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6:刑事♂×看護士♀(前編)

いつもは同時に登場人物も更新しますが、今回は後日載せます。


 「誰だっけ?」

目覚めのいい朝、いきなり言われた一言。

そりゃー、私だって一夜だけの楽しみとか思ってたけど・・・

多少は、酔っていたかもしれないけど・・・

期待なんてしてなかったけど・・・

「最低。」

と言わずにはいられなかった。


 「ちょっと聞いてるの!?」

バンッとテーブルを叩き、目の前にいる女性に叫んだ。

「聞いてるわよ。ったく、昔から付き合った人数は多いくせに中々その先を許さなかったまさかあんたが初対面の人と一夜を過ごしただなんて・・・」

はぁーとため息をつき呆れながら入れたての紅茶を一口含んだ。

「だって、あいつがっ!!・・・ヘタだなんて言ったから」

口をもごもごとしながら言った。

偶然にも元彼の浮気現場を見てしまった私。

そして、なぜか振られる形になり、最後に言ったのが『浮気されたくなかったら、少しはうまくなれば?そしたらやり直すこと考えてやってもいいけど?』

もちろんそんな気はなくその場で殴り倒したが。

「声が小さくなってるよ。ったく、だからって人様の結婚式の客を引っ掛けて試す?」

あっ、顔が笑ってない・・・

「ごめん、蘭・・・」

目の前にいる彼女は私の親友でこの度、長年想いを寄せていた相手とスピード結婚をした。

「いいわよ。たぶん智さんの知り合いだとは思うけど、もう会うことないでしょ。だいたい、あいつ何様よ。茉莉花の初めてが自分だって忘れてない?最初っから上手かったら逆に引くわよ。無駄な4年間だったわね。」

怒りを露にしている親友を見ると多少だが気持ちが落ち着く。

「で?引っ掛けた結果、茉莉花は自信を取り戻せそう?」

ニヤッと頬を手に置き傾く彼女

「・・あのばかがヘタクソだったってことはわかった。あと、言い訳じゃないけど別に引っかけたわけじゃないからね!」

たぶん今の私は顔が真っ赤だろう。

蘭は、はいはいとどのことはどうでもいいと適当に答えた。

そして、あの夜の彼のことを思い出した。

最悪な形だったけど、彼は本当に優しかったし、上手かった。 (っていっても経験が元彼だけだから本当の所はわからない。)

私は、いままであまりあの行為が好きではなかった。

気持ちいいと思ったことないし痛いし。

自分がよければいいみたいな感じでがっついてくるし、でも彼は違った。

なんというか、がっついた感じがしなかったし、一つ一つの行為に時間をかけ優しく私のことも気にかけてくれていた。と、思う。

少しだけ、彼のことを話した気がする。

とにかく何もかも、元彼とは正反対だった。


 「看護士さんどうしても、入院しなきゃダメ?」

こんなケガをしておきながらこの人はなにを言っているのだろうか。

目の前の男の肩や頭の包帯に目をやり心の中で毒を吐く。

「小田原さん、わがまま言うのであれば何日でも日にち延ばしてあげますよ。」

私はニッコリ微笑み肩に巻いている包帯をきつめに締めた。

「それは勘弁してください。」

お手上げと両手をあげて患者はいった。

「小田原、生きてるかぁ~」

頭の包帯を外しているとノックもせずに一人の男が入ってきた。

「っと、失礼」

ベット脇に私がいるのに気が付き言った。

「かまいませんよ。もう少しで終わりますので」

傷口に消毒をあてようと道具を取る為、振り返った。

いつの間にやら、来客は目の前に来ておりバッチリ目が合った。

んっ?この瞳知ってる・・・

私は、ゆっくり瞳から顔全体をみた。

「!!」

この前の、最低男っ

「どうかしましたか?」

目の前にいる彼は怪訝そうにこちらを見たが、すぐに小田原さんの所へ移動した。

「悪かったな。俺が連絡取れなかったから非番のお前が呼ばれたんだろ?」

私がいないほうにパイプ椅子を運び枕元に座った。

今、私の顔みたわよね?

わかってないの?

って、まさか覚えてないの!!

