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第8話 混乱の渦の中で
第8話 混乱の渦の中で
頭の中が真っ白になっていた。
「聖女」と呼ばれ、跪かれ、玉座の上からじっと見つめられる。
いやいや、そんな急に大役を押しつけられても困るんですけど!?
(……落ち着け、落ち着け私。とりあえず夢じゃないっぽい。じゃあ現実? 異世界召喚? いやいや小説やゲームの話でしょ普通!)
鼓動が速くなりすぎて、呼吸もうまくできない。
視線を上げるのも怖い。
でも、玉座に座る皇帝夫妻のまなざしは温かく、隣に立つ青年の瞳はまっすぐだった。
(……え、ちょっと待って。なにこの人、よく見るとイケメンすぎない?きゃあ、恥ずかしいんだけど!?)
一瞬で心臓の鼓動が別の意味で早まる。
混乱と緊張と動揺と、あと少しのときめきがぐちゃぐちゃに混ざり合い、頭の処理能力が完全に追いつかない。
「……えっと、その……」
声を出そうとしたけど、口の中がからからに乾いていた。
何を言えばいいのかもわからない。
そんな私に、白衣をまとった神官が静かに歩み寄る。
「ご安心ください、聖女さま。すべては神託の導きにございます」
(安心できるわけないでしょ……!)
泣きそうになりながら必死で立ち上がった。
そうして、異世界での長い日々が幕を開けたのだった。




