バトルロワイヤル初日に
「ちょっとぉご主人様ぁ」
逃げる選択をした自分を情けだとは思わない。
何故ならば、逃げる選択によって、新たに様々な選択が出て来るからだ。
今自分がどう言う常態かを口に出して言うのであれば、さながら戦略的撤退、と言う言葉が似合うだろう。
つーかそれ以前に同じ大罪が数人同士で戦うっておかしくね? 確実にこちらの大罪人がまけるじゃん。
「あ~、それ差別ですわよぉ、私その言葉に少しだけ【イラッ☆】がでて来てしまいましたわぁ!」
五月蝿い!! そうでもしないと勝てるものも勝てないんだよ!!
この戦いに勝利すれば、どんな望みも一度のみ叶う権利が貰えるのだ、もし数人相手に戦って買ったとしよう、だが、また後から大罪がやって来たらどうする?
下手に戦っていれば、少なからずそんな状況はきてしまう。
ならば、今はこうして戦う事は避けて、出来るだけ体力を温存にする事がベストだ。
幸いなのか不幸なのか、時間制限は無い。
だとすればこれから先は持久戦、まず先に行うべき事は食料の入手と隠れ家である事はまず間違いは無い。
「ふぅん、じゃあ戦うその日が来るまで隠れるの?」
当たり前だ、何のためにそう説明したと思ってるんだ、尻尾掴むぞ!?
「じゃあごしゅじんさま、今がその時ですね♪」
―――
…………はい?
一度立ち止まり、恐怖を抱くように後ろを向く。
突如訪れる背筋の氷結に意表をつかれ、だんだんと顔色が青くなる。
血の気を引くとはまさにこの事、光の届かない駐車場で、歪曲した剣を構える伊達男が立っているのだから。
「強欲の罪、ドロップ=ディス=ア=ガイ、私の願い故に、貴殿達には悪いが、死んで貰うとするよ」
その歪曲した剣を右手に持ち替えると即座に腰に取り付けた小剣を取り出し、二刀流の構えをする。
いやいやいや、卑怯だろ、こちらにおられるトール様は巫女衣装に似た感じのお色気むんむんの服装はしているが、そう言う剣とか武器とかは持っていないんですけども!?
と、言うかー魔術師と自称するならせめて杖とか持ってくれよ!!
「いやや………恐らく、相手の方は常時解放型といぅ、拘束具が外れて初めて力を宿すタイプの剣なのでしょうねぇ」
そんなのあったの!?
じゃあ、トールさん、貴方はどんなのをお持ちで!?
「私のは、拘束具を解いてくれなければ、自らの口から言う事が出来ません故にぃ」
えー………。
「悪いが、冗句を見に来たのではない、化け犬め、即座として私の剣の錆びにしてくれる」
「まー!! 聞きましたぁご主人様ぁ、いま私の事を化け犬と言っちゃいましたよあの方ぁ!!」
まあ、似たような物じゃぁ…………。
「似ていません!!まったく!!これっぽっちも!! 私少しばかり怒りが込み上げて来ましたわぁ………拘束具の開放をお願いいたします」
く、まあ確かに、武器ありと武器なしでは此方に不利がある。
ならば、遣うしかない、自分は手の甲を掴み、拘束具を自分に向ける。
そして口に出して言う、"拘束具を解除する"と。
「うふふ♪、では始めましょうか、私の拘束具最初の能力『 銀狼百夜』の力を」