第13話 酒場のざわめき
食後、私はそのまま宿の一階――兼用の酒場に腰を落ち着けた。
夕方が近いせいか、仕事を終えたらしい冒険者や商人たちが集まってきている。木の机と椅子、ランプの明かり。ざわめきと笑い声、ビールの泡。
異世界二度目とはいえ、この「人間くさいにぎやかさ」はやっぱり少し落ち着く。
(さて……情報収集タイム、かな)
耳を澄ますと、あちこちで色んな話が飛び交っていた。
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「西の森で魔物が増えてるらしいぞ。新人じゃ骨も残らんだろうな」
「この間の依頼、ギルドが銀貨五枚も出してたぜ」
「……ったく、王都の貴族は口ばっかで金を出さねぇ」
あからさまに物騒な会話が多い。
でも同時に、「ギルド」という単語が頻繁に聞こえてくる。どうやらこの街にもちゃんと冒険者ギルドがあるらしい。
(やっぱり定番だね、ギルド!)
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女将さんが追加でパンを運んでくれたので、私はさりげなく尋ねてみた。
「あの……すみません。この街に、冒険者ギルドってありますか?」
女将さんは驚くでもなく、にっこり笑って答えてくれる。
「ええ、中央広場を抜けた先。すぐに分かりますよ。あそこはいつも人が出入りしてますからね」
「ありがとうございます!」
思ったよりも親切に教えてくれて、胸をなで下ろす。
この街は、余所者に対してそこまで冷たくはないみたいだ。
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パンをかじりながら、私は心の中で整理する。
(ギルドに登録して、仕事を受ければ当面の生活費は稼げる。……問題は、私がどこまでやれるかだよね)
戦闘力ゼロの一般人。魔力なし判定。
だけど――二度目の異世界生活。まったくの素人じゃない。経験と知識はある。
(大事なのは、最初の一歩をどう踏み出すか……か)
酒場のざわめきの中で、私はカップを握りしめた。
こうして、次の目的地は決まった。
(よし。明日は冒険者ギルドに行こう)




