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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
創世時代 (神韻残響95)
13/67

1-2裏.AIの仕事が完璧すぎる件

  ヒガンがホログラムモニターを操作する中、俺は『天界』の神殿に設置されたソファに身を沈めて、アダムとイヴの様子を観察していた。

 このソファがまた、最高に快適なんだよな……身体を沈めると重力から解放されたような気分になる。

 これも俺が神殿に贅沢を詰め込んだ成果の一つだ。


 さっきまであんなに泣いてたアダムとイヴだったけど、意外にも切り替えが早い。

 表情に陰りは残っているものの、そこに浮かんでいるのは決意の色。

 見ているこっちが驚くほどに、素早く立ち直っている。


 ……俺もあんなふうに、物事をすぐに受け入れられたら良いんだけどな。

 人間は逆境に強い、って言うけど、最初の人類がすでにこのレベルって、なにそれ。


 あ、アダムが何かを作ろうとしてるっぽい。


「ヒガン。またアダムの所に行こうぜ」

「ふむ。承知したのじゃ」


  ヒガンがスッと腕を払うと、それに合わせて空中に浮かんでいたモニターが音もなく消える。その仕草がまた格好良いな。

 ともかく、アダムが何をするのかこの目で見たい。きっと何か面白いものができる予感がする。


 俺は指輪に触れ、ヒガンと共に転送を実行した。




「ここでもいいかな?」

「ええ。とても、良い土地ですわ」


  アダムとイヴは、何か場所を決めたタイミングだったようで丁度良い。

 二人の傍らに、俺とヒガンは登場した。


「何してんの?」

「これは神シーク・ワタル様、そしてヒガン様……!」


  俺たちが現れると、二人は自然に敬意を示してくれた。

 けれど、過度に頭を垂れたり地に伏したりというような、重苦しい敬礼ではない。

 敬いながらも、俺という存在を“遠い雲の上の存在”とはせずに、手の届く神として接してくれる感じがして、個人的にちょうど良かった。


「これから我らの住まいを建てようと、準備していたところです」


  なるほど、家か。確かにそれが無いと始まらないよな。

 ところで、どうやって作るつもりなんだろう?

 不老不死ではなくなったとはいえ、その能力は万能に近いはず。なら、面白い建築風景が見られるかもな。

 あ、時間掛かりそうなら時間の流れを調整しないと……


「なら、その建築を見せてよ!」


  俺は興奮気味に腕を組み直し、じっくり観察する構えを取る。

 基礎からちゃんと作るのか、資材の扱いはどうするのか――あらゆる可能性が頭を駆け巡る。


「神の御業に及ぶはずもありませんが、どうぞ、お納めくだされば幸いです。イヴ、私が建設に集中する間、お二人のもてなしをお願いできますか?」

「はい、もちろんです」


  イヴが愛らしい微笑みのまま俺の脇に立つ。

 イヴは壮絶美人だしなぁ。近くにいるだけで緊張する。

 どこか神秘的で、気品のある美しさがあるし、何より“崇拝されている”って目で見られると、照れくささで変な汗が出そうになる。

 アダムの人妻というのも……あ、なんか新しい扉が開いちゃうかも。

 そんなイヴが、俺の隣に簡易なテーブルを生成し、冷えた水差しと、果物の入った籠を用意してくれた。

 もてなしが完璧すぎて、逆に申し訳なくなってくる。


 と――何やら空気が静まり返った。妙に静かだ。

 俺がふと前方に目を向けると、そこには――


 何もなかった平原に、巨大な建築物が忽然と姿を現していた。


 開いた口が塞がらなかった。


 それはまさに古代ギリシャ風の荘厳な建築。

 白亜の円柱に、風通しの良い回廊、中心には光が優しく差し込む中庭。

 神話の世界から抜け出てきたかのような美しさだった。

 アダムとイヴは、建築物に静かに視線を向けていた。どこか懐かしむような、愛着の籠もったまなざしだった。


「こんな所でしょうか」


  アダムは控えめにそう言って、俺に一礼した。

 いや、ちょっと待て、これ本当に一瞬で作ったのか? 俺の知らない技術がふんだんに使われている。

 装飾ひとつとっても、ただのデザインじゃなくて、それぞれに機能や意味があるっぽい。

 もしかして、リアルの建築より数段上なんじゃないか? いやいや、これは凄すぎる。


 少し考えれば、場所も建築材料も無制限で、全ての知識を活用してAIが最高に思える物を表現するのだ。

 それを考えれば、この出来は当然と言えるのかもしれない。


「う、うん。見事だと思うよ。ま、まぁ創造主の俺には及ばないけど~うん、綺麗」


  ヒガンが黙々と何か操作してるのが見える。……きっと、俺のこのセリフを神らしく変換してくれてるんだろうな。

 ありがとな、ヒガン。あと、ゴメン。


 アダムが仕事を終えると、イヴが水を差し出し、彼の額を優しく拭っていた。

 その光景はまるで一枚の絵画のようだった。


 ヒガンも、用意された水を口にして「おいしいのじゃ」とか言ってたが、俺はその感覚を味わえない。

 物を食べることは出来るけど、ぼんやりとしか味が分からないんだよな。

 これはドリームコクーンのシステムとしての限界だから仕方ない。

 用意してくれたイヴには悪いけど、それに手を付けずにいよう。


「神の御業に比べれば……まだ未熟なものでございます。今後も改善を重ね、よりよい住まいへと高めてまいります」

「いや、今のままでも十分すぎるでしょ。いやー凄い立派だよな。けど、こんなの一瞬で作るのなんて、疲れなかったの?」


  俺がこの世界の設定を考える時も、凄く苦労したのだ。

 しかし、アダムは元気アピールか、腕を振り上げている。


「いえ! 神よ、まだまだ私の力は尽きておりません。イヴと共にある限り、どこまでも進み続けられます」

「まぁアダムの能力なら、倒れる所を想像できないしな。おじゃ、俺は『天界』に戻るから」


  『天界』に戻ってきた俺とヒガン。

 この世界最初の建築物が想定を遥かに突き抜けていたけど、それはそれで良いんじゃないかな?

 これからどうなっていくか、少し楽しみだ。

今回以降、月・木曜日朝の週二回投稿としますので、宜しくお願いします。

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