第14話 冒険者ギルドへ
翌朝、私は早起きして身支度を整えた。
宿の朝食――パンと薄いスープをかき込み、昨日聞いた通り中央広場を抜ける。
すると、遠くからでもわかるほど立派な建物が目に入った。木造の二階建て、大きな扉の上には剣と盾を象った看板。
(……うん、どう見てもギルドって感じ!)
胸の奥が少し高鳴る。
勇者でも聖女でもない、ただの「追放OL」。でも、ここからが私の異世界生活の本番だ。
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扉を押し開けると、いきなり酒と汗と革の匂いが鼻をついた。
ざわざわとした空気の中、テーブルでは冒険者たちが酒を酌み交わし、壁際には依頼の張り紙がずらり。
奥のカウンターには事務員らしき人が何人も座り、書類を捌いていた。
(おお……なんかテンプレ! 異世界冒険者ギルドの現物を拝めるとは……!)
感動していると、近くのテーブルから声が飛んできた。
「おい見ろよ、新顔だぜ」
「またひよっこが登録に来たのか?」
あからさまな視線を感じつつも、私は気にせずカウンターへ向かう。
ここでビビって引き返したら、笑い話にもならない。
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「ようこそ、冒険者ギルドへ。登録希望ですか?」
対応してくれたのは、眼鏡をかけた事務員の女性だった。
笑顔は仕事用だが、慣れた調子で言葉を並べる。
「登録には簡単な身元確認と、適性検査があります。費用は銀貨一枚。年齢制限はなく、特に問題なければ仮登録から始められます」
「……適性検査、ですか?」
「ええ。身体能力と魔力量を簡単に測るんです」
(げっ、魔力量! ここでバレるの? 魔力なし判定、二回目やるの?)
思わず冷や汗がにじむ。
けれど、ここで逃げてもどうしようもない。腹をくくるしかない。
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「では、こちらの水晶に手を置いてください」
差し出されたのは、両手に収まるくらいの透明な水晶球。
……ああ、これもテンプレ。どこかで見たことある光景。
私は深呼吸し、両手を水晶に置いた。
すると中に淡い光が広がり、事務員が記録用紙にペンを走らせる。
「……ふむ。体力は平均的、敏捷はやや低め。魔力量は……?」
一瞬、事務員の眉がぴくりと動いた。
「……ゼロ、ですね」
(はい出たーーー! 安定のゼロ判定!)
背後からクスクス笑いが聞こえる。
「魔力なしだってよ」
「はは、ただの素人じゃねえか」
遠慮のない声が飛んできた。
(……まあ、笑われるのも慣れてきたかも)
心のどこかが冷えていく。
でも、ここで折れたら負けだ。
私は肩をすくめて答えた。
「まあ、しょうがないですよね。ないものはないし」
事務員は少し驚いた顔をしていた。
普通なら落ち込むところを、あっさり受け入れたように見えたのだろう。
「……あなた、案外肝が据わってますね。魔力がなくても依頼は受けられます。ただし、無理は禁物ですよ」
「ありがとうございます!」
書類に名前を書き込み、登録証を受け取る。
これで、晴れて「冒険者」の仲間入りだ。
(よし。二度目の異世界、二度目の人生。
肩書きは“冒険者”からスタート!)
私は手にした冒険者証を見つめながら、胸の中で小さくガッツポーズをした。




