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ある横柄な上官を持った直属下士官の上官並びにその妻観察日記  作者: karon


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彼女に慈悲はない

 サンダース大佐のお供でどうやら国中の将校が集まる催しについて行くことになった。

 テロや防犯ならびに自然災害の救助活動まで幅広い勉強会だが、お偉方には出る杭叩き大会だ。

 絶賛叩かれ中のサンダース大佐は最近結婚した十六歳の乙女の話でつつかれている。

 まあただでさえ目障りな大佐が、レイシック卿の十六歳の美少女と結婚、聞いているだけで殴りたくなる話だろうとジャックも思う。

「しかし、レイシック卿はご息女のことを自慢しておられたが、貴殿と結婚するとはな」

 そう言って木で鼻をくくったような態度をとっているのは金髪の巻き毛に緑の瞳、その肌にはしみ一つないその形は美の極み、軍部の美魔女と呼ばれるローリング中将だった。

 若かりし頃は大佐と同様出る杭として叩かれ、さらにその美貌ゆえセクハラの嵐を受けた彼女はそのセクハラの報復として様々な上層部の秘密を探り当て、それとセクハラの証拠をもとに軍上層部を恐喝して今の地位を築いたとされる。

 彼女にセクハラをして上層部は己の行いを深く悔いたが後の祭りだ。

 そんな彼女は年配の上層部のご夫人方との社交をかかさない。

 セクハラの証拠をいつでも渡せるのだという示威行動と情報収集のためだ。

 そのあたりからミュゲのことを聞き出したのだろう。

 現在は叩く側に移り、今一番の標的がサンダース大佐だった。

「レイシック卿が自慢するほどの息女ならこちらで引き取りたいと思っていたが、貴殿の妻におさまる程度の女では意味がない」

 ため息をつくさますら麗しい。これでもうすぐ五十に手が届く年だとは。

「親の欲目とは恐ろしいですな、彼女が才気渙発に見えるとは」

「そんなところだろうな」

 ミュゲをけなしつつ、サンダース大佐を貶める発言だ。

「まあ、結婚式を楽しみにしている」

 そう言って巻き毛をなびかせ、軍部一美しいと呼ばれる将軍は去って行った。

 将軍職にある女性は彼女一人なので、おそらく退役する日まで、その呼び名は固定されているだろう。

 一応軍属なので見知った顔を見つけた。

「ラウール」

 書記官の息子どこそこのお偉いさんの側近をしている。その仕事内容は秘密と言うよりしているかどうかも怪しいが。

 妻をあてがった男だ。どういうわけか最近サンダース大佐と眼が合うたびに顔がこわばる。

「そう言えばあれとはうまくいっているのか」

 そう水を向けると顔をそむけながら頷く。

「うまくいってるにきまってるだろう。彼女は素晴らしい女性だ」

 ぐふっとむせる声が聞こえた。

「なんか喉の調子が悪いんですよね」

 自分の喉を撫でながらのっぽの赤毛がそう言って顔をそむける。

「だけどどうして彼女を」

「だから処女は面倒くさいんだ、もうすぐ初夜だから念入りに仕込んでやってくれ」

 何となく部下達の眼が冷たいのはわかっていた。だが彼女に対する反感はなぜか消えない。

 ダンダルジャン卿のことを思い出す。

「もうすぐレイシックが帰ってくる。そうしたらミュゲちゃんとの婚礼で、どんなドレスを着てもらおうかなあ」

 浮き浮きとドレスカタログをめくるおっさん。ただの変態だと思った。

 式を挙げる場所は決まっている。これから細かいところを詰めていくことになっている。面倒くさいと思うが暴走したおっさんは止まらない。


 翌日、新聞を手にジャックは来るべき時が来たことを悟った。

 新聞の見出しはサンダース大佐のご乱行。一緒に写っている女性といかがわしい場所へしけこもうとする写真がでかでかと載っていた。

 そしてその女性が問題だった。

 大佐つぶしの筆頭の少将の若い後妻だった。

「あの子は情け容赦と言う言葉を知らないらしいな」

 その写真の下の文面には、大佐が写真の女性以外にも複数の女性とそのいかがわしい宿を使っていたと書かれている。

 この国には新聞は複数ある、別の新聞にもそのような記事があるのでは。

 半ば確信に満ちた考えで、別の新聞をとっているボルト准尉のもとに走った。

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