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第16話 はじめてのおつかい依頼?

翌朝。

 私は冒険者ギルドに顔を出し、掲示板の前に立った。


 昨日は草むしりで終わったけど、今日はもう少し冒険者っぽい仕事をしてみたい。


(……とはいえ、魔物退治は即死コースだしね)


 腕を組みながら、依頼書を一枚ずつ眺めていく。


 討伐。討伐。護衛。討伐。

 やたら血生臭い。


(うん、無理。生き残るのが目標です)


 そうして慎重に探していると、小さな文字で書かれた依頼が目に入った。


『隣村への荷物運搬。道中に魔物の目撃情報あり、要注意』


(……おつかいだ!)


 しかも「隣村」。

 つまりちょっとした小旅行。冒険者っぽさもある。


(よし。これなら、私にもできる)


「これ、受けます!」


 私は依頼書を引き抜いて受付へ向かい、受付嬢に差し出した。


 受付嬢は紙を見て、少し驚いた顔で私を見返す。


「えっと……危険があるかもしれませんが、大丈夫ですか?」


「大丈夫です! 荷物運びなら得意ですし!」


(剣道部仕込みの体力はまだ残ってる。たぶん)


 昨日の草むしりで腰がバキバキになった気もするけど、そこは気合でなんとかする。


 受付嬢は「まあ……」と苦笑しながら、必要書類を揃えてくれた。


「では、こちらを。道中、何かあれば無理せず引き返してくださいね」


「はい!」


(心配されてる……。うん、分かってる。私も命は惜しい)


 荷物を受け取って街を出ると、広い街道が続いていた。


 小麦畑の向こうに、小さな森が見える。

 風は爽やかで、空も高い。


(……異世界なのに、のどかだなあ)


 このまま何事もなく終われば、ただの散歩で済みそうだ。


 ――なんて思った、その時。


(でも、魔物が出るって書いてあったんだよね)


 草むらが、ガサリと揺れた。


「ひっ!?」


反射的に足が止まる。


 次の瞬間、飛び出してきたのは――ウサギ。

 ただのウサギじゃない。頭に小さな角が生えている。


 目が赤く光り、こちらを睨んでいた。


「うわ……なにこれ……」


(角ウサギ!? 魔物ウサギ!? ゲームで見たやつ!)


 可愛い顔をしてるくせに、雰囲気が完全に「襲う気満々」だ。


 依頼書の「要注意」は、どうやら本当だったらしい。


 私は息を飲み、腰の短剣に手を伸ばす。


(落ち着け、私。昨日まで草むしりしてたけど、今日は冒険者なんだから)


 手が少し震える。

 怖い。でも、逃げたら追われるかもしれない。


 角ウサギが低く唸り、地面を蹴った。


「……来る!」


 私は短剣を抜き、身構える。


「よし……やるしかない!」


小さな一歩。


でも確かに、私の冒険はここから動き出していた。

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