8:教師♀×バーテンダー♂
「いらっしゃいませ。」
店内に入るとぎらぎらしたライトに目を奪われた。
しかし、すぐに本来の目的を思いだし店内を見渡した。
「学校の先生がこんな所に何の用だ?」
カウンターの片隅から声が聞こえ振り返った。
そこには、ジーンズにTシャツ姿のいかにも女癖の悪そうな男がお酒を飲んで座っていた。
って、なんで私が先生だって知っているの?
じぃ~とその男を見据えるがやっぱり知らない。
男は立ってゆっくりこちらにやってきた。
私はというと、じりじりと近づいてくる男から逃げるように一歩ずつ後ずさった。
「なんで逃げるんだ?」
私の一歩と男の一歩はかなり違うらしくすぐに追い付かれ髪を纏めていたクリップを外し下りた髪を一束取りキスをした。
そして一言
「誘ってんの?」
ニヤッと微笑み、私の腰に手を回した。
バシンッ
フロア中に大きな音が響いた。
「先生、おはよぉ~」
はぁ~と昨夜のことが頭から離れない・・・
ナンパしてきた相手にビンタを食らわせて逃げるように帰ってしまった・・・「邑井先生っ!」
あーぁ最悪、捕まった・・・
「昨夜はいかがでした?」
職員室に入るなり、学年主任で生徒指導である岩村先生が歩み寄ってきた。
「えっと・・・「該当するような生徒は見当たりませんでした。」
答えに詰まっていると遮るように、誰かがそういった。
「あら、沢口先生もご一緒でしたの?」
岩村先生が驚いたように言った。
「帰りがけ偶然電車が一緒で。いくら教師でも女性が一人夜の街を歩くのは危険ですから。」
ニッコリと一度、私の顔を見て岩村先生に向かって微笑んだ。「まぁ、先生は優しいのですね。朝礼が始まりますわ。行きしょう沢口先生」
朝から、ご機嫌になった岩村先生につれられて沢口先生はこっそり私の方に振り返りウィンクをした。
・・・あれさえなければ、いい人なんだけどなぁ~
背筋が凍りそうになりながらもははっと愛想笑いする。
「で、昨日はどこにいたの?」
授業の空いた時間に屋上を訪れ叫んだ。
「家にいたよ?」
しれぇ~と答え、手元のタバコに火を点けた。「いい度胸じゃないの。」
ガタンッ
屋上の扉が開いた音がした。
やばっ、そう思ったのも束の間。
私は、タバコを取り上げ自分の口に突っ込んだ。
「へぇー先生ってタバコ吸うんだ。」
目の前に現れたジーパンにTシャツの男
「な・・なんであなたがここにいるの!?」
スラーッとした長身の男はかけていたサングラスえを取り一歩ずつ近づいてきた。
「先生に会いに来たに決まってんだろ。」
そう言いながら私の前までやってきて口元にあるタバコを奪い自分の口に突っ込んだ。
「固まってどうしたの?そんなに俺との間接キスが気になる?」
彼の言葉と行動にびっくりし固まっていた私は反撃をしようと口を開いた。
「そ・・・「どーでもいいけど、それ元々俺がくわえていたんだけど?」
後ろに座り込んでいた彼が立ち上がりやってきた男の手からタバコを奪おうとした。
「だめだ。お前がここでこれをくわえている時点で先生は窮地に陥るからな。」
目の前のまだ小さな学生から私に視線をずらし優しく微笑んだ。
ドキッ
・・・えっ、今のはなにっ!
「大体なんで兄貴がここにいるんだ。」
チッと舌をならし吐き捨てるように言う。
「ん?先生に警告?」
とぼけたようにタバコの煙を吐き出す。
「警告?」
ピクッと肩眉をあげ不振そうに彼を見上げる。
「そう、なにを探りに来たか知らないが俺の店でウロウロするな。」
・・・探り?
この人は何を言っているの?
意味がわからず私はキョトンッとしてしまった。
「兄貴、りんは違う。 ただ俺を探しに来ていただけ」
この二人は何を言っているのだろう・・・もしかして岩村先生が言ってた
「あの近所で生徒が働いているって話?」
私の言葉に学生はギョッとし、彼は鋭い視線で私を見た。
「それだよ。あの辺では未成年は絶対に働かせねぇー。だから先生にウロウロされると営業妨害なの」
私を睨み付けたまま視線を逸らさない彼
「わかってるわよ。あの辺のことは、だから私が率先して見回るようにしているのよ。本当に見回ったりしてないわ。昨日は、この子が言った通りこの子を探しに行っただけよ。」
信じてはもらえないだろうなぁ・・・
「お前は教室に帰って授業を受けろ。」
思いもよらない彼の言葉に学生はおとなしく従い私は拍子が抜けたように茫然と立っていた。
「そんなことはわかってる。俺が言いたいのはあからさまに教師の格好をしたまま来るなってことだ。それに俺はいつもの方が好みだよ。」
手にあるタバコを自分で持っていた携帯灰皿にもみ消しニヤッと笑った。
「あ・・・あなたの好みなんて聞いていないわ。それに昨夜は爽の様子がおかしかったからで・・・いつから気が付いていたの?」
彼の言葉に動揺しつつも反論したが、はっと気が付いてしまった。「なんのこと?
