漆黒の破壊神
「くそっ!」
途切れることなく刀と刀が交わる音が響く。
「夏屶の力はそんなものか!」
正直な話、おれは圧されていた。
一度体制を整え、体を低く保ちながら斬り込む。
相手の寸前で右へ地面を蹴り、そのまま回転しながら脇を斬りにいく。
だがそれも易々と止められてしまった。
伸也は刀を二本操っている。
おれの刀を一本だけで受け止め、余ったもう一本で斬りかかってくる。
それをすれすれで避け、直ぐに背後に回ると至近距離から突きを繰り出す。
伸也はそれをまた一本で止めてきた。
点を正確に見きっていないと出来ない芸当だ…
背中を嫌な冷や汗が流れる。
「夏屶がこんなにも弱いとは思わなかったよ。戦い甲斐がない」
「っ……何故お前はそんなに戦いを望む」
いくら白と黒として敵対しているからといっても、伸也に何の躊躇も無いのがショックだった。
「俺は清美を失った…清美は何の理由も分からずお前ら白に殺されたんだよ!」
そんな…清美が死んでいたなんて
おれは驚きを隠せなかった。考えてもみなかったことにただ驚くことしか出来ない。
「その話本当なの?」
不意に発せられた言葉はおれのものではない。
その声の主はおれの後ろに立っていた。
「お、お前はまさか…凛なのか?」
おれは振り向かなくてもだいたい分かっていたが、伸也の言葉で確信を持った。
「清美は死んだの!?」
「あぁ、死んださ…お前ら白に殺されたんだよ!」
今までこんなに声を荒らげる伸也を見たことがない。
「だから俺はお前らを許さない。いくら夏屶と凛であっても」
そう言っている顔に嘘なんて文字はなかった。
目も既に覚悟を決めている目……
「僕だって夏屶は殺させない。夏屶を殺すって言うなら、伸也でも容赦はしないよ」
凛…
凛の言葉は心に響いてきた。
おれだって覚悟は出来てる。
伸也と戦うことに迷いはない。
「凛はおれが守る」
「守る!?そんな気持ちだけで守れると思うのか。力が無ければそんな言葉、意味を成さない。お前にそんな力は…無い!」
伸也の言葉が重くのし掛かる。
確かに今のおれは逆に守られる側だった。
凛が居なければ伸也の相手など出来ないことなど分かっていた…
悔しさと情けなさが込みあげる
「夏屶、僕は夏屶が居るから伸也と闘う覚悟が出来たんだよ。僕は夏屶にちゃんと守られてるから」
それが口だけだとしても、その言葉がおれを救った。
今はまだ力が足りなくても、凛がおれを必要としてくれるなら、おれは下を向いている暇などない。
おれは前を…上を目指すのみだ。
刀を構え直し、自分に葛を入れる為にも声を大きくした。
「いくぜ、伸也ぁぁぁ!」
おれは再び伸也と刀を交える。
またも一本で止められるが、今度は勝手が違う。
ほぼ同時に伸也の後ろから大鎌が襲いかかる。
それをもう一本で止めようとするも、あの大鎌に勝てるわけもなく吹き飛ばされる。
おれはその着地を狙って追いかけていった。
相手が着地した瞬間に背後を取り、下から斬り上げる。
今度は止めにきた刀を弾き返し、左脇に大きな隙ができた。
そこを絶妙なタイミングで大鎌が襲いかかる。
が、紙一重で避けられた。
でも、二人ならやれる。
おれらは完全に有利だ。
さらに攻撃を仕掛けようとした時に不意に静止の言葉が掛かる。
「夏屶、駄目!下がって!!」
下がる?
そんなことする意味が分からない。
せっかく有利なんだ。ここで決めない理由なんてない。
無視して斬り込もうとすると今度は後ろへ引かれる力が掛った。
「うわっ!何するんだ凛。このまま……」
全てを言い終わる前に、さっきまでおれが居た周辺が爆音に近い音と共に大きく窪んだ。
「なっ……」
砂煙がだんだんと薄くなり、伸也とは違う人の姿が露になった。
そのものの手には巨大な鉄の塊が先端に付いた長い棒…まさにハンマーを巨大化した武器を持っている。
「破壊神……」
凛が隣で呟いた言葉に目を見開いた。
こいつらが破壊神…
美「うりゃ〜」
霞「いきなりテンション高いね」
美「だって最近出番が少ないんだもん」
一「おれはゆっくり出来るからいいんだが」
美「一稀は出番少なくていいの!問題は私よ」
一「結構傷つくぞ」
美「サブキャラが何を言うか!」
一「お前も変わらんだろ」
美「美沙は主役なんだよ〜!なのに…なのに…」
霞「主役は夏屶くんじゃないの?」
美「そうだ、夏屶が邪魔なんだ!くそ〜、あっ、夏屶〜」
夏「ん?なんだ?」
美「私の為に死んで〜♪」
夏「またかよ…うわっ!危ないって!」
美「待て〜」