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Another World  作者: 北斗
17/28

皮肉な現実


「……た」




「…かなた」


ん?誰かが呼んでる気がする…




「夏屶、起きて」




そこでおれは声の主に気がつく。


「凛?」


「そう、凛だよ♪」


目と意識が覚醒すると目の前に幼い顔があった。


「うわっ!近いって」


「ぶぅ〜、こんなに強く抱き締めてきたのは夏屶でしょ?」


あっ……

そういえば……


はははと苦笑いをしてみせると凛はニッコリと笑顔を見せた。


おれはこの笑顔に惹かれていた気がする。


「ねぇ…その…僕は嬉しいんだけど、もうすぐ集まりの時間になるから…腕を離して?」


「ご、ごめん」


未だに凛を抱き寄せていたことに気づき慌てて背中に回していた腕を離す。


凛は自由に動けるようになると、立ち上がって

「んん〜」と思い切り背伸びをした。


「でも、凛」


「ん?なぁに?」


「その目で外に出ない方がいいと思う」


「??」


きょとんとした顔で訳が分かってないみたいだったから鏡を見せてやった。


「ふわぁぁぁ!目が真っ赤!どどど、どうしよ、や、やばいよ!」


現状に気がついた少女は部屋の中を慌てふためいてバタバタと走り回っている。


慌てすぎだろ……


「とにかく外には出るな」


「む、無理だよ!今日は四大聖天使の集まりがあるのに」


よりによってそんなことが。

自業自得のようなおれのせいのような……

忙しく動いていたが何かを思いついたようだ。


「あっ!目を白く塗ろうか?」


「やってみるか?」


「辞めておく…」


やっぱりろくな考えをしないな。


「あっ!」


今度は何だ!?


「夏屶が僕の代わりに出て♪」


無理だろうが!!


「うん、それでいこう♪」


いや、駄目だろ!!


おれがつっこみに嫌気を感じていると外から怒鳴り声が聞こえてきた。

「こら!凛!!会議の時間過ぎてるぞ!」


國山さんだ…


その前に思ったことがある……



ここはおれの部屋だ!!

凛がおれの部屋に居ることが大前提になってる気がする…


ここまでくるともうどうでもよくなってしまうのは、良いことなのか悪いことなのか…



おれが心の中で喋っていた間も凛はいよいよどうしようと慌てていた。

こうして見るとただの子供だ…


「あ、あのさ…僕、今日は出れないから僕の代わりに夏屶が出るね♪」


本当に言ったよ!


「浅原にあのことはもう話したのか?」


「ま、まだ…」


「じゃあ駄目だ」


じゃあってどういうことだよ!

あのことってのも気になるしよ、それを知ってたら代わりに出ていいのかよ!!


凛はけちとか石頭とかハゲオヤジとか色々と愚痴を言いながら部屋を出て行った……


全て國山さんに当てはまらないだろ…

國山さんもお疲れ様です……


お騒がせ娘が居なくなると部屋は急に静かになり、することもないからぶらぶらと散歩してみることにした。


他の三人と合流する気は無い。今は一人になりたかった。


昨日凛のことを思い出すと同時に、凛の話に出てきていた他の二人のことも思い出した。



伸也と清美……




おれが忘れてしまっていた親友と仲良しだった女の子…




おれは事件の後記憶を無くし、凛を無くした。

当時のおれは事故と信じこまされ、父の転勤に伴って他の中学へ転校することに。

高校で再び伸也と清美に会った時、おれには一からの友達付き合いだった。


何故二人がおれと仲良しだったことを言わなかったのか…何故事件のことを言わなかったのか…

おそらくおれに思い出させたくなかったんだろう。


たまに耳にしていた伸也の言葉…


「おれは大切な人を失った。それもこんな世の中のせいだ。おれはこの世を許さない!」


……今さらになって後悔する…

あの時におれの記憶があれば…あの時伸也に世の中を恨まないよう言ってやれれば…


おれ達のことを思って世の中を恨み…そのせいで今おれ達は敵対している……


こんなにも皮肉なことがあるだろうか


今の伸也を作ってしまったのはおれのせいだ。

伸也は苦しんでいたのだろう…


敵対してしまった今、もう二度と分かり合えることがないのならば、おれが伸也を助けられる唯一の方法は……






「かぁなぁたぁぁぁぁ」


「うわっ!凛、一体なんだ!?」


廊下を歩いているところをいきなり抱きつかれた。

何故か泣いている。理由はおそらく…


「うわぁ〜ん…皆に笑われるぅぅぅ」


……やっぱり


少し困惑して、抱きついている少女を見ているとおれの前…つまり凛の後ろから人が来た。


あっ…國山さんだ……


「うげぇ!…誰だ!こんなにもか弱い乙女を後ろから引っ張るのは!」


「さっさと会議に戻るぞ!」


「って、つ、惇!?ごめんなさ〜い…許して?ね♪いやぁ〜許してぇぇぇ」


お騒がせ娘は國山さんにそのまま引っ張られていった……


まるで嵐が通ったみたいだ。


さっきまで深刻な考えをして息苦しいぐらいだったが、今は少し気持ちが楽になった気がした。




部屋に戻ってお茶でも入れておくか。




その後会議から戻ってきた凛は一日中ずっとおれの部屋に籠っていた。


お陰でおれは休む暇がなかったけどね……

凛「皆嫌いだぁぁぁ」


夏「何て言われたんだ?」


凛「聞いてよ!惇達がね……」


――――――――――

惇「おい、こいつの目、見てみろ」


亮「うわっ!真っ赤じゃん!」


麻「あっははは、凛、その顔面白い」


凛「皆して笑うな〜」


麻「あんた昨日何したの?まさか夏屶くんに何かされた?」


凛「違う〜!」


亮「“愛しの夏屶君”だもんな」


惇「ふっ」


凛「亮〜!惇も鼻で笑うな〜」


麻「うさぎだね。う・さ・ぎ」


亮「いや、そんな可愛いもんじゃないだろ」


惇「目の赤いねずみってとこか」


凛「うわぁぁぁん。皆なんて、皆なんて…」


麻&亮「最後まで言えよ!」


――――――――――

凛「皆ひどいでしょ?」


夏「ふっ」


凛「夏屶まで鼻で笑ったぁぁぁぁ」

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