嵐の前の静けさ
最終的に二人はすべてを吐かされた
たとえ見た目が凡庸でもさすがは軍人。林檎を素手でジュースにできるその握力は凄まじい。
ギシギシいう首と頭を抱えながら洗いざらい吐いた後、二人は壁に寄り掛かって、大きく息を吐いた。
「なるほどな」
「まあ、普通離婚を考えるよな」
鏡映しの双子はそれぞれ腕を組んで頷いている。
「お前達、とりあえず、今日聞いたことは他言無用だ」
「しゃべった場合お前達の無事は保証しない」
マティアスとマディソン・スミスは順番に話す。
「ええと、大佐に報告はしないんですか」
「その必要はいざという時に考える」
「そうだな、離婚したい気持ちはよくわかる」
今大佐にミュゲの野望を伝えればミュゲの望みが断たれる可能性がある。ミュゲと大佐をこのまま添い遂げさせたくないのはみんな同じだ。
「いざという時ですか」
意味がわからず首をかしげるジャックと、ああと何事か思いついたボルト准尉、その二人を見回して何度も念を押す。
『他言無用だ』
完璧なユニゾンでそう伝えると二人はすたすたと歩いて行く。
「いざという時って何のことだ」
一人だけ意味がわからないジャックが首をかしげている。
「お前な」
ボルト准尉が呆れたような眼でジャックを見ていた。
ミュゲはアザレアがリストアップしていた書類に目を通していた。
「さて、どれから始めようか」
自分の知る知識と、情報とつなぎ合わせ、最優先候補を絞り込む。
女性と写るサンダース大佐。その女性のすべてが既婚者だ。
そして第二候補、それは資産家の娘達が写っている。
さて、どちらから始めようか。
そう思いながら紳士名鑑をめくる。
誰を利用するのが一番ダメージを与えられるか、シュミレーションしてみる。
ひと月の間にきちんと決めなければならない。
軍部のお偉いさんの若い後妻という項目に眼を止める。
とりあえず、このあたりを狙えばダメージが大きそうだ。
手持ちの手帳のカレンダーに日付を書き込む。
「大体こんなところか」
ミュゲはそう言って、大事そうに手帳をしまいこむ。
「後は、そうそう、今日弁護士の先生と会うんだわ」
サンダース大佐が、仕事と、遊び歩くのに忙しくてほとんど家にいないのは大変にありがたい、おかげでミュゲはそれほど相手の目を気にせずに、自由に行動できる。
「まあ、それがわかってて結婚したんだけどね」
相手が誠実で、それなりの相手ならミュゲはどんな手を使っても結婚を回避しただろう。踏みつけにしていい相手、それが今回の結婚に求めた最大の条件だった。
ミュゲはいそいそと出かけるために着替えを始めた




