1-4裏.俺氏大勝利!(AI補正込み)
転移した先には、久しぶりに見るアダムとイヴの姿があった。
……いや、少し老けたか?
「ほんのり」なんて表現じゃ足りないほど、時間が経っているのが分かる。
それでも、二人の背筋は真っ直ぐで、瞳には揺るぎない芯がある。
俺の実年齢なんて、とうの昔に追い越されてる感じだ。――一体、どこまで生きるつもりなんだこの二人。
そんなことを考えながらも、まずは神様モードを演出しないといけない。
エフェクトはヒガンに任せて、上空から威厳たっぷりに降臨。スローモーション、風の舞い、神光演出。うん、いつものセットアップだ。
ところが、降臨する俺の視界に入ってきたのは――想像を遥かに超えた異常事態だった。
遠くの空間が激しく歪み、空が割れたような音が世界を揺らす。
距離があるはずなのに、地面がビリビリと震えるほどの衝撃。
え、何あれ? 何か爆発でもした? いや、これは……戦闘か?
「何が起こってるん?」
俺は神モードをやや忘れつつ、アダムに問いかけた。
やや素のトーンだったが、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
「以前、子らがあなたに捧げものを献上いたしました。長男のサリムは狩った肉を、次男のカイレルは収穫した穀物を。あなたはサリムの捧げ物を褒め、それで終えられました。おそらく、それが引き金です」
……ああ、あの時のか。俺の記憶にすぐよぎる。
あの肉、確かに見事だった。シャトーブリアンだったっけ? リアルでは味わえないのが本当に惜しいくらい、仮想空間でも旨そうだった。
「あの肉、シャトーブリアンだっけ? 美味そうな肉だったよなぁ」
軽くそんなことを呟くと、ヒガンが俺の意図を察して、すかさずフォローしてくれる。
さすがのサポート。横にいるだけで助かる存在だ。
アダムも、俺の言葉にうなずいて納得してくれた。
誤解が解けたならひと安心――ってわけにもいかない。
目を向ければ、今も続く兄弟の戦い。サリムとカイレルの衝突は、もはや小競り合いの域を超えていた。
世界の一角が消し飛ぶ勢いで破壊されてるんだが……。
ところで……俺がこの世界で最強である事は設定上決定しているのだけれども、それがどれぐらい強いのか、一度しっかりと体験で理解したいじゃない?
「やれやれ……そろそろ止めに行きましょうか」
アダムが前に出ようとしたので、折角の機会を逃してはたまらないと、慌てて制した。
これは貴重な機会だ。俺自身が“最強”として設定されているこの世界で、その力を実地で確かめられるチャンスなんて、そうそう無い。
「――ここは、俺に任せてよ!」
「サリム、カイレル。ちょっと待ちな!」
俺の声は、遠くの戦場にしっかりと届いた。
正直、いきなり近づいて流れ弾に巻き込まれるのだけは避けたかった。だからまずは遠距離からの制止コール。
案の定、二人はピタリと動きを止めた。ホッと胸をなで下ろす。
「話は聞いたよ。カイレルはそれで怒るのは、ちょっと違くない?」
「……は、はい……」
俺の言葉に、カイレルが目を伏せる。
けれど、その顔にはまだ納得できてない感情が残っていた。
分かるよ……分かる。俺も昔、母さんに怒られて納得できずに黙ったことあるし。
こういう時はね、理屈じゃダメなんだ。身体を動かすのが一番。だから――
「まあ、気持ちはわかるよ? だからさ。代わりに俺とちょっと戦ってみない?」
「えっ……わ、私が……神と……?」
カイレルの顔が青くなる。そりゃそうか。いきなり神と戦えなんて、普通は戸惑う。
ま、流石に神と戦えって言われても困るかな?
遠慮し畏まってしまっている。
けど、それだと俺の目的が果たせないんだよな。
そこで用意したのは傀儡の白人形。俺の意識で操作する遠隔戦闘用の傀儡。
設定上の“神の力”を間接的に再現しつつ、手加減もできる万能ツールだ。
これなら、能力はあっても戦い初心者の俺が負けても言い訳が立つし、白人形を操作して戦うのも、ゲーム内ゲームみたいで、ちょっと面白そうだ。
こうして、兄弟二人vs俺が操る白人形の対戦が勃発したのだった。
結果……俺の大勝利!
いや~俺ってば強い!
サリムとカイレルが弱かったとか手加減していたとかじゃないぞ?
二人ははっきり言って強過ぎる。能力はアダムとイヴの方が上だが、彼らは性格からして戦おうとしないタイプだ。
戦闘意思も能力も備えてるという点で、サリムとカイレルはまさに“人類最強”。
その最強を寄せつけもしない、俺ってばやっぱ神だな!
まぁ、AIに随分と盛って貰った勝利だけどな……
さて、演出も済んだし、そろそろ締めといこう。
といっても、やるべきことは殆ど無い。
「よーく考えるんだな。後でアダムに説教を受けとけよ。じゃあな」
白人形を通して兄弟に伝えた後は、白人形を光の粒に戻して消去。
「後は頼むぞ、アダム。息子たちを、しっかり教育してやれよ~。ほら行くぞヒガン」
「うむ。やれやれ、若い者の血は熱いのう」
アダムにも一言告げた後はもう終わりなので、ヒガンと共に『天界』へと帰ったのだった。
俺の強さも良くわかったし、今回のイベントは顔出して正解だったぜ。
地送直前に、空を一度だけ振り返った。
……ま、今回は大成功ってことで。
神であることの責任も、楽しさも、両方かみ締めながら、俺は次の展開を心待ちにしていた。




