ルリエントールのステータス
いい香りがする。
例えるのならば、果物の香りとか、香水の匂いとかではなく、何処か暖かさを感じる匂い。
頭部を優しく包み込む、人肌の温度を保った枕はとても柔らかく、そこはかとなく弾力がある。
「ちょっとぉ? 少し、起きてくれないかしらぁ?」
そう、何よりも時折聞こえる、この色っぽい声が………!?
「あらぁ、やっと起きた?ご・しゅ・じ・ん・さ・ま♪」
誰かこの状況を説明してくれ、目が覚めたら目の前に妖艶な笑みを浮かべる女性が自分に膝枕をする状況を自分に説明してくれ。
と言うかこの声は、あの七つの扉、色欲の所から聞こえた声にそっくり………。
「初めましてぇご主人様、私、色欲より参られましたルリエントール=ヴァシュヴェジュ、と申します」
そっくりどころかご本人出ちゃったよやだなもー!!
え、何?ルリエントール、バシュべジ!? 言いにくいよ名前が!!
「そうですかぁ?では、先程の失礼を謝らせてもらう代わりとして、トール、とお呼びください」
と、ルリエントール、及びトールは無邪気な笑顔を見せ付けて、その犬耳をペコン、と前に曲げた。
――――みみみみみみみみ耳がぁああ!!!?
「あぁ、失礼、申し付けていませんでしたが私、こう言う感じです」
と、右手の指先をスッと横に降ると、トールの右側に何かが表示された。
【真名】ルリエントール=ヴァシュヴェジ
【性別】女性
【階級】魔女
【大罪】色欲
【拘束】
第一拘束:『???』
第二拘束:『???』
第三拘束:『???』
【経緯】
ドゥルフ王国の外れの森出身。
狼と魔法使いの間から生まれたハーフマジシャン
【性能】
大罪:色欲
現段階で定められた「罪」。
彼女が行動を起こすたびに色欲が糾う。
呪い:妖艶な笑み
幼少の頃より執着された笑みに魔を持たせる呪い。
微笑を掛けられた異性は精神C以下であれば彼女の虜に陥る。
祝福:邪神の加護
邪神によって得られる祝福の加護。
闇属性の攻撃を完全無効にする。
ハーフマジシャンって何だよそれ!?
そこはハーフだけでいいじゃんか何でマジシャンにこだわったんだよ!!
「申し訳ありませんご主人様ぁ、現段階では教え出来ません故、もっと親愛度を高めてからお聞きください♪」
何でそこだけギャルゲ風!? おい誰か頼む、他のヒロイン攻略させてくれ!!
「因みにセーブせずにロードは出来ません♪ と言うか全てのセーブデータは自動的に私の攻略ルートで一杯です♪」
ギャルゲじゃ無かったこれドラ○エだ、主に呪いの装備状態だよこれ、教会行かせてくれぇえええ!!!
「と・は・まあ、冗談はこれくらいにして、続いては此方をご覧下さい」
左指先でスッと横に降ると、今度は左側に表示される。
筋力D
俊敏E
耐久D
精神B
幸運C
これは、ステータス的なアレか? 何故かそう思わせるような順列に、何かしらのゲーム感覚を思い出させる。
「所謂私の能力とステータス、貴方は私のご主人に成りました故、ホラ、右手の拘束具をご覧下さいなぁ」
言われるがままに右手を見ると、確かに手首辺りに拘束具が三つ付けられている。
拘束具と言われる物はまるで高級な腕時計の様な革製で作られていて、実に神秘的な造りになっている。
それが三つ。
これが拘束具?
「そうですわぁ、貴方の手首に巻かれた拘束具、その三つ全てが私の力、もし、私が最強の力を出したければ、全ての拘束を外す事をお勧めしますぅ♪」
と、満面な笑みで言われる。………ハッ。しまった、彼女の笑みを見ると虜になるんだ!!
「あらぁ、大丈夫ですよぉ、何故かご主人様にはかかりませんからぁ、ま、私の魅力に掛かっているのなら別ですがぁ♪」
―――うん、確かに、綺麗と言うよりはかわいいという言葉がトールに似合うであろう。
狼耳が途轍もなくチャームポイントになっていて、尻尾は動くたびに左右に揺れる。
まさに本来狼を見ればかっこいいと思う事もあるが、彼女が狼耳と尻尾を持てば、それが百八十度、かわいらしさになる。
そこだけは彼女の言う事に頷く他無いだろう。
「あ、あうぅうぅ………ちょ、ちょっと恥ずかしいわぁ………褒めるとは思っていなかったんですものぉ」
自らの尻尾を薄桜色の唇で食みながら抱きしめる。
その行動全てが愛らしい玩具に化す。
自分はただひたすらに彼女の姿を眺めながら愛でていると、ふいに自分が今何処にいるか気になってしまう。
トールは知っているかどうか聞いてみると、尻尾を食むのを止めて、そのはりのある頬を紅く染めながらブツブツと告げる。
「日本のぉ、繰儀市ですよぉ……」
…………ホワイ?
じゃぱにーず、いん、くるぎしぃ?