2-3裏.神は人を助けない 物語を助けるのだ
「アリアンって、現代じゃめっちゃ強いと思うんだよね」
森の奥で繰り広げられる戦いを眺めながら、俺はそんなことをぼんやりと考えていた。
木々の間を縫うように吹き抜ける風は、ただの自然のざわめきじゃない。
枝葉が揺れるたび、空気の振動に金属音めいたものが混じる。魔力同士がぶつかり合い、森そのものがうなっている――そんな感じだ。
いやほんと、アリアンってすごい。
短期間で、あんな化け物をあれだけの数そろえるなんて、どんな発想と技術力を持ってんのか。
俺は彼の生み出した連中を“魔物”と呼ぶことに決めた。アリアンに倣ってね。
時代がもっと進み、「神韻残響」が下がれば、彼らも人間にとって深刻な脅威になるだろう。
けど、この時代じゃまだまだ。せいぜい子供がちょっと手こずるくらいの存在だ。
それでも、だ。
あれだけの数の魔物たちが、ライラには一切歯が立たない。足止めすらできてないって、どういうことだよ。
「アリアンが最強ってわけじゃないんだよね。スペックだけの話だけど。現代でスペック最強なのは、ライラだったっぽい」
まさに“鎧袖一触”ってやつだ。
黒の城へ一直線に駆けるライラ。その行く手を魔物たちが覆うが、彼女は神力を全身に巡らせ、振るう拳の一撃ごとに敵を粉砕していく。
遠距離から飛来する矢や魔弾も、軽やかにかわし、返す電撃で射手複数を黒焦げにしてしまう。
数で押し潰そうとしても、神力の爆発でまとめて吹き飛ばされるだけだ。
……この調子じゃ、アリアンすら倒されるんじゃないか? そんな予感が頭をよぎる。
門前の魔物を一掃したライラは、迷いなく城へ突入。
俺は少し考えて、城の中へは入らず外からモニターすることにした。なんか面倒な展開になりそうな気がしたからだ。
――どぉぉぉん!
次の瞬間、門番の鉄巨人二体ごと扉が吹き飛び、爆煙の中からライラが王座の間に突入する。
……派手すぎ。
修理費があるとして、現代なら一発で予算が飛ぶぞ。何の予算かは知らんが。
「ようこそ、我が城へ。よく来たな、ライラ」
玉座に座していたアリアンが、静かに立ち上がる。
その姿は、まるで舞台の主役のようだ。
――って、ひとりでライラとやり合う気か? スペック差わかってんのかね。まあ、止める気はないけど。
短い言葉の応酬の後、戦闘が始まった。
「おっと、やっぱこっちに来るなこれは。中に入らなくって良かった」
俺は周りを見回したけど、戦いを観戦できそうなナイスな場所がない。雲も遠すぎるし。
しょうがないから、ヒガンと同じく透明になることにした。
次の瞬間、アリアンとライラが城を飛び出し、空と地上を縦横無尽に駆ける。
ライラのスペックは上だが、アリアンの直感的な戦術は鋭い。
攻撃と防御が絶え間なく切り替わり、まるで舞踏のような戦いが続く。
いやこれ、見てるだけでテンション上がるわ。
「おっと、この一手だけ手助けしてあげよう」
アリアンがわずかに隙を見せ、ライラの一撃を背中に受ける。さらに雷撃が襲いかかる――このままじゃ決まる。
俺は指輪を操作し、一瞬だけアリアンの体に防御を張った。雷撃は受けたが、致命傷にはならない程度だ。
狙い通り、アリアンはすぐに自己再生し、そこから反撃の反撃へ。形勢がひっくり返る。
うん、俺ってばナイスアシスト。
「これで決着か~」
アリアンが勝ち誇るが、俺がフォローしなかったら負けてたからね?
止めを刺そうとした瞬間、ライラは転送で姿を消す。
「ヒガン。 ライラがどこに転送したか分かる?」
「ふむ。 都市とかいう所に出たみたいじゃな」
それを聞いてすぐにモニターを起動。映し出されたライラは無事で、少し安堵する。
「この調子だと、次に戦う時はアリアンが負けるかもしれぬの」
ヒガンの言葉に、俺も同意する。確かにそうだろう。
でも――それじゃ面白くない。
物語としては、もう少し引っ張ってほしい。
「ってことで、ライラにはここで制限かけさせてもらおう。」
この時代の人間たちは“神力”という根源的エネルギーで戦い、生活している。
俺はライラの神力を半分までしか引き出せないよう制限をかけた。
アリアンがそうであったように、それでも十分に強いはずだ。
だが、制限されたままではアリアンを倒すのは難しいだろう。
「さ~て、この世界はアリアンにどう対応するのかな?」
ライラとの戦闘を終えた直後、アリアンたちは行動を開始していた。
魔物たちに号令をかけ、進軍が始まる。
俺は高みからその光景を見下ろしながら、次の展開に胸を躍らせていた。
この世界は、彼にどう立ち向かうのか――それを見届けるのが、俺の密かな楽しみだ。




