第18話 隣村でのおもてなし
「おお、本当に持ってきてくれたのか!」
隣村に到着した私は、依頼を出していた村人に荷物を渡した。
ついでに、角ウサギも。
角ウサギを見た瞬間、村人たちの目が丸くなる。
「雑用頼んだはずが、魔物まで仕留めてくれるとは……いやはや、助かった!」
「しかも傷一つ負ってないぞ!? なかなかやるな、お嬢ちゃん!」
「い、いえ……あの、たまたまです! ほんと、偶然で……!」
私は慌てて手を振った。
(いや、実際ほぼ雑草袋の勝利だし……!)
でも村人たちはそんな事情なんて気にせず、満面の笑みで拍手をしてくれる。
なんだか居心地が悪い。
悪い意味じゃなく、照れくさい。
その夜。
村の広場で即席の宴が開かれた。
焚き火の周りに人が集まり、笑い声があちこちから響く。
料理の匂いが漂ってきて、自然とお腹が鳴った。
メインはもちろん――私が倒した角ウサギの肉だった。
「さあさあ、食べてみてくれ! 新鮮だぞ!」
「は、はい……いただきます!」
恐る恐る一口かじる。
次の瞬間、肉汁がじゅわっと広がった。
臭みはなく、弾力があって、驚くほどジューシー。
「……お、おいしいっ!」
思わず声が漏れた。
村人たちはそれを聞いて大笑いする。
「だろう? 角ウサギは美味いんだ!」
「これが食えるのも、お嬢ちゃんのおかげだ!」
子どもたちが「すごーい!」と駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん強いんだね!」
「魔物、やっつけたの!?」
「ち、ちがうのよ~! ほんとに偶然で……!」
言い訳しても、子どもたちは聞いちゃいない。
きゃっきゃと笑って、私の周りをぐるぐる回る。
「でもありがとう! これで安心して眠れる!」
「最近この辺、魔物が出て困ってたんだよ!」
そんな言葉を浴びるうちに、胸の奥がじんわり温かくなっていく。
(……私、役に立てたんだ)
勇者でも聖女でもない。
女神に選ばれたわけでもない。
ただの旅人として、ただの人間として。
それでも誰かに感謝されることが、こんなに嬉しいなんて思わなかった。
気づけば、目の奥が熱くなっていた。
(……泣くな私。ここで泣いたら、絶対変な空気になる)
私はこっそり袖で目元を拭き、何事もなかったふりをして肉をもう一口食べた。
宴が終わり、村の明かりが少しずつ消えていく。
私は外に出て、夜空を見上げた。
星がやけに近い。
空気が澄んでいて、胸いっぱいに吸い込むと少しだけ心が軽くなる。
「ふぅ……雑草取りから始まった冒険が、こんな風になるなんてね」
遠くから子どもたちの笑い声が聞こえる。
その音が、やけに優しく響いた。
私は小さく笑って、心の中で決意する。
(もっと、この世界をちゃんと見ていきたい)
怖いこともある。
理不尽もある。
でも、今日みたいな日があるなら――悪くない。
そうして私は、また一歩前へ進むことにした。




