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第21話 怪しいのは誰?

 雨宿りの洞窟。

 ぱちぱちと焚き火がはぜる音だけが響く中、私はちょこんと隅っこに座っていた。


 外は土砂降り。洞窟の入口から冷たい風と雨粒が吹き込み、しばらくは出られそうにない。


 冒険者たちは暇を持て余し、酒袋を回しながら世間話を始めていた。

 ……いや、世間話というより、完全に飲み会だ。


(この人たち、雨宿り中に宴会する余裕あるんだ……)


 私は濡れた髪を指で押さえながら、なるべく目立たないようにしていた。


 すると。


「しかしよぉ……」


 リーダー格らしい大男が、酒袋を持ったまま私をちらりと見やる。


「篠原さや、だっけか? あんた、どっから来たんだ?」


(来た。取り調べタイム)


 私は笑顔を作り、慌てて答える。


「え? えーと……街の外れの農村から……」


 とっさにそう言った瞬間、大男が目を細めた。


「嘘くせえな。農村の娘がそんなにきれいな肌してるわけねえだろ。畑仕事の跡がねえ」


「そうそう。指も白いしな。貴族の落とし子って線が濃いんじゃねえか?」


「いやいや、スパイかもしれねえぞ。あの国の密偵とか!」


「待って。髪の色、ちょっと珍しいよな。修道院から逃げてきた聖女候補だったりして?」


 ……いやいやいや。


(なんでそんな三択クイズみたいに勝手に盛り上がってるの!?)


 私は思わず手をぶんぶん振った。


「ちょ、ちょっと待って! 私ほんとにただの一般人だから!」


「逆に怪しいな」


「言い訳が必死すぎる」


「……ますますスパイっぽい」


「ひぃぃ……やめて! その流れやめて!」


 もう完全に面白がられている。


(いや、私ただの被害者なんですけど!?)


 必死で否定しても、冒険者たちはどんどん想像を膨らませていく。


 私は焚き火を見つめながら、頭を抱えた。


(どうしよう……このままだと私のキャラ設定、勝手に決められちゃう……!)


 しかも信じてくれないどころか、話が妙にスケールアップしていく。


 ついには――。


「いやもう確定だな。こいつは修道院の秘密を握ってる亡命者だ」


「……それだ!」


(そんなの確定されても困るんだけど!?)


 私は声にならない悲鳴を上げた。


 洞窟の中は笑いと憶測でひっかき回され、私の心だけがどんどん削れていく。


 真実はただの「召喚された一般人」。

 ……いや、正確には「二度目の異世界人」なんだけど。


 もちろん、そんなこと口が裂けても言えるわけがない。


(言ったら絶対、余計面倒なことになる)


 私はため息をついて、濡れた膝を抱えた。


(……はぁ。早く晴れてくれないかなぁ……)


 焚き火の炎が揺れ、洞窟の奥が一瞬だけ暗くなる。


 その影が、なぜか少しだけ不気味に見えた。

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