第四章 目覚めた後に、持っている
第4章できたので投稿します
第四話 目覚めたあとに、持っている
目を開けた。
白い天井が、ぶれずに視界に収まった。
息を吸う。
深く、静かに入ってくる。
吐く。
途中で引っかからない。
それだけで分かった。
――終わった。
十日間。
長かったのか、短かったのかは分からない。
ただ、
胸の奥にあった“重なり”が、きれいに一つになっている。
起き上がる。
反動はない。
めまいも、痛みもない。
床に足を下ろした瞬間、
身体が自然に重心を取った。
考えるより先に、動いている。
「……」
何も言わず、手を見る。
指を曲げる。
開く。
力は入れていない。
だが、力が足りないとも感じない。
その時だった。
何もない空間に、
形が浮かんだ。
銃。
金属の輪郭が、はっきり見える。
光を反射しないのに、形だけが分かる。
そこにある。
視線を動かすと、
今度は刀が見えた。
刃はない。
だが、刀だと分かる。
握れば振れる。
振れば、斬れる。
理由はない。
そうだと、身体が知っている。
「……心銃」
声に出すと、
銃の輪郭がわずかに定まった。
「……心刀」
刀も同じように、そこに在り続ける。
どちらも、
最初から自分の中にあった。
渡された感覚はない。
与えられたとも思わない。
思い出しただけだ。
病室の隅に、気配がある。
伽耶だった。
立ち姿は変わらない。
こちらを見ているが、何も言わない。
「……使える」
それは確信だった。
撃てる。
斬れる。
今すぐにでも。
頭の中に、場所が浮かぶ。
誰もいない場所。
人の気配が届かないところ。
確かめたい。
どこまでできるのか。
何が変わったのか。
一歩、足を出しかけて――止めた。
「……まだだ」
声は、自然に出た。
怖いわけじゃない。
自信がないわけでもない。
ただ、
今使えば、戻れなくなると分かっていた。
伽耶は、何も言わない。
止めもしない。
促しもしない。
その沈黙が、正しい判断だと示していた。
力はある。
武器もある。
だが、
それを振るう理由は、まだ来ていない。
一は、ベッドに腰を下ろした。
呼吸を整える。
音が聞こえる。
廊下の足音。
看護師の会話。
遠くのエレベーター。
すべて正確に把握できる。
だが、干渉しない。
「……まだだ」
もう一度、胸の中で繰り返す。
完全に思い出したからこそ、
急がない。
炎の前で立ち止まった時と、
同じ選択だった。
心銃も、心刀も、
そこに在る。
見えている。
だからこそ――
今は、使わない。




