白の男
「小僧今の動きは何だ!?」
何だと言われても自分でも何が何だかわかってないのに答えられるかよ。
「さぁ、おれ自身わからないです」
適当に答える。
今は全ての動きが普通に見える。
(あれは何だったんだ)
「夏屶〜」
「うわっ」
後ろから急に抱きつかれ、驚いた間抜けな声を出してしまった。
美沙はおれの後ろからゆっくりと白づくめの男を見る。
おれも一応は警戒の意を持ち、美沙を隠しながら少し身構える。
「おいおい、二人ともそう怖い顔をするな。おれは味方だ」
男は両手の平をおれらに見せるようにし、何かをする意思がないことを示している。
まぁ、そりゃあ一緒に戦って守ってくれた人ではあるしな。
「貴方は誰ですか?」
いつのまにか美沙もおれの横に並んで立っている。
「ああ、おれか?おれは青葉 和人聖天護法隊、第十手、高村隊の副隊長だ」
な…長いな。しかもややこしい。
部隊ってなんだよ。
いろいろと考えていると美沙が思い出したように口を開いた。
「あっ!青葉さん、霞達を知りませんか?」
「霞達って言うと、もう二人のことかな?」
「あ、はい。そうです」
さすが大人だ。知らない名前を聞いても判断したな。
それにしても美沙は相変わらず人のことを考えて話さないな。
「二人とも高村隊長達に助けられてるはずだよ。さぁ、おれらもこんな所に何時までも居ないで、行こうか」
行く?どこに行くつもりだ?
おれが考えている間にまた美沙が言葉を発している。
「えっ!?行くってどこにですか?」
まったく…口は早いな。
「今から君たちを安全な場所、おれらが暮らしている聖白園に行くんだ。ここから一番近い入口、《ヘブンズゲート》が目的地だな」
「ヘブンズゲート?」
なんか天国に行くみたいだな。というか、さっきから話しを聞いていると、いや、さっきの戦いの時から思い始めたらが…
おれらは本当にタイムスリップしたのか?
ややこしいことを考えるのは好きじゃないのになぁ…
まったく…
何でこんなことに…今さらか。
「あの〜、ここ何時代なんですか?」
美沙が核心をついた質問を恐る恐る聞いた。
その答えは…
「何時代だぁ!?お嬢ちゃんそれは無いぜ。そうだなぁ…おれからは《精神の世界》としか言えないな。詳しいことは四大聖天使様の誰かに聞いてくれ」
「四大聖天使様??…天使様!?じゃあここは天国なの!?」
美沙が驚いた声を出す。
おれは逆に驚いて声が出ない。本当にここは天国なのか??
おれらは死んだのか??
死んだ後の世界なんて考えたこともなかった。天国なんてものは信じなかった。
でも、この今の状況も事実か。
「天国か…あながち間違ってはいないな。だがここは天国であって天国でない場所。とにかく詳しいことは天使様に、だ。」
高村さんは淡々と話を進めていく。
印象に残るのは喋りがしっかりしていることだな。
やっぱりこの人も死んだ人なのだろうか。
「そういえばまだ二人の名前を聞いてなかったな」
確かにそうだ。おれらは人の名前を聞くだけ聞いて何していたんだ。
いや、それも美沙のお陰か…
「あっ!私は川口 美沙です。で、こっちが浅原 夏屶くん」
「ど…どうも」
って勝手にさっさと話を進めるな。
「それじゃあ行こうか。美沙ちゃん、夏屶君」
「はぁ〜い♪」
美沙はかなり元気に返事をする。
(はぁ…だから何歳児だよ…まぁ元気なのが美沙の良いとこなんだけどな。)
そうこう考えていると二人はさっさと行ってしまっていた。
おいおい、また置き去りかよ。
(おれそんなに存在感無いのかよ…)
色々とツッコミたいところはあったが、とにかく着いて行くことにした。
美沙「天国♪天国♪」
夏屶「天国で喜ぶな!」
美沙「え〜、だって天国だよ〜♪滅多に来られないじゃん♪」
夏屶「滅多にどころか二度も来る場所じゃないぞ…」
美沙「地獄もあるのかなぁ??」
夏屶「やっぱりあるんじゃないか??」
美沙「行ってみたいなぁ♪」
夏屶「地獄は恐い所だぞ??」
美沙「え〜!?なら天国がいい♪天国♪天国♪」
夏屶「…こいつ状況分かってるのか??」
美沙「あっ!!天国ってことは…」
夏屶「おっ!!気付いたか」
美沙「テレビあるのかなぁ…ちゃんと予約してくればよかった」
夏屶「…ダメだこいつ」