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7:後輩♀×先輩♂ (前編)

「俺と付き合え」

「はっ?」

いきなり目の前に現れた見知らぬ男・・・

いや、私と同じ学校の制服を着ているからいちよう見知らぬじゃなく・・・

「じゃ、今日から彼女な。」

やっぱりまったく持って見知らぬ人です!!

命令形で勝手に話を進め立ち去った男・・・

何が起きたんですかっ!!

ってゆーか誰っ!?

「ちょっと、菜花なのかなんで速水先輩としゃべってたの!」

あーぁ、先輩なわけね。

「別に私はしゃべってない。」

それだけを言いバックヤードに移動した。

シフト表に目をやり次のバイト日を確認しバイト先を後にした。

「邑井先生?」

「はい、はい。どうしました?」

資料室に入るなり、叫ぶと奥から一人女の先生がやってきた。

「岩村先生が報告をと伝言です。」

さっき、職員室で生活指導の先生に捕まり頼まれたのだ。

用件を確かに伝え私はさっさと帰ろうときびすを返した。

「おい、り・・・」

いきなり資料室のドアが開き男子生徒が入ってきた。

そしてとたんに固まった・・・

「ちょうどよかった。岩村先生に呼ばれたから奥に用意している資料宜しく。あなたも申し訳ないけど、戻ってくるまで手伝ってて貰える?」

先生は入ってきた男子生徒に言い私にもついでかのように言い逃げた。

「ここの生徒だったのか?」

茫然としていると固まっていた男子生徒が呟くように言った。

「えーぇ、残念ながら。」

この人、仮にも私に付き合ってほしいって言ったのよね?

「まぁ、いい、あいつが戻ってくるまで手伝え。ってか、一緒に帰るからここにいろ」

なに、そのどうでもいいみたいな言い方・・・しかも、また命令形?

「イヤです。なんで私が・・・さようなら」

といったところで唯一の出入口である箇所はその人が立っていたので帰れない・・・

そのことは彼にもすぐにわかったらしく、私の腕を掴み奥へと引っ張られるようにつれていかれた。

「これ、まとめるからホッチキスで留めて。そーいえば、橋口の名前何?」

奥にはさっき先生が言っていた資料がズラリと並んでいた。

そして、私にホッチキスを差出しいきなり名前を聞いてきた。

「・・・人に名乗ってほしければ自分から名乗ればいいんじゃない?」

なんで苗字を知っているか聞きたかったが、すぐにバイト先で名札を付けていることに気が付きやめた。

「あっ、わりぃ~、爽・・・速水 爽3年だ。」

いままでの態度からまさか、素直に謝られるとは思ってもなく呆気に取られてしまった私。

「・・・菜花です。2年の・・」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で答えた。

それから私たちは何の会話もなくせっせと作業を進めた。

そのことを彼は気にすることなく黙々と資料をまとめていた。

きっと元々無口なほうなんだろう。

などと考えながらこの時間が心地の良いものだったとわかるのは少し後のことだった。

彼は私の意見などまるで無視し、私も戸惑う気持ちはあったが、なぜか彼の気持ちを邪険にしようとは思わなかった。

かっこいいけど、とても口数が少なく、ぶっきらぼうでちょっと悪そうな先輩・・・でも、なにげに優しかったりする先輩。

バイトが終わる時間に勝手に外で待ってて何も言わず、ただ家まで送ってくれる。

学校とかでも困っていたりするといつのまにか傍にいて手伝ってくれたり・・・

気が付けば、彼のことを好きになりかけている私がいた。

そんな私に不満要素があったりもする。

『速水先輩の彼女は年上のきれいな人。』

私にはハラハラものの噂。

かと言って本人に聞くことなんて出来ずにいる私。

おおっぴらに付き合ってます宣言をしていない私たちそれでも、必然的に校内では二人でいることが多く先輩のファンの子たちにはとってはうざい存在な私

「何様のつもり?毎日毎日、速水くんにくっついてさぁ。」

「速水くんはあんたなんて眼中にないわよ。」

「速水くんの周りをうろちょろするの止めてくんない?」

次々という自称速水先輩のファンクラブの先輩たち

「イヤです。」

なんで私が呼び出しされて、速水先輩から離れろって言われなきゃいけないの?

先輩は私を選んでくれたそう思いたいのに・・・噂なんて信じたくないのに

「速水くんの彼女に悪いと思わないの?知ったら、すっごくショック受けちゃうでしょうね。」

「あなたがあの人にかなうわけないでしょ?」

・・・噂じゃないの?

本当のことなの?

あなたたち彼女のこと知っているの?

ダメ、こんなところで・・・この人たちの前でなんか泣いちゃいけない。

私はファンを睨み付けるように顔をあげた。

それが癪に触ったのだろう。

気が付いたときには周りに人はいなくなっており、ただ左頬が赤くヒリヒリしていた。

私は、その場に座り込み一人で泣いた。

それは、ファンの子たちに絡まれたことからでなく、先輩に彼女がいると言う事実が悲しかったから・・・

こんなにも先輩のことを好きになっていたなんて・・・「菜花っ!」

バンッと私の部屋の扉が開いた音と怒鳴り声は同時だった気がする。

「お前、勝手に早退なんかするなよ。岡崎だっけ?友達から聞いてびっくりした。具合悪いのか?」

ベッドの脇に座り込んでいる私の前にかがみこんだ先輩。

そっとおでこに近付ける手をバシンッと払い除ける私。

「菜花・・・?」

「もうイヤ・・・私に近づかないでください。」

気が付いたらそう言っていた。顔をあげることも出来ずに私は膝に顔を押しあて溢れてくる涙を先輩から隠した。

「・・・はっ?なにかあったのか?ちゃんと話して。」

先輩の声から戸惑いそして押さえている怒りが感じられた。

今の私にはそんなことは関係なかった。

再び、差し伸べられた手を気配で感じまた払い除けた。

「私、これ以上先輩に付き合えません。あの時、ちゃんと言っていればよかった。もう私に関わらないでください・・・」

涙をこらえはっきりと顔を上げ言った。

「・・あーぁ、そーかよ!!」

バンッ

部屋に大きく力強くドアが閉まった音が響いた。

一瞬驚きを見せたがすぐに怒鳴って出ていってしまった先輩

なんで、先輩が怒るのよ・・・彼女いるクセに・・・

「・・うっ・・」

とめどなく溢れてくる涙を止めることは出来ず、嗚咽すら気にすることなく泣いた。

「そんなに泣くほど好きならなんであんなバカなこと言ったわけ?」

声がしはっと顔をあげると戸口に立っている人物を目に留めた。

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