルシッサとアザレアはたっぷりと楽しんで悲鳴をあげていた。
その上、マグナス憲兵総長を呼び出し、レイシック卿はサンダース大佐を逮捕するように命じた。
サンダース大佐とマグナス憲兵総長が友人関係にあるのだと知らなかったようだ。
もっとも、その内容を聞いて思いっきりひるんでいたが。
マグなる憲兵総長は最終的にサンダース大佐を連行して行った。
そんなマグナス憲兵総長を同情のまなざしでジャックは見送って行った。
「どうしよう」
ジャックが言うと、ボルト准尉が背伸びしてジャックの耳を引っ張った。
「お前も行くんだよ」
そう言われて、ジャックはあわててその場を立ち去る。
たった一人孤立無援のダンダルジャン卿がちょっと哀れだった。
マグナス憲兵総長はサンダース大佐の襟首をつかんでいた。
「どうするんだお前は」
ああ、本気で怒っている。
さすがに神経がゴン太のサンダース大佐も困惑顔だ。
「しかしだな、結局ミュゲは私に屈服しなくてはならないはずだ」
「なんでだ?」
「賠償金の問題だ、このままいけばあの一家は一文無し、それでどうするつもりなんだか」
「あのな」
歯の隙間から押し出すような低い声で、マグナス憲兵総長は言った。
「あの子、やればできる子だぞ」
言われた意味がわからないのかさらに困惑顔になる。
「バイトであってるんだよ、国家資格持ちだ」
高給取りになれる国家資格をあの若さでミュゲが所持していることをやっと理解したらしい。
「なんだと?」
「あの子はな、やろうと思えば、一文無しになっても自力で弟達ぐらいなら余裕で養えるってことだ。お前の楽観の原因の一つが消えたな」
どうやら自体が理解できないらしい。
「じゃあ、なんであの女は何も言わなかったんだ」
サンダース大佐はそう言って顔を落とす。
「文句がないはずがない。もし何か言っていたらこちらも対応を考えようと思っていた、だがあの女は何も言わなかったんだ」
サンダース大佐は一息ついて、それからさらに言葉を続ける。
「なにも言わずただ唯々諾々としている相手に何をしろと、あの女はまったく俺を無視してただ黙っていただけだ」
いえ、無視なんてしていませんよ、と心の中だけでジャックは呟く。はっきりと覚えているあの時のミュゲの言葉。「私にも誇りがございます。何故私があの程度の男と同列に並ばねばならないのですか」
相手にもならないと見下されていたんですだからミュゲがサンダース大佐に泣きついたり助けを求めるなどあり得なかった。
だが、現実を教えるつもりはない。そうすれば事態は確実に悪化する。
「このままいけば必ずお前訴えられるぞ、その場合お前の前途は」
マグナス憲兵総長は軽く自分の首に手刀を当てた、しばらくそれを見て沈黙する。
「とにかくラウールだ、あいつを何とか口をふさげば」
「一つ、聞いておきたい、本当に強姦しろなんて言ってないんだな?」
「それは言ってない」
「証拠は?」
サンダース大佐は押し黙る。
「俺ですらちょっと疑ったくらいだ、お前の日ごろの言動を知る人間ならあっさりと信じると思うぞ」




