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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-7.道筋を探す

  ダーリオンとエルデは、高所から地上街の様子を見下ろしていた。


 レジスタンスが襲撃されたあの日から、すでに数日が経っている。

 街は一見すると静けさを取り戻し、人々も通りを行き交っていた。


 だが、それは表面だけの平穏だった。


 誰の顔にも笑顔はなく、視線は伏せられ、諦めにも似た感情が張り付いている。

 声を潜め、互いを警戒しながら歩くその姿は、街全体が怯えているかのようだった。


「魔法を使えない人間は、今も増え続けている……」


  ダーリオンは低く呟きながら、視線を街の外へと向ける。


「貴族どもは……一体、どんな未来を思い描いているんだろうな」


  目線を上げた先の街の外には、平野と森林が果てしなく広がっていた。

 そこは魔物と神秘に満ちた世界。

 一歩踏み出せば命を落とす危険がある一方で、強力な魔法具が眠る場所でもある。


 それを求め、命懸けで外の世界へ踏み出す者もいた。


 街は今も、わずかずつ拡張されている。

 だが外界の広さは圧倒的で、仮に街が世界を覆うとしても、それは気が遠くなるほど先の未来の話だろう。


「魔法で何でもできる……しかも、自分たちを上位に置いて、下を見る存在がいる」


  エルデは淡々と、しかし確信を込めて言った。


「全員がそうだとは思いません。でも……あいつらにとっては、今の状況が理想なんじゃないですかね」


  旅の中で、エルデは多くの貴族を見てきた。

 その中には、権力を持つ者として自らを厳しく律する者もいたし、魔法を使えない人々のために身を粉にして働く、慈愛に満ちた者もいた。


 だからこそ、彼の考えは変わった。


 魔法を使える支配者層そのものが悪なのではない。

 ――悪いのは、この歪んだ支配体制だ。


 体制と空気が変われば、彼らもまた良き貴族になれるはずだ。

 そのために必要なのは、象徴を打ち倒すこと。


 支配者階層の頂点。

 冷血王ゼルファウス・ウェルザルト。


 彼を倒さなければ、何も変わらない。


「そろそろ戻ろうか。会議が始まる」

「分かりました」


 二人は、陽光に照らされる地上街を背にした。




  創世教教会の地下。

 そこに広がる広大な隠れ家の一室には、レジスタンスの主要人物が集まっていた。


 リーダーのダーリオンを筆頭に、レジスタンスの各リーダー達、エルデ、ミーリャ、ジェルド。

 会議の目的はただ一つ――今後、どう動くか。


 最初に口を開いたのはダーリオンだった。


「集まってくれて感謝する。今回は、俺たちレジスタンスが向かうべき方向を伝える事と、その道筋について意見をもらいたい」


  ダーリオンは一同を見渡す。


 ここに集まったのは、壊滅的な打撃を受けてもなお、レジスタンスに留まり続けた者たちだ。

 恐怖はあれど、誰の目にも怯えはなかった。


「まず現状だ。この街以外のレジスタンスの生き残った者は潜んで貰っている。また、国外に逃げることが出来た者を通して、他国のレジスタンスの状況も聞くことが出来た。怪我の功名だな」

「他の国はどうなっているんだ?」


  ジェルドが興味深そうに問いかける。


「他国は騒ぎこそ起きていないが、その分、鬱憤が積もり積もっている。爆発するのは時間の問題だな」


  各国のとレジスタンス同士の繋がりは薄い。

 魔法を使えない者が多く、街の外との連絡は困難を極めていたからだ。


 だが、この街のレジスタンスは比較的魔法具が揃っている。

 最低限の通信手段を持ち、他国へ逃れた仲間を介して、情報がダーリオンの元へ集まり始めていた。


「さて……俺たちの目的を改めて言おう」


  ダーリオンは一呼吸置く。


「目的は変わらない。冷血王、ゼルファウス・ウェルザルトの打倒だ」


 室内がざわめく。

 その中で冷静だったのは、エルデとミーリャ、ジェルドの三人だけだった。


「支配者層全体を潰すのは現実的じゃねぇ。いきなり統治者が消えれば、それはそれで混乱を招くからな」


 ダーリオンは続ける。


「ゼルファウスは、今の世界の象徴だ。あいつを倒せば、その影響はウェルザルト王国に留まらず、世界全体に及ぶはずだ」


  エルデは静かに頷いた。

 旅の中で、ゼルファウスの名がどれほどの影響力を持つかを、嫌というほど見てきたからだ。


「……だが、言うは易しだ」


  ダーリオンの声が少し低くなる。


「以前、奴と一対一で戦った。結果は完敗。命を拾えたのは、エルデの助けがあったからに過ぎない。だから、どうすれば良いか、皆の意見が聞きたい」


  この場にいる誰もが、ダーリオンの実力を知っている。

 剣士としても、指導者としても、彼は突出していた。


 そのダーリオンが通用しなかった。

 室内に、重い沈黙が落ちる。


 その沈黙を破ったのは、エルデだった。


「……ゼルファウスに対抗する手段として、一つ提案があります」

「なんだ?」


「ここに来る前に聞いた話なんですが、

 “対魔法の盾”が眠っている洞窟があるそうです。

 詳しいことは分かりませんが……対抗手段にはなるはずです」


 ダーリオンは腕を組み、考え込む。


 他に意見も出ないこの状況、正直なところ、他に有力な策はない。

 仮に空振りだったとしても、現状が悪化するわけではないだろう。


「……いいだろう」


  決断は早かった。


「俺とエルデ、それに数名で向かう。ミーリャとジェルドは、引き続きここで皆に技を教えてくれ」


「任せてください。代わりにエルデをお願いしますね」

「分かった」


  二人は迷いなく頷いた。


 まだ課題は山積みだ。

 だが、動き出すための道筋は見えた。


「細かい指示は追って伝える。皆、しばらくの間開けるが、ここを頼むぞ!」

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