教生の頃からあそこに通っていたこと?」
えっ?教生って・・・
ガチャッ
頭の中でなぜそのことを知っているのか巡らせていると開くはずのない屋上の扉が開いた。
現れたのは一人の女子生徒だった。
以前、資料室で手伝ってくれた。
「何をしているの?今は授業中のはずでしょう?」
私は素早く教師に戻り、彼女に尋ねた。
「はい・・あの、速水先輩いらっしゃらないですよね?」
心なしか、彼女は元気がなさそうに見える。
「彼なら、授業が始まる前に戻って・・・ないのね。」彼女に浮かんだ苦笑を見てすぐに察知した。
「何年何組?彼を見かけたら探していたことを伝えるわ。だから、あなたは教室に戻りなさい。この前手伝ってくれたお礼にこのことは黙っておくから」
2-C橋口と彼女は名乗り教室に戻っていった。
彼女が彼に何の用なのか検討もつかないが・・・
「あんな子が爽の彼女になってくれればいいのに・・・」
さっきの可愛らしい生徒を思い出しうねった。
「今は、爽のことより俺たちのことを考えてほしいな。」
ムッ・・・この人何を言っているわけ?
私は思いっきり睨み付けるように彼を見た。
「眉間に皺がよってますよ、りんご先生♪」
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「本日まで2週間ありがとうございました。」
教師を夢見て初めて先生として教壇に立つことが出来た2週間
この経験をかせとして頑張ることを決めた頃だった。
「先生、2週間ありがとうございました。」
実習が終わればしばらく現場である学校とはしばらくさよならだ。
感情に浸りながら、他の教生たちと校門をくぐったとたん、パァーンッという音が複数鳴り響いた。「速水くん?・・・松崎くんに八田くんまで」
一瞬何が起きたかわからず、さっきの音がクラッカーだとわかったのは3人が手に持っていた残骸があったからだ。
一緒にいた教生たちは気をきかせてかは知らないが、さっさと立ち去っていった。
「エヘヘ、邑井先生驚いた?」
ニカッと子供っぽく微笑むスポーツに関しては優秀な松崎くん
「無事に免許取れたらちゃんとスペルチェックしてから授業に望んでくださいね。」
からかうように笑う学校一秀才の八田くん。
「りんご先生の授業は、なかなか楽しかったよ。授業中に眉間に皺よせなければ(笑)」
ニヤニヤと微笑む学校一の問題児速水くん。
なぜこの3人が仲が良いのかさっぱりわからない・・・
「もぉーさっき教室でちゃんとお別れしたでしょ。」
不意打ちを打たれさっきは我慢していた涙が込み上げてきた。
「あーぁ、颯が先生泣かしたぁー」
楽しそうに速水くんを突く松崎くん。
「ちょっ・・・なんで泣くんだよ。
って俺のせいなのか!!」
目の前でオロオロとしている速水くん。
そんな速水くんに
「そりゃー、颯がこんなことやろうって言わなきゃ先生は泣いたりせずにすんだな。」
隣でウンウンと八田くんと一緒に相槌を打つ松崎くん
「なんだよ、お前らだってのりのりだっただろう。
ったく、しゃーないなぁー」
そう速水くんが呟いたのは耳に入った。しかし次の瞬間、私は固まってしまった。
「「おっ、泣き止んだ。」」
松崎くんと八田くんがハモッた。
「ごちそうさま。」
屈んでいた腰をあげペロリッと唇を舐めいたずらっ子のようにニヤッと微笑む速水くん
「・なっ・・なにするのぉー。」
びっくりし、自分の口を押さえ後ずさり転けてしまった私に対して腹を抱えて笑う松崎くんと八田くん。
「なんでって、俺はりんご先生のこと好きだから」
その時の彼の微笑んだ表情は今でも忘れられいでいた。
と、思っていた・・・「・・・・速水くん・・・?」
目の前に立っているこのムカつく男があの速水くん?
「やぁーっと、気が付いたかりんご先生。」
私の反応がおもしろかったのかクスクスと笑いながら私との距離を縮める彼。
そして、手を延ばした。
「キャッ・・・」
ビクッと一歩下がれば、思いっきり鼻を摘まれた。
「さて、あの時の返事を聞かせてもらおうか?もちろん俺の辞書にはNOと言う言葉はないがな。当たり前だよな?4年越し何だから」
チュッと軽く触れるくらいのキスをした彼
そしてペロリッと唇を舐めいたずらっ子のようにニヤッと微笑む彼・・・
昔とまるで変わってない・・・・
この時、私は4年も前から彼に囚われていたことを認めざる得なかった。




