表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/35

第25話 試練の山と聖なる翼

(;゜Д゜) (゜Д゜;) (;つД⊂)ゴシゴシ (゜Д゜)え …


ラ、ランクイン…だと!?


 アウラから告げられた使命。

 ――「堕ちた聖獣を救いなさい。それが、あなたの力を取り戻す最初の試練となる」


 その言葉が、まだ胸の奥で熱を持っていた。


 私はひとり、山へと足を踏み入れる。


(試練って言われても……どうしたらいいんだろう)


 不安はある。

 当然だ。私は勇者じゃない。剣の達人でもない。


 でも、引き返すという選択肢は最初からなかった。


 岩肌を覆う霧が白くたなびき、ひっそりとした山頂の空気を満たしていた。


 草木は少なく、足元は冷たい石だらけ。

 風が吹くたび、霧がうねるように流れる。


 やがて――。


 風に乗って、低い唸り声が聞こえてきた。


 私は息を呑んだ。


 霧の奥に、岩壁の裂け目がある。

 洞窟だ。


 その奥から、黒い瘴気が滲み出していた。


(ここ……)


 足がすくむ。

 けれど私は歯を食いしばり、洞窟へ踏み込んだ。


 洞窟の奥。


 そこにいたのは、神話から抜け出したかのような存在だった。


 獅子の強靭な体。

 鷲の鋭い翼。


 聖獣グリフォン。


 本来なら太陽を背に悠然と飛ぶはずのその神獣は、黒い瘴気に絡め取られ、鎖に縛られたまま地に伏していた。


 黄金の羽は煤け、輝きを失っている。

 瞳には濁った怨念が渦巻き、それでも――その奥にかすかな光が、まだ確かに残っていた。


 呼吸のたびに身体が震え、苦しみに耐えるように爪が地面を削っている。


「……なんて、悲しい姿」


 威厳あるはずの存在が、苦しみによじれている。

 それだけで胸が裂けそうになった。


(これを……救う)


 口に出すのも怖い。

 でも、ここまで来た以上――やるしかない。


「大丈夫。あなたは……まだ、戻れる」


 私はそっと近づき、震える両手を胸の前で合わせた。


 忘れていたはずの祈りの仕草。

 なのに指先は自然と形を作り、唇は懐かしい響きを紡ぎ出す。


 ――言葉が、勝手に出てくる。


 ――光よ。清らかなるものよ。すべての穢れを洗い流し、命を還せ。


(……私、こんなの覚えてたっけ)


 胸の奥が熱い。

 心臓が、鼓動とは別のリズムで脈打つ。


 封じられていた光が、目を覚ますように息を吹き返していく。


「……聖なるものよ、還れ」


 呟いた瞬間。


 私の身体から、黄金の光が溢れ出した。


 それは炎ではなく、風のように柔らかい光。

 霧を払い、空気を清め、夜明けのような温もりを広げていく。


 続いて――白銀の輝きが迸った。


 「ヒール」と呼ぶにはあまりに壮大で、浄化の光そのものだった。

 淡く揺らめく粒子が舞い、まるで夜空の星屑が降り注ぐように洞窟を満たしていく。


 グリフォンを絡め取っていた瘴気が、ぎちぎちと軋む音を立てた。


 黒い影が悲鳴を上げるかのように渦を巻き、光と闇がぶつかり合う。


「……っ!」


 思った以上に、身体が持っていかれる。


 膝が震える。

 喉の奥が焼けるように痛い。


(これ……私の力なのに、制御できない……!)


 それでも祈りを止めなかった。


 目の前の聖獣が苦しんでいる。

 その姿が、私を前へ押した。


 やがて――。


 グリフォンの羽根一枚一枚が、光を取り戻し始めた。


 煤が剥がれ落ちるように闇が消え、黄金の輝きが蘇っていく。


 それはただの「浄化」ではない。

 失われた尊厳が甦る、儀式のようだった。


 その瞬間。


 鎖が軋み、砕ける音が洞窟に響いた。


 グリフォンは天を衝く声で咆哮した。


 怒りでも嘆きでもない。

 解放の声。


 苦悶の叫びが次第に歓喜の調べへと変わり、洞窟の空気が一気に澄んでいく。


 霧が吹き飛び、山頂の空が一瞬だけ晴れた。


 そして――その瞳が、静かに私を映す。


 懐かしい感覚が胸を打つ。


 あのとき、仲間と並んで祈り、救い、支えてきた数々の戦い。

 聖女として歩んだ日々が、一気に蘇る。


(……ああ、これ……私の力だ)


 胸の奥が熱くなる。

 長い眠りから目覚めるように、封じられていた力が流れ込み、全身を満たしていく。


 懐かしい。

 けれど確かに、今の自分のものとして。


 グリフォンは膝を折り、その額を私に差し出した。


 その仕草に応えるように、私は静かに手を触れる。


 ――光が一閃し、彼の額に紋が刻まれる。


 聖なる加護の証。


 その瞬間、澄み渡る金の瞳が私を射抜いた。


『……人の子よ。汝の光、我が魂に届いた』


 その眼差しは試すものではなく、古の守護者が「後継者」を認めるものだった。


『この羽根を、証として託そう』


『いずれ汝が歩む道に影が差すとき――我ら一族が空より導きを与える』


 宙に浮かんだ一枚の羽根が、音もなく私の掌へ舞い降りる。


 触れた瞬間、心臓の奥が震えた。


 胸の内側に、確かな温かさが灯る。

 内なる光が、ほんの少しだけ強まったのが分かった。


(……これが、私の力)


 指先が震える。

 怖い。でも――どこか懐かしい。


 私は確信する。


 聖女としての力が、確かに息を吹き返したのだと。


 ただし、まだ完全ではない。


(……でも、始まったんだ)


 私の二度目の人生は。

シリアスモードに失礼しました。


あまりの感動に。


皆様のおかげです。

下の★をポチっとしていただけると、とても励みになります。

なかなか、恋愛にははいりませんが、来月も毎日投稿しますので宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