9:社会人♀×社会人♂(前編)
11年ホワイトデー企画 に書いたものです。
まだ暑いのにこの時期に投稿します・・・・( ´∀` )
いったい何がいけなかったんだろう・・・
つい先ほど目撃した現場から逃げるようにいつも行くバーにやってきた。
いつものようにカウンターに座りマティーニを頼んだ。
ここに来るまで麻痺していた頭回復するために一気に流し込んだ。
「それは、そんな風に味わうものじゃないですけど・・・」
目の前にいたバーテンが呆れ気味に呟いた。
なじみの店であればもちろん、バーテンとも面識があった。
最初の頃の丁寧な敬語だった記憶がある。
しかし、最近は聞くことがなくなっていた。というか、私が止めさせた。
「わかってるわよ、気にしないで。
次のはちゃんと味わうわよ。」
そういうと同時に空になったグラスを差し出した。
黙ってそのグラスをひき新しいグラスを取り出し次なるカクテルを作り始めた。
いったい何がいけなかったんだろう・・・
今日一日の行動を思い起こし考え出した。
朝、職場につき仕事をした。
外に出る用事があり、いつもとは違う店に入った。
そこには、雑誌にくぎ付けになっている彼がいた。いつもなら遠慮なく私は声をかけた。
しかし、今日の雰囲気は話しかけないでオーラたっぷりでこっちがしり込みしてしまった。
ランチをたのみ、食べていると気がつくと彼はいなくなっていた。
一体何に夢中になっていたのっだろう・・・この時は特に気にしていなかった。
彼が何かに夢中になると周りが見えなくなることを知っているからだ。
仕事が終わりまっすぐ帰る気にもならずになぜか久々に電車に乗り移動してまで百貨店に向かった。
これだ・・・これがいけなかったんだ。
なんで今日に限ってそんな行動をしたんだろう・・・
彼、阪井 凌とは高校生の頃、親友の恋人の友人として紹介された。
しかし、彼にはその時に好きな人がいた。
私も好きな人がいた。
だから、お互いの友人の気づかいにはありがたいという気持ちはあったがつきあうことはなかった。
あれから10年近く時は過ぎていた。
親友は別の人と結婚し、彼の友人も別の人と結婚したと聞いている。
なぜ、私たちがいまだに連絡を取っているかは正直よくわからない。
進学先も、現在の職場も違う。
ただ、偶然帰り道が一緒になった。それだけだった。
何度か一緒になり、連絡先を教えあい、時間が合えば食事をし、今では休みでお互いが日まであれば、どこかへ出かけたり、どちらかの家でまったり過ごしたりと友達以上恋人未満 という関係になっていた。
「夏椰さん?」
他のお客さんのところから戻ってきたバーテンが2杯目であるキール・ロワイアルを手に持ったまま口をつけずにいた私の名を呼んだ。
「なにか心配事?」
視線はこちらで手はきちんと仕事・・・さすがバーテン・・・
「ちょっとね。でも大丈夫よ。」
そういいゆっくりとカクテルで喉を潤した。相談ならいつでものるから。とバーテンの言葉にありがとう。と残し、店を後にした。
長いこと一緒に過ごしてきた彼・・・気がつけば一緒にいることが当たり前で私の一番大切な人になっていた。
その気持ちには気づいていたが今の関係が壊れるのが怖くて私はなにもできずにいた。
それでも、彼もきっと私に好意を持っているだろう・・・とタカをっくっていた。
百貨店で彼を目撃するまでは・・・
世の中では今日はホワイトデー。
とても嬉しそうになにかを選んでいた凌。
いつの間に恋人が出来たのだろう。
ランチの時に雑誌にくぎ付けだったのはこの為だろうか・・・休日など一緒にすごしてはいるが恋人が出来たことを私に報告する義務はたしかにない。
でも、いってくれてもいいんじゃない??
好きあっていると思っていたのは私だけだった・・という現実を突きつけられどうしようもなく寂しい気持ちになった。
バーを出てどこにも行く気力がなくなり、でも部屋に帰るのも・・・と電車に乗ることをやめ、歩いて帰ることにした。
駅、4つ分・・・歩けないことはない。
というか、終電を逃した時はだいたい歩いて帰っていた。
大概、その時に隣には凌がいた。
家は反対方向だが、女を一人で歩いて帰ることは危ないということと飲み足りないという理由でかなりの確率でその後、部屋で飲み直し、そのまま泊るパターンだ。もちろん恋人らしいことはなにもなく言葉通り、泊るだけ。
そして、翌朝始発で帰り仕事の時は準備をして出社。
同じことの繰り返しで、私は何度も着替えを置いておけば?といっても凌はそれをすることはなかった。
もしかしたらそれが、凌の答えだったのかもしれない。
恋人でもない人のところに自分のモノは置かない。
今更そのことに気がついても遅い・・・
きっと凌は今頃、恋人とデート中なのだから・・・
だんだん考えることすら嫌になってき、ゆっくり進めていた帰路を急ぎ足に変えた。
少しでも他のことに気を紛らわせて今日のことは忘れよう。その為には、早く部屋に帰っていまこの時間のなにも考えたくない時間を短くしよう。
そうすればきっと今度、彼に会っても何事もなかったかのように振舞える。