「救い」
全て、ノンフィクションでは、ありませんが、大体、体験に基づいた手記です。
コンサートに妻があらわれた。
重症患者の妻。
医師の判断で、声をかけてはならないことになっている。
視線を送れば、届きそうな距離にいるふたり。
「おーい、ここだよ」
心の中で、叫ぶ。
東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」をフルートで奏でる音色が聞こえてくる。
感情が込み上げてきて、瞳にうっすらと、涙がにじむ。
フルートは、私に、妻を想う余韻を与えて、演奏を終えた。
すると、ふと、妻が気づいた。
合図する妻。
私も喜んで手を振る。
一瞬の「幸せ」を感じた。
先に私が会場をあとにする。
妻は、看護師に付き添われながら、出ていくだろう。
また、もとの日常に戻るのは、何年先になるのか。
「生きてさえいれば、何とかなる」…そう、思えた。