1:美容師♂×大学生♀
「ねぇ、カットモデルになってくんない?」
彼氏との待ち合わせ場所で声をかけてきたのが私たちの始まり。
あれから1年。私は、2.3ヶ月ペースでいまだに彼のカットモデルをしている。
「こんにちは。元町さんいますか?」
学校が終わり、まっすぐここ《soleil》にやってきた花梨。
「あら、辛川さんいらっしゃい。ちょっとまっていね、いま店長とミーティングしているから」
その場にいた美容師さんが言ったので、花梨は店内にあるソファーに座りカバンから本をだし読み出した。
「花梨ちゃん、もう来ていたの?」
しばらく本に集中していると奥から二人の男性が出てきた。
ひとりは赤みのかかった茶髪、無造作に後ろで一つにくくっている。
かなり顔の整ったかっこいい男性だ。
ちょっと軽いのがたまに傷・・ここの店長さんだ。
もう一人は、店長とは正反対で短髪で髪をツンツンたてている。
色は、黒のかかった茶髪。
とても落ち着いた大人の男性って感じだ。
花梨に声をかけてきた美容師さん。そして私、辛川 花梨の好きな人でもある。
二人とも身長が高く、かっこいいことから雑誌にも紹介されていたりする。
もちろん腕だっていいんだけどね。
「花梨ちゃん、今日これからひとつ予約があるけど、どうする?また日をあらためる?」
元町さんの申し訳なさそうな顔・・・
きっと急遽予約が入ったのだろう。
「待ちますよ。この近くに友人がバイトしているからそこで待っておきますね。」
そういい、私はカバンに本を直し立った。
「ごめんね。終わったらすぐに迎えに行くから。」
なんてもったいない申し出
私は、すぐに友人のバイト先であるコーヒーショップを教えた。
「わかった。なるべく早く終わらせるから。」
私は彼に手を振りお店を後にした。
「豪、急にごめんね。この時間しか取れなくて。」
出入り口ですれ違った綺麗な女性。
彼女が予約の人か・・・
「いいえ、田口様のためでしたら。」
お店の中から聞こえる彼の声、聞きたくなかった。
他のお客さんにいうセリフなんて・・・
私は、急ぎ足でその場から離れた。
「雅カフェモカ」
友人の雅のバイト先にきて。
オーダーをした。
「ったく、感じ悪いな。なんだ、ついにふられたか?」
カウンターの中で ニタニタする男
私の幼馴染の雅だ。
「ふられていません。」
彼が言っている相手は、もちろん元町さんのことだ。
「いま、予約が入っているから 待ってるの。雅、もう終わりでしょう?時間つぶしに付き合って。」
目の前にでてきたカフェモカをスプーンでかき混ぜながら言った。
「はいはい。もうちょっと待っとけ。」
時計の針を見ると19時になる10分前だった。
私は、雅のバイトが終わるまで 本を読んでいた。
「お待たせ。外に移動するか?」
バイトが終わり着替えてきた彼が自分の分と私の分を持ち外のテーブルに移動した。
私たちは、なんてことのない話をしていた。
雅との会話に夢中になっていて気がつかなかった
彼が遠くから、私たちを見つめているのに・・・
「なぁ、あれって、お前の美容師さん??」
話している最中、雅が私の後ろを指差しながら言った。
振り返ってみると、彼がいた。
私は、本当に迎えに来てくれたことが嬉しくて 飛び上がって叫んだ。
「本町さん!!」
バタバタと、テーブルを片付け
「じゃあね。」
と雅にいい、私は彼の元に向かった。
「もぁ、声をかけてくれればいいのに。」
私の言葉に苦笑いする彼
「どうかしました?」
彼の態度が気になり聞いたが、どうもしていないとしか言わなかった。
美容室までは、本当にすぐだった。
「今日は、他のスタッフには帰ってもらったから。」
私を椅子に促し言った。
いつもは勉強とか言って新人さんとかがそばにいる。
私は二人っきりのことが嬉しくて浮かれていたせいか、彼がいつもの態度と違うことに気が付かなかった。
しばらく会話もなく、彼はカットに集中していた。
私は、鏡越しに彼をずっと見ていた。
すると、視線に気が付いたのか、目が会うとニッコリ微笑み口を開いた。
「迷惑かもしれないけど、聞いてほしいことがあるんだ。」
鏡越しに目が合ったまま・・・
私が好きになった真剣な顔をして
「花梨ちゃんのこと好きなんだ。」
思ってもいなかった彼からの言葉
「私も好きですよ?」
自分でもびっくりするくらいさらりっと気持ちをいうことが出来た。
「えっ?あの・・・恋人として付き合ってほしいって意味だよ?」
私の言葉に焦っている彼
私は彼の答えにムッとした。
「わかっていますよ。それ以外だったら、二度と元町さんと口聞いてあげませんよ。」
頬膨らませ彼を鏡越しに睨む
「でも、彼氏いるんじゃ・・・」
手に持っていたはさみを置いた。
確かに、彼氏との待ち合わせ場所で元町さんとは会った。
でもあの時はドタキャンされ愚痴を言うために雅を呼び出した。
その彼氏とも、元町さんと再会したときには別れていた。
「いませんよ。」
そういったがなんか納得してない様子
「さっきの彼は?」
元町さんの言葉に私は納得してしまった。
「もしかして、あの駅で一緒にいるのをみた?」
元町さんはなにも言わずただ首を縦に振る。
「あ゛ぁ~彼は幼なじみです。あの日、確かに彼氏との待ち合わせっていいましたね。あの時、ドタキャンされ愚痴を言うために彼を呼び出したんです。彼氏とは、すぐに別れました。なので今は、彼氏いない歴1年です。」
カットしている途中だが、座ってなんていられない。
鏡越しじゃなくてちゃんと顔を見たい。
彼は、呆然と立っていた。
「元町さん、カットが終わったらご飯食べに行きません?」
にっこり微笑み 彼の手を取っていった。
「はい。」
きっと私の言葉を理解していないだろうが返事をしたって感じだろう。
「そのあと、もう一度さっきの言葉をいってください。鏡越しなんかじゃなく直接」
ねっ!と彼に言い聞かせる。
しばらくするとやっと意味が理解できた様子でぎゅっと抱きしめられた。
「もう一回といわず、何度でも君が望むだけ言うよ。」
Fin
あとがき
美容師さんとの話が書きたい!!
ただそれだけですww
本来、豪はこんなにヘタレになる予定ではありませんでした。
なのに・・・
なので、キーワードに『ヘタレ』をいれましたww
07.2.19に自サイトに掲載したものです。