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ツギハギ  作者: 9ma
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ホットケーキ


「はーい、今日のお題はホットケーキ!家で作る人もいるんじゃないかしら?簡単なので、ちゃちゃっと作って下さいな。早い班は生クリームやイチゴで飾り付けもしてねー。フルーツなどの材料は早い者勝ち!よーい、どん!」


無駄にハイテンションでニコニコと告げると、可愛く首を傾げて手をパンと鳴らす。


大体理解はしましたよ。でも相変わらず適当だな、先生よ。


そして、一般的な男子高校生は家でホットケーキを作るのが日常で当たり前なのか?いや、そんなはず…


まぁ、きっと作るのが当たり前な奴もいるだろう。例えばそう、すでに材料を一通り用意し分量を測り始めている河原崎とか。


「まさか河原崎、料理も得意?」


偶然同じグループになった俺は、説明書も見ずにテキパキと手を動かす様子を眺めながら問いかける。


男女混合のグループにも関わらず、俺のグループの女子が女子力を見せつけることを忘れて見惚れるくらいに、彼の手順は滑らかだ。


「さすが、河原崎。」


家庭科で主に言われるようになったこの台詞。あまりに器用な彼に、最初はからかっていたクラスメイトも最近では、心底感心している様子。ちなみに、今は俺が呟きました。


「ぬ、温井。見てるんじゃなく、手伝ってくれないか…。」


グループのメンバーが皆で見ていることに今更に気付いたのか、河原崎が戸惑った表情でこちらを見やる。


その中でも声をかけやすかったのか、俺の名前を名指しして材料の入ったボールを手渡された。


あ、申し訳ないです。


「ごめん、つい見とれてた。はい、みんなもちゃんと一緒にやろー?」


素直に謝ると、グループの他のメンバーにもそれぞれ役割を分担する。


それを見て河原崎が安心したように、息をついた。


大きい身体といかつい顔の癖に、どこかビクビクと周囲の反応を伺う姿は、まるでハムスターのようだ。


今だって、自分しか作ってないことに気付いてどうすれば良いか解らず、でもみんなに率先して指示は出来ないため困ったように眉を下げてこちらを見る河原崎は助けを求める小動物にしか見えなかった。


そんな小動物的な河原崎の手にはすでに出来上がった生地があり、今度はそれをどうしようか迷っている。


「焼かないの?ほら、河原崎の横にホットプレートあるけど。」


思わず俺が声をかけると、河原崎はハッとしてホットプレートに近寄る。温度を確認して、いざ焼くのかと思うと困った顔をして俺の元まで戻って来た。


「あ、のだな。…ホットケーキ、どうやって焼けば良いんだ?」



はい?


料理得意なんだよね?

今までの手際の良さは何?


予想外の質問にフリーズしていると、そんな俺を見て河原崎が慌てて質問の内容を言い直した。


「ちがう!家で…普段は妹や弟に好きな大きさや形に焼かせるから、どのくらいの大きさで何枚焼けばいいんだ、って聞きたかったんだ!」


説明するために家族のことを持ち出して、普段妹や弟にそうやって焼かせてあげることまで無意識に暴露する河原崎に笑みを浮かべる。


家ではそうしてあげるのか。

なるほどな、優しいお兄ちゃんな訳だ。


「あ、あー!そういうこと!びっくりした、ここまで料理出来て、まさかの焼き方を知らないのかと…」


「そんなわけないだろ!」


間髪入れずに返事が返されて、恥ずかしいのか俺に怒っているのか真っ赤な顔の河原崎。



いやー、可愛い。


…え?



ふ、と、心で思った事に自分で疑問に思う。


(可愛い、河原崎が?)



素直だな

とか

優しい

とか

器用だな

とか。


いろいろひっくるめて、最近、俺が河原崎に思うことは”可愛い”?


到達した答えは、何故かすぐに納得した。自分の心にすんなり落ちて来た。


さっき、ハムスターみたいだ、なんて思ったのが証拠。


「ぷっ、河原崎、イチゴでウサギさん作ってるじゃん!かっわいー!」


「う、うるさい!先生が飾りつけろって言っただろ!」



もっと知りたい。

もっと近付きたい。


イチゴのウサギより

焼き立てのホットケーキより


甘くて可愛い、君。
















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