第二章 目を覚ましたあと
2章です読んでみてください
意識は、痛みの中で浮かび上がった。
最初に分かったのは、横になっているということだった。
目を開ける。
白い天井が視界に入る。照明が強い。少し眩しい。
頭を動かそうとして、やめた。
動かす前から、痛みが来た。
頭の奥。首。背中。腕。脚。
どこか一箇所ではない。全身が同時に痛い。
外から殴られたような痛みではない。
内側から無理に引き伸ばされている感覚だった。
息を吸うと、胸が軋む。
吐くと、少し楽になる。
声を出そうとして、出ないことに気づく。
喉は動くが、音にならない。
しばらくして、病院だと分かった。
消毒液の匂い。
一定の間隔で鳴る電子音。
どこか遠くで人の声。
状況は理解できる。
だが、ここに来た理由が思い出せない。
考えようとした瞬間、
頭の奥に鋭い痛みが走った。
思考そのものを止められた感覚だった。
指を一本、動かそうとする。
動かない。
正確には、動かそうとした命令が途中で途切れる。
力が入らないわけでも、感覚がないわけでもない。
身体が、自分のものじゃない。
その時、音が増えた。
近くの機械音。
廊下を歩く足音。
遠くの話し声。
距離の感覚がない。
すべてが同じ近さで聞こえる。
うるさくはない。
ただ、量が多い。
頭が痛む。
その中で、ひとつだけはっきりした声が聞こえた。
「起きましたね」
耳ではなく、直接頭に届く声だった。
視線を動かす。
病室の隅に、誰かが立っている。
医者ではない。
看護師でもない。
だが、そこにいることに違和感はなかった。
「今は、これ以上起きていられません」
「身体が、まだ追いついていない」
意味を考えようとした瞬間、
痛みが深くなる。
理解する余裕はなかった。
「これは失敗ではありません」
「必要な時間です」
その言葉を最後に、
音が遠のいた。
視界が暗くなる。
意識が、静かに沈んでいく。
――それが、一度目の目覚めだった。
*
その後、五日間。
意識は戻らなかった。
眠っていた、というより、落ちていた。
夢は見ない。
炎も、城も、現れない。
ただ、身体の内側で、
何かが組み替えられている感覚だけがあった。
それが何なのかは、まだ分からない。




