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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
神話時代 (神韻残響80)
39/66

2-6裏 悪い子にも働いた分だけプレゼントをあげよう

  俺はあのあと、都市ファルザーンをこっそり抜け出して、天界に戻ってきた。

 いや、別に『現世』にいても問題はないんだけどさ。

 モニターを堂々と開いて見るには、ちょっと周りの目が気になるっていうか……まあ、念のためってやつ。


「さて、アリアンたちの動きはどうなってる?」

「ふむ。順調に侵略を拡大しておるようじゃの」


  ヒガンの報告通り、アリアンたちの勢いはまるで燃え広がる火みたいで、止められる気配ゼロ。

 ちょっと面白かったのが、支配地域が広がるのと同時に魔物の数も増えてるってこと。


 アリアンが直々に生み出したのは、せいぜい数千のはず。

 けれど、いざ動き出すと数万に膨れ上がり、いまや十万を超えている。

 数で人類の十倍以上。しかも、種類まで増えてる。

 四足獣、羽をもつ影、ぬめる泥の怪物……もはや「新しい生態系」ができちゃってる感じだ。


「へぇ~、こうやって魔物って定着していくんだな。いや~、いいもん見たわ」


  ファンタジー物語って、魔物の起源とかあんまり語られないこと多いけど、この世界はちゃんと語れるな。

 ってことで、そんな魔物を生み出したアリアンに、ちょっとしたプレゼントを用意してやることにした。


 俺は指輪をひとつ創り出した。

 冷たい光沢を放つ銀環。その表面に刻まれるのは、黒と白が溶け合うような模様。


「名前は……ヒガン、頼む!」

封環エクリプス・リング、でどうじゃ?」

「おっ、それいいじゃん。採用!」


  白人形に指輪を持たせて、アリアンの元へ送り出す。

 え? 自分で行かないのかって? いやいや、なんか怖いじゃん。直接俺が行くのはちょっと……ね?




  白人形を送った場所は、黒の居城。アリアンが今住んでいる立派なお家だ。

 丁度一人で考え事をしていたようで、余計な邪魔が入らず助かる。

 燃えるような瞳で何かを思索している。その姿は確かに「魔王」と呼ぶにふさわしい。


「……何者だ?」


  アリアンが警戒して問いかけてきた。

 まあ、いきなり現れたらびっくりするよな。立場的に暗殺者かもって思うだろうし。


 俺の名前を出すのもなんか違う気がするし、ここは「神の使い」ってことにしておこう。

 実際、俺が動かしてるけど、使いっちゃ使いだし。


「神の使いです。貴方に、与えるものがあって来ました」


  自分の声を落ち着けるように言葉を選ぶ。

 けれど、返ってきたのは冷たい嘲笑。


「……胡散臭いな」


  アリアンはそう言いながら、いきなり神力を凝縮した球体をぶっ放してきた。

 ちょ、いきなり攻撃とかやめてよ! 急すぎて白人形動かせなかったし。

 まあ、俺謹製の人形だからダメージは平気だと思うけど……持ってる指輪、壊れてないよな?


「……ほう」


  興味深げにアリアンが目を細める。その視線は鋭く、心の奥まで射抜かれるようだ。

 なんか、アリアンは俺のこと誤解してるっぽいけど、まあいいや。


「まあ待て。私は戦いに来たのではない。忠告しに来たのでもない。――“授け”に来たのだ」

「俺に何かを与えよう? ずいぶん上から来るな!」


  飛びかかってくるのは予想してたから、今度はちゃんと受け止める。

 本気で撃ってきてるみたいだけど、白人形には勝てないんだな、これが!


 アリアンは距離を取って神力を高め、炎の矢を放ってきた。

 白人形は耐えられるけど、指輪が心配だったから、その術は消去。


「なっ……!」


  アリアン、めっちゃ驚いてる。

 そろそろ話を進めたいんで、その隙を突いて、人形を操り、瞬時にアリアンの首を掴んで床へと叩きつけた。


「お前は……何者だ……?」

「言っただろう。神の使いだと」


  暴れ出す前に、アリアンに指輪をはめさせる。

 一瞬、白人形の顔をじっと見てたけど……もしかして、操ってる俺のこと見えた?

 まあ、別にいいけど。


「これは、倒した相手の“神力”を奪い、自らのものとするための指輪だ。

 神力を失った者は、しばらくの間はそれを使うことができない。もっとも、いずれは戻る。……何十年かかけてな」


  俺の説明を聞いて、アリアンは何か考え込んでるっぽい。

 何考えてるかは分かんないけど、とりあえず目的は達成!


 手を離して、アリアンを自由にしてやる。

 とりあえず、投げ捨てたりはしなかったみたいでホッとした。


「……いいだろう。使ってやる。これで、アークライトの偉大さを世界に知らしめてやろうではないか!」


  アリアンの声は高らかだった。だが――


「違うだろう?」


  口をついて出た。なんとなくだけど、俺の中で確信めいた感情があった。


「お前がやっていることは、アークライトの為ではない。

 お前自身の欲望と虚栄のためだ。栄光を浴び、崇められるためだけに動いている。始祖を語るのは、その“言い訳”に過ぎない」


  まあ、アリアン自身も気づいてなかったんだろうな。

 自分の行動が正しいって思いたいのは、どの時代でも一緒だし。

 一応、アリアンは“悪”として動いてるわけだし、忠告してやるのも神の役目ってことで。

 ……って考えてたら、アリアンが急にキレた。


「出鱈目を言うなぁぁぁ!」


  轟音。殺気の渦。

 殺気マシマシの全力攻撃にビビって、思わず白人形を呼び戻しちゃった。

 額を押さえ、深呼吸する。

 あ、そういえば指輪の名前、伝えるの忘れてたな……まあ、いっか。


 それにしても……無事って分かってても、つい反応しちゃうな。

 今後のこと考えて、驚いて対応しないように気をつけよ。


 さて、次はライラたち勇者組か。

 魔王アリアンに対抗するために、何を用意してやろうかな~。


 天界の窓の外に目をやる。広がるのは、光と影が織りなす世界の景色。

 俺の胸に奇妙な昂ぶりが灯る。

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