天使達の集い
聖白園に戻ると、戦いに出ている隊の数はいつもと同じになり、静かな時間が流れていた。
おれらはまず初めに國山さん達に会いに行くことに。
初めてここに来たときに入った集会場…
この時はまだ凛に気づいてやれずに悲しい顔をさせた。
あの時は不思議だったが、今となっては後悔してしまう。
気付けばもう懐かしいと感じている。
あれからどれくらい経っただろうか。
「惇ぅぅぅ!帰ったよ〜♪」
凛の叫び声で意識が現実に戻る。
奥の扉から三人が入ってきた。
「ちゃんと帰ってきたな」
「僕が付いてたからね♪」
「それが心配なのよ」
「うぐっ…麻美、ヒドイよ…」
なにやら早速宮下さんにいじめられたようだ。
物凄く凹んでいる。
はっきり言って、分かりやすい。
しゃがみこんで床を指でいじり回している。
典型的だな…
てかガキだ…
「夏屶、何か分かったか」
「はい、分かりました。自分の過去も、この世界の過去も」
「そうか。なら力も…」
「おそらく戻ったと思います」
その言葉を聞いて、國山さんは嬉しそうだった。
「二大聖天使の復活か…これから夏屶のことを何と呼べば良いのか…」
そう言って、國山さんは苦笑いを見せる。
元二大聖天使となると現聖天使より偉くなるのだろうか…
「おれのことは今まで通りでいいですよ」
「分かった。だが、俺には敬語でなくて良い」
そう言われても結構困るよな。
数日前まで上だった人に対していきなり敬語を辞めるなんて…
「凛だって敬語じゃないんだ。同じ二大聖天使の夏屶が敬語だと変だ」
ん〜、凛は誰にでも敬語を使わなさそうだ。
でもその理屈にあやかるかな。
「ならそうしよう…かな」
「これでぎこちなさが無くなるね」
宮下さんがいきなり視界に飛び込んできた。
…実はこの人も面倒なのかもしれない
よく考えてみたら凛をいじる程の人が面倒でない筈がない。
「宮下さんも元気だな…」
「名字で呼ばなくていいって。麻美って呼んでね」
やっぱり面倒だ…
凛が幼い少女ならこの人は危ないお姉さんって感じか…
「それなら俺らのことも名前でいいからな」
うわっ、國山さん達も便乗してきた。
四大聖天使って変な人が集まってる気がしてきた。
「わかった。よろしく頼むよ、惇、亮、麻美」
それぞれの顔に笑みが溢れる。
ただ一人を除いて…
「ねぇ…僕は?」
下から声が聞こえてきた。
そこを見ると未だにしゃがみこんでいる凛の姿が。
「あっ、忘れてた」
うん、悪いけど素で忘れてたよ。
「うわぁん、夏屶に忘れられたぁぁぁ」
「凛は頼りないんだとさ」
言っちゃったよ…しかもめっちゃ笑顔で…
ここぞとばかりに追い討ちをかける麻美は本当の意味で悪魔かも…
「うわぁぁぁん、夏屶のバカ、ハゲ、意気地無し、美少年、ほっぺ摘ませろ、抱く勇気もないくせに、部屋に居るから慰めろ〜」
………
さて、勢いよく出て行ったバカ本人はどうでもいいとして、吐き棄てていった言葉の何からつっこもうか…
面倒だ……
てか絶対に全ての言葉がおかしいだろ!!
途中に危ない言葉あったしよ。
「夏屶…どうするんだ?」
心配するなら笑いながら言うなよ。
三人ともめっちゃ笑ってるよ…
悪気なんて微塵も無いな。
「とりあえず…無視する」
正直面倒だし、どうせ戻ってくるだろう。
「夏屶もやるようになったね」
そう言ってくる麻美が一番笑顔だ。
なるべく関わりたくないかもしれない。
そうだ、凛騒動で忘れかけていたがやりたいことがあったんだ。
おれは緩んだ顔を戻し、真面目な顔にする。
「惇達に頼みがある」
おれの声色が変わったのに気づき、三人は直ぐに真面目な顔になる。
「模擬試合を申し込みたい」
おれは自分の力を試してみたかった。
それを聞いた三人は驚いた表情を見せたが、直ぐに笑みを溢した。
「面白い。これで聖天使様の実力がわかるな」
三人は楽しそうだ。
それはおれにとっても好都合。
「なら中央演習場で」
おれらは演習場へと向かった。
夏「今回は久しぶりに凛が出ないな」
麻「お陰で出放題だよ」
夏「げっ…もしかして…」
惇「残念だがそのもしかしてだ」
麻「凛は出すぎなのよ」
夏「…(やっぱりこの為か)」
麻「当たり前じゃない。これに出る為よ」
夏「うわっ!(普通に心の声に答えたよ)」
麻「甘いわよ、夏屶」
夏「やっぱりこの人面倒だ…」
惇「夏屶、諦めろ」
亮「だね」
夏「二人はよくあんな二人を相手に出来たな…ある意味で凄いよ」
惇「おれらも諦めたからな」
亮「だね」
麻「暇だぁぁぁぁ」
夏「(暴れるな!)」
麻「だって暇だから」
夏「だから普通に答えるな!」