刺客
ふと見上げればそこには青い空がある
燦々と光を放つ太陽もある
おれらはしっかりと地面を踏みしめて歩いている
本当にここは一体何なのだろうか…
これ以上一人で考えても無駄か…
おれの前を二人が何やら楽しそうに話ながら歩いている。
周りは何処にでもあるような平坦な道…並樹道…
人が幾度となく通り、草が踏み分けられ、自然と道の形を示している。
何処にでもある風景…そう、何処にでも…ある……
この世界と自分たちがいた世界は違う…
刀を持たなければ…青葉さんと出会わなければ…この風景を見て誰が疑うだろうか…
世界が違うのだと………
「夏屶?…もう!ちょっと夏屶!?聞いてる?」
「あ、あぁ!いや、つい考え事を…」
もう、っと顔を膨らませながら怒る表情を見せる美沙を見て、不意に可愛いと思ってしまった。
こんな時に何を考えてるんだ…
ブルブルと顔を横に振り、頭の中を切り替える。
ガサッ…
(ん?今何か…)
横の茂みからの音に気付いたのはおれだけではないらしい。
二人も同じ方を向いていた。
「夏屶君、美沙ちゃん、後ろへ」
青葉さんから言われるままにおれらは後ろへ引いた。
そして青葉さんは刀を取り出した。
やはり何かがいる…
「出てこい!」
ガサガサッ…
青葉さんの一喝で茂みから姿を現した黒ずくめの人…
(また黒か…)
『…転生者の命…もらい受けます…邪魔するのならば……斬る!』
「斬れるものなら…!?」
「……っ!」
正に一瞬…刹那にしておれらの前の人…青葉さんは斬られ、地面に崩れ落ちた…
(なんだコイツ…)
そのまま視線はこちらに向けられる。
やはり狙いはおれらか…
「美沙はおれが守る…」
おれはさっきと同じ様に、手に刀を握る。
美沙を守る為に…自分が生きる為に…
だが相手はあの青葉さんを一瞬で殺した奴。
守れるか?…おれに…
考えている暇はない…
覚悟は出来ている。
倒すことは出来なくとも美沙だけは…
「来い!」
刀を構え、敵を真っ直ぐに見据える。
一歩…
二歩…
徐々に近づいてくる…
「……っ!」
(早い!)
刹那にして間合いを詰められる。
(横か!)
気づけば敵の刀は既に動き始めている。
「くそっ!」
キィン――
間一髪のところで刀を受け止める…が、相手の力に負け、数メートル後ろへ飛ばされ尻餅を着いてしまった。
「くっ…」
一歩一歩近づいて来る…
その顔には不適な笑みが浮かんでいる。
おれは黒い男から目を反らすことはせず、ただ睨むことを辞めなかった。
(ここで終わるのか?…おれらは…)
『まず…一人目……!?』
「間に合ってよかった」
突如黒い男の背後に白い服を身に纏う人が。
白…ということはやはり味方なのか?…
「さぁ…大切な仲間に刃を向ける者は…消えてもらおうかな」
低く、重みのある声で黒い男に台詞を投げ掛ける。
黒い男は微かに震えていた。
いや、震えているのは奴だけではない…気がつくと自分も震えていた…
怖い…
この急に現れた人は場の雰囲気を一気に変えてしまった。
恐怖しか味わえない雰囲気へと…
『くっ!』
緊迫した空気の中、先に動いたのは黒の方…
しかし、男は何もせずに茂みの中へと紛れて行った。
夏屶「………」
美沙「何ぼーっとしてるのよ!」
夏屶「痛っ!叩くことはないだろ」
美沙「だってぼーっとしてる人を見ると叩きたくなるじゃん?それに…」
夏屶「………」
美沙「あっ!またぼーっとしてる!」
夏屶「痛っ!だから叩くな!(さっきより痛い)」
美沙「人の話はちゃんと最後まで聞きなさい!」
夏屶「はい…って、お前何様だよ?」
美沙「あ〜!あれの予約してくるのも忘れた…最悪ぅ…」
夏屶(…人の話を最初から聞かないのは良いのか?…)