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第15話 雑草取りは冒険の始まり?

毎日見てくださる方ありがとうございます(感謝)

マイペースですが投稿がんばります。

 冒険者ギルドの掲示板には、依頼書がずらりと並んでいた。


 魔物討伐。護衛任務。薬草採取。迷宮探索。

 文字だけでも危険が伝わってくるようなものばかりだ。


(……いやいやいや。初日から死にに行くのはナシでしょ)


 私は腕を組んで悩み、しばらく掲示板の前で固まった。


 強そうな男たちが、平然と討伐依頼を引き抜いていく。

 その背中を見ているだけで、胃がきゅっと縮む。


(私はただの追放OL。戦闘経験ゼロ。魔力ゼロ。

 ここで張り切ったら、人生終了だよ)


 そう結論を出した私は、ひときわ地味な紙をそっと引き抜いた。


「農場の雑草取り ※初心者歓迎、安全です。収納袋付き」


「……これだね!」


 声に出して、自分を納得させる。


(安全第一。命があってこその異世界生活!)


 郊外の農場に着くと、恰幅のいい農夫のおじさんが迎えてくれた。


「おお、手伝いに来てくれたのか。助かるよ!」


 にこにこ笑う顔が、妙に安心感をくれる。


(よし。人は怖くなさそう)


 案内された畑を見た瞬間、私はその考えを撤回した。


「……え」


 畑一面、雑草。雑草。雑草。

 元気いっぱいに伸びきった草が、作物の列を覆い尽くしている。


 しかも太陽が容赦なく照りつけ、地面はカチカチに乾いていた。


(これ……安全っていうか……修行では?)


 しゃがみ込んで草を引き抜く。


……抜けない。


(え? 雑草ってこんな強いの?)


 全力で引っ張ると、「ぶちっ!」と根っこごと抜けた。

 だが勢い余って、そのまま後ろにひっくり返る。


「うわああ……!」


 背中から泥の感触。

 最悪だ。服が終わった。


 農夫のおじさんが笑いながら言う。


「はっはっは! 慣れりゃ簡単だ!」


(慣れるまでが地獄なんだよ……!)


 それでも私は黙々と草を抜き続けた。


 気づけば手は泥だらけ。

 爪の間に土が入り込み、腰がじわじわと悲鳴を上げ始める。


(……だめだ。私、完全に舐めてた)


 その時。


 足元に、ふわっと影が落ちた。


 顔を上げると、真っ白な毛玉みたいな生き物が私を覗き込んでいた。

 羊……? でも耳が犬っぽい。

 目がくりくりしていて、妙に賢そうだ。


「……もふっ」


 思わず声が漏れる。


「うわ、かわいい!」


 私はつい抱きついた。

 ふわふわで、あったかくて、信じられないくらい柔らかい。


(なにこれ……癒し……!)


 一瞬だけ、草むしりの現実から逃避できた。


 ――が。


「おい嬢ちゃん、サボってねえで草抜いてくれよ!」


 農夫のおじさんの声が飛んできた。


「は、はいぃー!」


 私は慌てて毛玉を放し、再び雑草と向き合う。


(……やっぱり雑草取りも、冒険だよね)


 日が傾くころ。


 腰は痛い。手は泥だらけ。腕もパンパン。

 私は畑の端にへたり込んだ。


 でも、畑は見違えるほどきれいになっていた。

 雑草の海だった場所に、ちゃんと作物の列が見える。


「ありがとうよ。助かった!」


 農夫のおじさんは笑顔で褒美の銅貨を手渡してくれた。


 小さなコイン。

 たったそれだけなのに、ずしりと重く感じる。


(……私が、自分で稼いだ)


 汗だくで泥まみれの報酬。

 でもその重みが、胸の奥をじんわり熱くした。


(雑草取りくらいでヘロヘロになってるけど……)


 私は苦笑して、銅貨をぎゅっと握りしめる。


(まあ、最初の一歩だよね)


 こうして私は、異世界で初めての依頼を終えた。

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