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6:刑事♂×看護士♀(後編)

 「会っちゃったの!?」

式後、新居への引っ越しとかで忙しく会えなかった蘭に結婚祝いを渡す為、いつも行くコーヒーショップで待ち合わせをした。

「病院でね。・・・いっておくけど、なんもないわよ。」

なにかあった?と愉快そうにいいたげな蘭に対し言った。

「名前は?」

注文したカフェラテをカウンターで受け取りながら言った。

「知らないわよ。」

私も、オーダーしたホットチョコレートを受け取り席に移動した。

「もう、会うつもりないわけね。」

私の答えにはぁーとため息をついた。

そして、もうそのことについて話すことはなかった。

「そろそろ時間だ。また連絡するね。」

時計を見、飲み終わったカップを捨て病院に向かった。

あっ、肝心なもの渡してない・・・

手にある紙袋に気付いた。

まだいるかな?

仕事自体にはまだ時間の余裕があるから戻ろう。

次はいつ会えるかわかんないし。

来た道を戻りコーヒーショップに向かった。

ちょうど帰るところらしく、蘭は店の出入口に立っていた。

この時、隣にいる人をちゃんと見ておけばよかったと後悔する。

「らー・・・」

固まった。

蘭は私に気付いたようで大きく手を振っている。

しかし、私の視線は蘭ではなく隣にいる人

「茉莉花 どうしたの?」

蘭は私の元に寄ってきて言った。

「これ、渡すのを忘れていたから。」

固まっている表情を無理矢理笑顔にし、手にある紙袋を渡した。

「お話し中にごめんね。」

私は、この場を離れたい衝動に駆られていた。

「気にしないで。彼、智さんの弟よ。」

にこにこと嬉しそうに紹介する蘭。

弟と紹介された彼はゆっくりとこっちに寄ってきた。

「こんにちわ。蘭ごめん、またね。」

目を合わせないように挨拶をし、その場を離れた。

その人から逃げるように・・・


 「仕事中じゃないのか?」

外に出ると、壁に寄り掛かっているスーツを着ている男性がいた。

「仕事ですよ何かご用でしょうか、刑事さん?」

なぜここにいるのか知らないが、なるべく冷静を装った。

本当はかなり驚いているのだが・・・

「外科の君が産婦人科にねぇ」

彼の言葉を無視し歩きだした。

というか関わりたくなかった。

考えた結果、どうやら私は彼の瞳と声には逆らえないらしい。

ならば話をしなければいいのだ。

そう、思っていた。

「関係ないとは言わせないよ。」

思いっきり彼に腕をひっぱられ気付けば彼の腕の中だった。

「結果は?」

なんでこんなに淡々としか言えないのだろうか?

なぜ、彼に逆らわれないのだろう。

「妊娠してました。」

聞こえるか聞こえないかわからないほど小さな声で呟いた。

「離して下さい。仕事にいかないと遅刻になるので」

はっ、と我に返り無理矢理彼から逃れ私は駆け出した。

彼が追い掛けてくる様子もなく、ほっとしたようながっかりしたようなとても複雑な気持ちのままで仕事に向き合った。


 「川久保さん。」

巡回していると、声をかけられた。

「あら、小田原さん。検査ですか?」

3ヵ月前に入院をしていた小田原さんだった。

「デートの申し込みをしに」

ニッコリと微笑む彼

一体、これで何人落としたのだろうか?

「誰にですか?」

私は普通に返した。

「う~んこれに引っ掛からなかった人、二人目だな・・俺に好きな人がいなければ完璧に惚れるのに」

今度は、笑いだした彼

「惚れられても、困るので結構です。」

私には好きな人がいるから。心の中でそう続けた。

今、何を思った?好きな人って・・・

なんで彼が思い浮かぶわけ??

嘘・・・私、彼のこと好きなの?

名前も知らないのに?

会ったことだって数えるくらいしかないのに・・・

「そうそう聞いてくれます?」

私一人、いろいろ頭で格闘しているのにかまわず話を切り替える小田原さん

「今日ですね、この前言っていた先輩。いつもサボる時コーヒーショップにいるくせに今日どこにいたと思います?」

耳打ちをするように小声気味に囁く

「関係ないので失礼します。」

あの人の話なんて聞きたくない・・・

「あれ、川久保さん気にならないんですか?」

この人、何かを知っている?

