苦悩
しばらくして、部屋の扉が開き、谷口さんが入ってきた。
「君たちの部屋が決まったから…それぞれ確認しておいて…明日のことはそれぞれ連絡が行くと思うから」
そう言ってこの建物の見取図が手渡された。
どうやらこの建物に住むみたいだ。
建物は結構広い。
四人には個室が与えられていた。
「じゃあ…また明日な…」
おれを含めた四人は暗い面持ちで部屋を後にする…
「か、夏屶君…」
「はい?」
部屋を出ようとすると、谷口さんに呼び止められた。
何か浮かない顔をして、最初に出会った時のような元気が無い。
「あの…辛いだろうけど…生き抜いてね……覚悟はいるだろうけど…生きて!」
初めの谷口さんからは想像も出来ないほど暗く、今にも泣き出しそうな顔で言葉を発した。
なぜそんな顔をしているのかおれにはさっぱりわからない…
だが、何か心に深く、重く突き刺さる感じがした。
「谷口さん…ありがとうございます…おれ、そんなに弱くないので安心してください!」
「そう…」
谷口さんの表情はなおも冴えないままである。
目の前で女の人にこんな表情をされるのは初めてだ。
どうしていいのかわからないまま無言の時が流れた…
「で、では…谷口さんもそろそろ部屋に…」
この場の重い空気から逃げるように去ろうとした。
なぜかはわからないが、耐えられないものがあった。
「ま、待って!…その…谷口さんって呼ぶの…止めてほしいな……ほ、ほら、谷口さんなんて堅苦しいじゃん?僕には似合わないしさ…ね?」
予想外な言葉を聞かされた。
苦笑いともとれるどこか複雑な笑みで…
「わかりました。じゃあ…部屋に行きますね?ありがとうございました…凛さん…」
「……っ」
すぐに部屋を出ていったために、凛さんが涙を流していたことには気づかなかった。
この人はなぜおれにあんな顔をしてきたのか…なぜあんな事を言ってきたのか…
なぜこんなに胸が苦しくなるのだろうか……
今のおれにはわからなかった…
(夏屶……僕も辛いよ…)
凛「…………」
惇「おっ!凛がそんなに暗いなんて珍しいな」
凛「く、暗い!?そ、そんなことないよ!それは惇の勘違い♪」
麻美「凛が暗いと気味が悪いしね」
凛「麻美!そこまで言うか!?もぅ〜」
亮「凛はいつも明るいからね」
惇「単純なだけだろ」
凛「ひ、ひどい…僕のどこが単純なんだよ」
惇「明るくしてると毎日プレゼントが貰えるらしいぞ」
凛「……マジで!?じゃあ明るくしてよ♪」
亮&麻「単純すぎる…」