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第20話 疑いの視線

「お前、雑草取りの割には動きが無駄に洗練されてるよな」


 青年冒険者はじっと私を見据えた。


 雨雲が近づく曇天の下、その目は獲物を値踏みする獣のように鋭い。

 さっきまでの緊張が、今さらになってじわじわ蘇ってくる。


「……え、ええ? ただの農家の手伝い経験ですけど?」


「はあ? 鍬じゃなくて剣を自然に構える農家がいるかよ」


 ぐさっと核心を突かれ、私は顔を引きつらせた。


(やばい……確かに剣道部仕込みの構え、うっかり出ちゃった……!)


 青年の隣にいた冒険者の少女が、不審そうに首をかしげる。


「しかもあの動き、何年も訓練してないと無理だよ。どこの兵舎で修行したの?」


「え、えーっと……筋肉が……勝手に?」


「は?」


 少女の目がさらに細くなる。

 あ、これは完全にやらかした。


 空気がどんどん疑念に染まっていく。


 さらに後ろにいたローブ姿の魔術師が腕を組み、


「魔力は感じないし、魔術師ではなさそうだが……剣士にしては素人っぽい。奇妙だな」


 ぼそりと呟いた。


(あーもう! 怪しまれてる!)


(でも正直に『異世界二度目なんです』なんて言えるわけないし!)


 青年冒険者が一歩踏み込んでくる。


「お前、素性を隠してるな?」


 鋭い視線が刺さる。

 私は息を飲み、無意識に後ずさった。


 ……まずい。逃げたら余計に怪しまれる。


 緊張で身体が固まった、その瞬間だった。


 ぽつり。


 大粒の雨が、頬に当たった。


 続けて、ざあっと音を立てるように雨が落ちてくる。


「っ、雷雨だ!」


 青年が空を見上げ、すぐに仲間へ指示を飛ばした。


「集落まで急げ!」


 冒険者たちが一斉に走り出す。


 青年はちらりと私を見て、迷いなく言った。


「逃げられても困る。お前も一緒に来い」


「えっ――ちょっ!?」


 腕を掴まれ、引っ張られる。


(え、強制連行!?)


 雨脚はどんどん強くなる。

 服は一瞬で重くなり、髪から水が滴った。


 ずぶ濡れになりながら走る中、私は心の中で盛大にため息をつく。


(雑草取りだけで生き延びるつもりだったのに……)


(どうしてこうなるの!?)


 雷鳴が遠くで鳴り、空が不気味に光った。


 私の平穏な異世界生活は、どうやら今日も許されないらしい。

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