認定試験
「――では、まず最初に行うのは…青葉一稀!」
名前を呼ばれ、一稀が演習場の真ん中へ歩んで行く。
おれらの実力を知るためにここの人達…聖白園の人達と模擬試合をするらしい。
もしかして國山さん達とも戦うのかなぁ…
そうなると
面倒だ…
目の前では既に一稀の試合が始まっていた。
一稀の戦うところを初めて見る。
一稀ってあんなに強いんだな…
相手は下級兵士から始まるみたいだ。一稀はほぼ一瞬で次々に勝ちを手にしていく。
おっ、バカでかい人が出てきた…
まぁ一稀の敵ではないだろうな
一稀はいつもは寝てばかりいるが、実はかなりの馬鹿力の持ち主だったりする。
案の定バカでかい人は一稀に力負けしてあっさりと負けた。
「やっぱり隊長クラスじゃないとダメだって♪」
凛さんが他の三人に提案している。
何故あんなに楽しそうなんだろう?
また厄介なことになりそうな気がする…
一稀は、結局番手の低い隊長には勝っていたが、第三手の人に負けて試験は終わった。
さすがに第三手にもなると半端な強さじゃないな。
「川口美沙!」
「は〜い。う〜し、頑張っちゃうよ〜!」
相変わらず呑気な奴だ。
美沙は意外にも強かった。
一稀までは行かないものの、第5手の隊長に負けるまで終始ハイテンションで戦っていた。
「まぁけぇたぁぁぁ〜」
負けた張本人は、もの凄く大袈裟に嘆きながら戻ってきた。
煩い…
てか何故そんなにテンションが高い!?
「…楽しそうだな」
「もちろん!夏屶もしてみればわかるよ」
初めて戦って泣いてたのは何処のどいつだよ!
やっぱり美沙はわからん。
ん?次は霞か。
ということはおれは最後か。
霞は徹底した守りの体制で、相手の隙を見つけては確実に攻撃を当てていた。
力で押す一稀とは違って堅実な霞か。
お似合いカップルなのかもな。
霞は第6手で体力が持たなくなって負けた。
あれだけ連戦すれば当然か。
「次!浅原夏屶!」
やっとおれの番か。
ゆっくりと真ん中へ足を進める。
いざ中央に立つと周りの視線とが一点に集まり、極度の緊張に襲われる。
初めに戦う相手はやはり下級位の人からみたいだ。
ゆっくりと演習用の木刀を構え、相手を見据える。
いよいよだ
「始め!」の掛け声を合図に互いに動きだす。
遅い
相手の動きが遅すぎる
わざとスローモーションで動いてるようにしか思えなかった。
上体を少し屈め、刹那にして間合いを詰めると同時に腹部に一撃を入れる。
審判員のコールが聞こえないほどに会場をどよめきが包んだ。
(そんなに驚くことなのか?)
「やっぱり隊長クラスじゃないと無理だと思うな〜♪」
凛さんが何か余計なことを言っているような…
戦う回数が少なくて済むならそれはそれで歓迎なんだが。
凛さんの勧めで何故か一気に隊長クラスの人と戦うことになった。
相手はあの青葉さんの部隊隊長…高村さんだ。
「青葉の節は世話になったね」
「いえ、自分のせいで青葉さんは…」
ぎゅっと木刀を持つ手に力を入れる。
それを高村さんは見逃さなかったみたいだ。
「君がそんなに悔やむことはないよ。青葉の為にも今僕に力を見せてくれ」
さすがは隊長、器も違う。
そうだ、おれはおれの為に犠牲になった青葉さんの為にも、みんなを守る為にも強くなければならないんだ。
「いきますよ」
始まりの合図と同時に一気に斬り込む――高村さんでも動きが遅い。
小細工などせず一直線に動き、同じ様に一撃を入れた。
『早いな…』
『あの動きは並じゃない…』
いろいろな声が聞こえてくる。
―やれる
それは推測でなく確信――
おれは第4手まで比較的楽に勝ちを手にした。
自分でも不思議な気分だ。
何故こんなに周りの動きが遅く見えるのだろうか。
闘いに勝てている喜びよりも、疑問の念が頭を埋め尽くしていた。
だが、また新たな悪魔の囁きが耳に入りその思考は停止した。
「僕にやらせて♪その方が実力がわかるし、手っ取り早いからさ♪ね?惇いいでしょ?」
ま、待て
何故凛さんと…無理が有りすぎるだろ
しかも國山さん承諾してるよ…
やっぱり凛さんが絡むとものすごく面倒なことになる。
おれの目の前には無邪気に笑う少女が――
さて、どうなることやら
一「疲れた」
夏「…第一声がそれかよ」
美「まだ試合した〜い!」
夏(だから何故そんなにテンションが高いんだよ)
美「そうだ!夏屶やろうよ」
夏「はっ!?そんな無理に決まって…」
凛「そうだよ!夏屶くんは僕とするんだから♪」
夏「…(嫌です)」
美「夏屶は私が!」
凛「僕だよ!」
美「夏屶は私のものなの!」
凛「夏屶くんは僕のだもん!」
夏「…(待て、方向が変わってる)」
霞「夏屶君はわたしのじゃないけど…暇だから参加する」
夏「理由がおかしい!しかもおれは誰のものでもない!」
美&凛「えっ!?そうなの!?」
夏「…(何故に驚く…)」