私は、消毒しながら器用に手を動かした。

「そんな気にしちゃダメですよ。ちょっとでも油断した俺がいけないんですから」

もやもやしながら、ベッドに横たわる彼を見、すごく優しく微笑む人だな。と、そう思いながらせっせと治療を進める。

「それより、久々の休暇楽しめましたか?」

バツの悪そうな彼を無視し言った。

「・・・ぁーぁ。」

一瞬だが彼が戸惑った気がした。

でも、それは私には関係のないこと

小田原さんもそのことに気が付いたようだが何も言わなかった。

明日迎えに来るといって彼は病室をあとにした。


 「あの人、仕事でも先輩だけど大学でも先輩だったんです。」

突然語りだした彼にびっくりする私

それでも、彼の話に耳を傾ける。

「憧れてはいたけど一度も話したことないんですよね。だから、この仕事に就いて同じ所に配属なって一緒に組むことになって俺舞い上がってたんだと思う。この仕事は並大抵じゃないと思いながらも心のどこかでこの仕事をなめてたんだと思う。何でもできる気がしていた。そしてケガをした。・・・情けないよな。」

はぁ~と大きなため息をつき、窓の向こう側の空を見つめていた。

「いいんじゃないですか?別に。」

彼はびっくりしたようだ。

顔を窓から私の方へ向けじぃーと見ていた。

私は気にせず続けた。

「このことで自分の誤りを知ったんでしょ?もし、気付かずにいたら今よりひどい結果になっていたかもしれないのよ?それとも何?また、同じようなことしてケガするつもり?」

私の言葉に彼はきょとんとしていたと思ったら吹き出した。

「あははは・・・まさか、もう二度と同じことはしないよ。ありがとう。名前教えてくれる?」

笑いすぎてなのかはわからないが、目に溜まっていた涙を手で拭い言った。

「川久保 茉莉花です。 ところで、なんの仕事しているの?」

私は、何気なく質問したつもりだった。

なのに、なぜ目の前の人は、お腹を抱えて笑っているのだろうか?

「知らないで、言ったの?」

まだ笑いが止まらないのが、苦しそうに言っている。

「だって、カルテには職業なんて書いてないもの」

なんだかバカにされているようで、ムカッときた。

「失礼しました。」

私は答えを聞かずに病室を出ることにした。

病室を出るとさっき帰ったはずの彼がいた。


 「少しいいですか?」

さっきまで小田原さんに見せていた笑顔はなくなっていた。

とても冷たい。そんな印象・・・

あの日と同じだ。

結婚式前日に元彼に振られ、私は少なからず落ち込んでいた。

決して、親友の結婚式で男を引っ掛けようなんて思っていなかった。

純粋に、親友をお祝いし、挙式場所である沖縄を満喫しようとしていたのだ。

でも、あの瞳に吸い込まれた。

そして、気が付いたら、彼が泊まっているらしいホテルにいた。

「聞いてる?」

冷たい声が聞こえ、はっと彼の瞳を見た。

「すみません。なんでしょうか?」

私は、冷静を保ちつつ彼を観察しようと思った。

「あいつの話を聞いてくれてありがとうございました。」

無表情のままぺこりと頭を下げる。

「いいえ・・・って、聞いていらっしゃったんですか!?」

聞いていてもおかしくない。

彼は、ずっと病室のところにいたのだから

「聞こえたんだ、わざとじゃない。ところで、あんた俺らの職業も知らないってどういうことだ?」

私は、無意識に後退していた。

この人の瞳のせいだ。

「私は、彼の担当ではありません。病状さえ知っていればいいといわれています。なにかご不満がおありでしたら、病院に言ってください。それが、ココの方針ですから」

私は、なんとかこれ以上後退しないよう気持ちを抑え負けないように言った。

「そうか。でも、彼が運ばれてきたときに普通はわかるだろう?」

すぐに言い返してきた彼

「私は、さっき出勤したばかりです。4日間休暇を頂いていたので彼が運ばれた午前中にはいませんでした。それだけでしたら 失礼いたします。」

むかつく!!

そう思い、私は彼に背を向け歩き出した。

「俺達の職業は、刑事だ。じゃあな、川久保茉莉花さん」

彼は、私に追いつき耳元でそういい去って行った。


 「見送りに行かないのか?」

ナースステーションで仕事をしていると、声をかけられた。

すぐに誰だかわかったがわざと少し間を置き答えた。

「昨日も言いましたが、担当ではないので。それに見ての通り私はお留守番です。」

広いナースステーションの中で一人黙々と仕事をしていた。

「・・・」

黙っているが彼の言いたいことはすぐにわかった。

きっとこんな日中にお留守番とはどういうことだ?と言いたいのだろう。

「あなたの後輩がモテモテだという現状です。わかったら早く迎えに行ってあげてください。」

私は、再び仕事をするため目線を下ろし再開した。

彼は何も言わずには去っていったようだ。

なぜわざわざここに来たのだろうか。

患者さんの部屋はエレベーターを降りてすぐここには一度病室を通り過ぎてこなければならない。

通り道でもなんでもない。

私は彼が通っていったであろう廊下を見つめた。

彼の中ではあのことはなかったことになっているのだろうか・・・

名前、聞いておけばよかった。

・・・なんで私、彼のことばかり考えてるのっ!!

彼が覚えないなんて当たり前じゃない。

その場限りの関係だったんだから

もう、会うことなんてないのだから

私は、頭から彼のことを追い払うため頭をぶんぶんと振った。

そして、仕事に集中しようと再びカルテに見入った。



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