「そんなに警戒しないでください。単なる勘ですよ。彼からは何も聞いていません。ただ、病室で会った時に二人の様子が少し違ったように思ったから。」

ニッコリと微笑む。

きっとこの人は嘘は言ってないだろう。

「で、なにが言いたいんですか?」

私は、諦め彼の話を聞くことにした。

「この近くにコーヒーショップがあるじゃないですか?」

あそこは、私の休憩場所よく行くところだ。

実際、今日だって行っていた。

「いつもは、そこにいるんですけど。今日は、隣の病棟にいたんですよね・・・」

さっきまで私がいた産婦人科。

「俺の彼女が彼を見つけてくれまして。なんかずっと私生児たちを眺めていたらしいですよ。はたから見たら不審者ですよね。」

彼はクスクス笑いながらそう言った。

私生児たちって・・・

無意識にお腹に手をあてた。

彼がどう思おうと話をしなきゃ。


 「・・・彼の居場所を教えてくれる?どうせ、家になんか帰ってないでしょう?」

私は、ゆっくりと息を吐き小田原さんに言った。

「えーぇ、なんか知りませんが落ち込んでいたのでここに連れて行きました。きっと、酔いつぶれていますよ。」

クスクスとそういい、一枚の名刺を差し出した。

それは、駅近くのバーだった。

この人、確信犯だわ。

そう心で思ったが言葉にはしなかった。

「まだ、時間まであるけど大丈夫よね?」

私は、時計を見て言った。

いまは、深夜1時半・・・

「大丈夫ですよ。店のマスターには帰さないようにって伝えてますから」

ニッコリと微笑んでいるが、なんだか怖いような

「よろしくお願いしますね。そうそう、西村さんがコーヒーショップに行く時って必ず誰かをみつけて入るんですよ。誰かは自分で聞いてくださいね。」

この人、なにも聞いてないって言ってたくせに・・・

勤務時間が終わるのは深夜2時・・・

残りの30分はとても短かった気がする。

ちょうど夜勤で婦長がやってきたので、私はこれからを相談し今現状を伝え病院を出た。


 小田原さんがくれた名刺を頼りにやってきたお店

ここに彼がいる。

名前も知らない彼が・・・

「いらっしゃいませ。お一人でしょうか?」

カウンターからマスターが声をかけてきた。

「いえ、ソコの人を引き取りに来ただけです。」

カウンターでちびちびと何かを飲んでいる彼を見つけ顎で指した。

「左様でございますか。では、タクシーをお呼びいたしますね。」

マスターはそういい電話をかけるために奥にいった。

「ちょっと、一体どれだけ飲んだわけ?」

私は、彼の隣に座り肩に手を置いた。

肩に手を置かれてやっと自分のことだと把握し私の姿を確認すると驚いていた。

「なんで、君がここにいるんだ?」

顔が赤くなっているが、そんなにまだ飲んでないと判断すると私は少し安心した。

この様子なら彼とちゃんと話が出来るだろうと・・・

「小田原さんに教えてもらったの。話があるの?」

私は、彼の腕を持ち上げたたせようとした。

「俺に話はない。気にしなくていいぞ?サインならちゃんと書いてやるから。」

私がよろめかない程度に彼は腕を払いのけ言った。

「なんのサイン?言っておきますけど、私はあなたがどう思おうとこの子は産みますからね!!」

彼の言い方にカチンッときた。

「責任とってくれなんていうつもりはないわ。私の気持ちぐらい知ってほしかっただけよ??でも、その必要はないみたいね。あなたを頼ったりしないから安心して頂戴!さよなら」

彼は、この子を喜んでなんかいない・・・

そりゃーそうよね。

望んだ子じゃないものね・・・

私生児たちを見ていたって聞いたから期待しちゃったわ。

ちょうど、マスターが帰ってきたので私は店が閉まる前にきちんとタクシーに乗せて頂戴とお願いをし、店を出た。

店の前にはまだマスターが呼んだタクシーは来ていなかった。

この時間だし、駅前に行ったほうがタクシーはいるよね・・・

それに、早くココから離れたい。

彼の近くに居たくない。


 「待ってくれ!!」

歩きだそうとした時、後ろから抱きつかれた。

「話してくれません?」

私は冷静を装い、溢れてきそうな涙を我慢しいった。

「ちょっと、待ってくれ。」

はぁはぁと息切れの様子。

「ばかじゃないですか?お酒飲んだ後に走るなんて自殺行為に近いんですよ!」

素で叫んでしまった。

「産むつもりなのか?」

彼は、かろうじてこう言った。

「何がいいたいんですか?あなたには関係のないことです。」

再び、目頭が熱くなってきた・・・

「俺は、産んでほしい。そう思っている。」

思いがけない彼からの言葉だった。

彼のほうを見ようと彼の腕を解こうとするが解けない・・・

「だったら、なんであんなこといったの?」

頑張るのをやめ、彼の腕を思いっきり抱き返した。

「どこの誰かわからない男の子どもを産んでほしいなんていえるか?」

・・・この人はこの人なりに考えていてくれた。

「でも、私には大切な思い出よ?確かに、あの時病院で会わなかったら産まなかったかもしれない・・・でも、私はあなたの子どもが産みたい。」

一瞬彼の腕の力がぬけた。

私は、彼の腕から逃れ彼の顔を見た。

「あの時は、気付いていなかったと思う。でも、私はあの瞬間からあなたのことが好きだったの。」

私はそう言い彼に思いっきり抱きついた。

「俺は、ずっと君のことを知っていた。いつもコーヒーショップにいるのを見ていた。あの時、君に似た子が沖縄で現れて・・・酔っていたんだ。そのことは謝罪する。でも、君の事はちゃんと考えてる。正直、蘭さんから君のことを聞いて沖縄で会ったのが君でよかったとほっとしている部分もある。」

彼は、包み隠さずすべてを話してくれた。

あんなに、言葉数が少ない彼が・・・

私のことをちゃんと思っていてくれることなどを・・・

「とりあえず、あなたが私を愛してくれていることはわかったわ。でも、名前ぐらい教えてくれない?」

私の言葉に そうだった。と呟いて名前を教えてくれた。

「西村 渓」

たった、一言。


渓さんの名前が最後まで出てこないのである意味ネタバレ?と思って登場人物は後日・・・その後もネタバレ表記をする予定です。

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