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7.5:後輩♀×先輩♂ (前編)

「絶対にイヤ」

目の前で殺気立ててる彼なんて知らない。

「お前に拒否権はない」

キッと思いっきり睨んだ所で彼は気にすることもなく私の腕を引っ張り外に連れ出した。

「帰れっ!!」

・・・

「先輩のバカっ、大嫌い!!」

そう言い残し私は走り去っていった。

「で、速水先輩のことを無視してるの?」

いつものように、先輩がいるバーに行くと店に入るなり先輩に帰れと罵倒された。

私は、即答でNOと返し先輩との言い合いが始まった。

別にバーに居たかったわけじゃなかった。

ただ、先輩の傍に居たかったのだ。

何より、先輩はモテる。

だから、見張っておかないとっ!!

なのに、先輩は・・・

「菜花は先輩のこと信じてないの?」

私の話を聞いていた親友がはぁーとため息を吐き言った。

「信じてるわよ。でも、先輩が相手にしなくても勝手に盛り上がる人たちがいるのっ!!それがイヤなの。先輩が相手にしないから嫉妬やかないなんてありえない。いくら相手にしなくても、好きな人が知らない人に言い寄られるなんて我慢できないっ。」

はぁはぁと肩で息をしながら熱弁を遂げた私

「落ち着いてよ。そのことはわかったわ。で、なにが問題なわけ?」

先輩に対して怒っているのはいつものことのようにさらりと問題がそこじゃないことを見破る柚子

「・・・こない。」

ボソッとそれだけを言った。

「そうね、どんなにケンカしても悪怯れなくやってくるのにね。」

そういつもは柚子が言うように何事もなかったかのように先輩はやってくる。「またいる・・・そんなにお暇なんですか、颯さん?」

先輩がいるのではと屋上へ行ってみると先輩ではなくお兄さんの颯さんがいた。

「菜花か、先生は忙しいのかな?連絡したんだけどまだこないんだ。」

ニッコリ微笑んだ颯さん

「・・・また、嫌がられますよ?」

はぁ~とわざとらしくため息を吐いた。

「知っているよ。」

だから来てるんだ。と語尾がつきそうなくらい妖艶な笑みを浮かべる・・・

この人、間違いなく先輩の血縁者だわ。「ところで、昨日かなり険悪ムードになったみたいだけど、仲直りした?」

胸元からタバコを取出し火を点けた。

「ケンカなんてしていません。それじゃー」

先輩はいない。そのことを確認すればいいのだからと私はその場を離れることにした。

「あっ、なっちゃん颯くん来てるでしょう?」

次はどこを探そう・・・

先輩がいそうな所を頭に巡らせていたら階段を駆け上がってくる先生とかち合った。

「いましたよぉ~、遅いとかぼやいてました(笑)」

怒っているような表情だけれど、その仮面の下には笑みが隠されていることを私は知っている。

「爽と話した?」

ビクッ・・・

名前を聞くだけで過剰反応をしてしまう自分が嫌・・・

「まだ、会っていないのね。」

はぁーとなぜかため息を吐く先生。

「会いたくなくて会ってないわけじゃないです。先輩が逃げてるんです。」

はっきりと言った私に困ったように眉をひそめる先生

「あなたたちって本当にケンカばかりね。そんなんで楽しいの?」

楽しくなんかない。そう思っても口に出すことはせず黙ったままでいた。

「あなたたちって、似たもの同士よね。」

呆れたようにそう言い残し先生は屋上へと上っていった。

「先輩のバカ」

見えなくなった先生の背を見つめたまま呟いた。

なんで会いにこないの?

なんで電話もメールもくれないの?

なんでいないの?

なんだかやりきれない気持ちが胸の中で渦まって苦しくなってきた。

泣くもんかっ!!

ジワジワと溢れてきそうな涙を堪えチャイムが鳴る前に教室に戻ろうと踵を返した。

「誰がバカだよ。」

突如聞こえた声にビグッと肩を揺らした。

俯いていた視線の先に履き潰した校内用の靴を履いた足が見え、恐る恐る顔をゆっくりとあげその人物を見据えた。

「なに、泣きそうな顔してんだよ。」

そこには顔をしかめ機嫌悪そうに先輩がいた。

ダメだ堪えきれない・・・先輩の顔を見た途端に我慢していた涙がどんどん溢れだした。

「なんで、泣くんだよ意味わかんねぇー」

堰をきったように溢れてくる涙

先輩の言葉にますます止まらなくなってしまう・・・

「・・・グスッ・・先輩が・・・・なん・・でもないです。

授業が始まるから・・・」思い切って先輩のせいだと言ってやろうかとも思った。

付き合いだしたのは先輩からだけど、私は特別な言葉さえもらっていない。

颯さんみたいにあからさまな態度でもあればまだ自分も納得出来る。

でも先輩はよくわからない。

柚子は自信持っていいと言うが、はたして本当にそうなんだろうか・・・

昨日だって、寄ってくる女たちに威嚇するためではあるけど、何より私は先輩と一緒に居たかった。

3年生である先輩はもうすぐ卒業だし少しでも先輩の傍に居たかった。

純粋にそう思った。

そう思うのは私だけなんだろうか・・・

「言いたいことがあるならちゃんと言え」

先輩から離れようとした途端、冷めた声で言われ腕を掴まれた。

「・・・きっと先輩にはわからない。」

聞き取れないほど小さな声なのは自分でもわかっていた。

聞こえなくてもかまわない。

ただ今は先輩から離れたかった。

力が緩んだ隙を突き掴まれた腕を振り払った。

しかし、そう簡単はいかなかった。


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