第12話 はじめての町へ
町の門は思ったよりも高かった。
木と石で作られた二重の門扉、その上には簡素ながら見張り台。
異世界に来て二度目とはいえ、こういう「日常的な防御設備」をまじまじ見ると、やっぱり異国情緒がすごい。
門の前には荷車を引く商人、荷物を背負った旅人、冒険者風の若者たちが列を作っていた。私も最後尾につく。
(えーと……入国審査、みたいなのがあるのかな?)
ちょっと不安になりながら列を進める。やがて兵士に声をかけられた。
「身分証か通行証はあるか?」
(やっぱり来たか……!)
私は慌てて、小袋から支度金の一部を取り出す。
正直「賄賂が通じるのか」も分からないけど、素直に「余所者で身分証なし」を出すのも危険な気がした。
「あの……異国から流れてきた者でして。身分証は持っていません。でも町で仕事を探したいんです」
すると兵士は眉をひそめたが、ちらりと小袋を見てから肩をすくめた。
「……一見だな。税を払えば入れる」
差し出した銀貨一枚を確認すると、彼は門の横に名前を簡単に記録して通してくれた。
(おお……意外とすんなり通った! やっぱりお金、大事!)
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門を抜けると、そこには雑多で活気ある通りが広がっていた。
干し肉や野菜を売る屋台、酒場から漂う匂い、馬車の音、子どもたちの笑い声。
久しぶりに「人の営み」に囲まれて、少しだけ安心する。
(さて、ここからが本番だよね)
やることは三つ。
一、宿を探して寝床を確保する。
二、情報収集。特に冒険者ギルドの場所。
三、今後の稼ぎ方を考える。
お腹も減ってきたし、まずは宿かな。
安くて安全で、できれば飯付きのところ。異世界ナメたら即アウトだし。
私は目についた看板を頼りに路地を曲がり、石造りの宿屋へ入った。中は木の香りが漂い、客の話し声が程よく響いていた。
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「いらっしゃいませ、旅のお方?」
カウンターにいたのは、恰幅の良い中年の女将さんだった。
彼女の視線は一瞬で私の服装や荷物を見抜き、「余所者」と判断したようだったが、にこやかに対応してくれる。
「一泊、いくらでしょうか」
「食事付きで銀貨一枚、素泊まりなら半分」
(高いのか安いのか、相場が分からない……!)
けれど、まずは安全第一。私は銀貨を差し出し、食事付きで部屋をお願いした。
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部屋に荷物を置き、出されたシチューを口にすると――塩気が少し強いが、空腹には染み渡る味だった。
ほっと息をつくと、少しだけ緊張が緩んだ。
(うん、まずは第一関門クリア。寝床とご飯ゲット)
次は、いよいよ冒険者ギルド。
ただし焦らない。情報収集は食後に、酒場で耳を澄ませるところから始めるのが賢いやり方だ。
(さて……どんな人たちがいるのか、楽しみ半分、不安半分だね)
私は食器を片付け、椅子に座り直した。
これからの異世界生活をどう動かしていくか、その一歩が始まろうとしていた。




