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ある横柄な上官を持った直属下士官の上官並びにその妻観察日記  作者: karon


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なんも言えねえ

 しかし、ここで手詰まりだ。ある程度ダメージから解放されたら体格差が出る可能性がある。

 どら息子もそれを待っているのだろう。

 そこで扉が開き誰かが入ってきた。

「嘘、鍵を」

 踏まれた首で苦しい息をこらえながらどら息子がうめく。

「魔道士に鍵など意味はないのを知らないの」

 ミュゲが馬鹿にした顔でそう言い放った。

 入ってきたのはミュゲと同年代の少女ばかりだ。

 一人、ミュゲとよく似た金髪の少女がいた。何となく顔立ちも似通っている。

「ナルシッサ、よく来てくれたわ」

 先頭にいた金髪の少女に嬉しそうに声をかける。

「ちょっとミュゲ、いい感じの証拠写真が撮れそうだったんだけどお」

 黒髪に肌の色も少し浅黒いが、いわゆるスポーティな感じのかわいらしい少女が口をとがらせる。

「オルタンシャ、いつも証拠写真集めに頑張ってくれるのはありがたいけど、こっちのほうが大物なの」

「ああ、こいつ知ってる、軍部のお偉いさんのどら息子だ」

 キャルルンとした感じの栗色の髪の少女はややたれた丸い眼を見開いてどら息子の顔を確認する。

「アザレア、つまりこいつの素性を知ってるのね、じゃあ、ますます利用価値があるわ」

 ミュゲは嬉しそうに首を踏むつま先に力を入れる。

「とりあえず、あたしが押さえているうちに手足を縛って拘束しちゃって」

 オルタンシャと呼ばれた少女が手元にあった大きめバックから細い針金を取り出して、手足の指で拘束する。

 プロ仕様の拘束技にジャックは感心してしまった。

 そしてナルシッサと呼ばれた少女が再び鍵をかけなおす。

 拘束が終わったのを確認してミュゲは足を上げた。

「で、どうしたのこいつ」

 アザレアがツンツンと転がされたままの頭を蹴飛ばしながら尋ねる。

「それがね、私の夫に、依頼されたんですって」

「何を」

 ナルシッサは真っ赤なドレスの裾を直しながら尋ねる。

「私を強姦しろって」

 一気に空気が凍りつく。

「へえ?」

「だから、こいつにサンダース大佐がこういうことを依頼されましたって証言させれば、たっぷり巻き上げられるわ」

「そうね、ほんと私の言ったとおりでしょ、どんな眼に合わそうと良心の呵責なんて一ミクロンも感じる必要性のない男だって」

 柔らかい巻き毛をかき上げながらアザレアがそう言った。

「お前ら私がお前らの言うことを聞くと思っているのか」

「さっき人のことを脅迫したくせに、自分はされないと思ってるわけ?」

 ミュゲが呆れたという風に言うと、後頭部を踏みにじる。

「恥ずかしい写真撮りましょうか」


 彼は花から花へと渡る蝶を自任していた。しかし彼はうっかりハナカマキリにとまってしまったらしい。イヤハナカマキリにとまった蝶は貪り食われるだけだが、彼はひと思いに殺されたほうがましという目にあわされている。

 着ているものをズタズタに切り刻まれ、パンツ一丁にされた後、改めて縄で縛りあげられ、それからまず赤いドレスのナルシッサが後頭部を踏みつけているポーズで写真撮影は始まった。

 ナルシッサの腰から上は写さないで、ハイヒールで踏まれたどら息子のどアップをとっているらしい。

「小道具あるよ」

 オルタンシャが持ち出したのは皮鞭だ。

「護身用だけどね」

 鞭の先端に小さめの刃物がつけられている。誰だこの娘を素通しさせた警備兵は。

 鞭で首を絞められているポーズ、それにちょっと味付けをとアザレアが赤い口紅で『私は変態』と書き込んだ。

 ほぼ拷問の写真撮影はしばらく続いた。

 ジャックは確信した。この写真が表に出されたら彼は自殺できると。

「この写真をこの人に送ってほしくなければ私達の言うことを聞いてね」

 ナルシッサが差し出した写真を見てジャックも思考停止した。

 その写真に写っているのは一人の精悍な男性だった。

 年齢は四十に手が届くくらいか。がっちりとした体格は日ごろの節制とトレーニングの成果か。問題は彼のファッションセンスだろうか。

 ふりふりブラウスにフレアスカート。フレアスカートの股間の場所にどうしてゾウのアップリケが必要なのかじっくりと話を聞きたい。

 縛られ拘束されているけれど、どら息子が硬直しているのがわかる。

「いいでしょう、全部サンダース大佐が悪いって言うだけなんだから」

 聖女の笑みを浮かべてミュゲはそう囁いた。

「サンダース大佐に全部かぶせればいいのよ」

 早々と周囲の少女達も頷く。

「そうだ、全部あいつが悪いんだ」

 絞り出すように呻いた。

「そうよ、あの男がいかに極悪非道かきっちり証言してね」

 ミュゲがそう囁くのを聞いて、ジャックはこれ以上見ていられなくなり、窓枠から手を放した。

 三階からの着地を膝の屈伸だけで逃したジャックを不思議そうに見ていたボルト准尉が尋ねる。

「何やってるの、お前」

「聞かないでくれ」

 しばらく何かを話そうとする気になれなかった。

ミュゲ 鈴蘭 ナルシッサ 水仙 アザレア 躑躅 オルタンシャ 紫陽花 すべて有毒植物です。

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