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ゲキドク!  作者: 解剖タルト
第1章〈私はそれを識っている〉
21/36

【第4部:頭蓋と天蓋のバラッド】第21話「〈創造〉VS〈最強〉」

※第4部はいわゆる「過去編」というやつです。西羅、書籍姫、そして薫の過去について書いていく予定です。西羅と薫については下記ご確認のほどお願いいたします。書籍姫は、現時点で西羅の姉という情報以外はほとんどありません。

樹神薫こだまかおる

・本作の主人公。確か19歳。身長175センチくらい、オレンジ髪のツーブロック。女性に対してキモい態度をとることが多いため、ボコボコに殴られればいい。ヘタレで少し頼りなく、肝心な時にしか役に立たない。

・基本的に食の好き嫌いは無く、食べ残しはしない(えらい)。

・オレンジ髪のせいか、よく柑橘類に間違えられる。西羅からはデコポンと呼ばれている。

・西羅に誘われてゲキドクになった。まだ伸びしろはあるものの、飲み込みが早く、能力の解釈とそれによる能力の拡張によって奇想天外な戦い方をするため、敵からすれば厄介な存在。火力不足が課題。

・能力は〈花〉(吸花と放花)。ゲキドク2級。

西羅せいら

・クソガキに見える20歳(前後)。身長143センチくらい、柔らかい銀髪、透明感のある肌、緋い眼。クソガキのくせに天才で、特に閾の扱いにおいては西羅の右に出る者はいない。「銀の堕天」と呼ばれ、恐れられていたこともある。西羅自身は「みじん切り白髪充血クソガキ」というあだ名を広めたいと思っている。

・髪が白いくせして白米が嫌い。西羅曰く、「炊き込みご飯は好きよ」とのこと。作中では何かと化物を食っている。

・ボコボコにしたいけど、きっとボコボコにされる。だがそれがいい。とてもいい。かわいい。

・能力は〈机〉。作中での言及は無いが、実は猩猩しょうじょう力鬼ちからおにと並んで三督(1級の中でも特に優れた3人のゲキドク)のひとりに数えられている。

・能力の使いすぎによる代償で、皆の記憶から存在を消されている。詳しくは第1部参照のこと。


 それでは本編へGO↓↓↓


【第4部:頭蓋と天蓋のバラッド】

 おひさ! 私のこと覚えてる? ……えぇ最初からいるじゃないか。忘れちゃったならはじめから読み直してどうぞ。と言いたいところだけど、まぁ私のことなんてどうでもいいから読み進めてちょうだい。


 第4部を書く前に少し確認しておきたいことがある。それは、西羅と神樹の戦いについて。西羅はその戦いに敗れて死んだことになっている。確かに見かけ上は正しい。西羅は消えて、神樹は生き残った。

 でも目に見えることだけが正しいとは限らない。ひとりでいる人が孤独であるとは限らないのと同じように、目に見えない真実というものは、当然ではあるが誰かの口から語られなければ分かるはずがない。

 あの時真相を話さなかったのはなぜか。理由はふたつ。ひとつはあの時話したところであなたが理解してくれるとは思わなかったから。物事には順序というものがあってうんたらかんたら。もうひとつはそっちの方が面白いと思ったから。私は空気が読めるんだよ、えっへん。

 でも空気読みはここまで。神樹が消滅したんだから、もうその真相について話したとして、それを咎める者はいない。だからあなたにはこっそりと教えることにする。実は私、この時が来るのをすごく楽しみにしていたんだ。だって最強同士の戦いだよ! ワクワクしちゃうじゃん。


 ちなみに私の正体分かった? 分かるわけないよね、だってまだ物語の中には出てきてないんだもん。真相は闇の中ってやつさ!

 ──第21話「〈創造〉VS〈最強〉」

 神樹は雄大にして荘厳である。天壌無窮の白き巨樹は、しかしながら、今や自らの意思を持たず、毒を振りまく装置として、また毒を詰め込む器として機能している。すなわち、神樹それ自体はほとんど空洞であり、神樹の中で神樹として振る舞う者の正体は「神樹の代理」なのである。

 神樹(の代理)はとある場所にいて、──敵にもそして味方にも気づかれないように細心の注意を払いながら──侵攻のときをうかがっていた。そして時は満ちた。ある満月の夜、神樹は神徒たちを引き連れて、街にくりだそうとしていた。


 薫消失より数ヶ月前のこと。

 子×12は深夜の見回りの際にある違和感を覚え、とある場所を探索していた(子×12は夜目が利くため暗闇でも探索ができ、さらに狐耳をピクピクと動かしながら周囲を確認する)。

「オリーブが穿ったとされる空の裂け目、その向こう側にわらわたちの知らない世界がある。以前から言われていた仮説だが、今こうして見てみるとわらわたちの生きる世界の鏡うつしのような所だな。そして──」

 子×12は高尚で優雅な存在感を放つそれを見上げる。「──神樹此処に在り、ということか」

 神樹の荒々しい樹皮と太い幹からは悠久の年月が感じられる。

「なんと立派な樹だろうか」子×12はその迫力と神々しさに思わずため息をつく。

 ザシュッ。

 子×12の左腕が斬閾で斬られた。だが子×12は動揺した様子を見せず、暗闇に潜む者たちに視線を向けていた。

「いやはやすまないね。無視をしていたわけじゃないんだ。ただ、左腕が蚊に刺されてしまって痒くて仕方なかったんだよ」子×12は斬られた左腕を即座に再生させた。「わらわの想定通りの動きをしてくれてありがとう」

 神樹のそばにいる者たち──神徒たち──は表情を変えることなく、淡々と話し始めた。

「挨拶のつもりだったのですが、どうも人間の身体は脆くて困ります」

「挨拶の仕方も分からないとは、そなたらは人間から何を学んでいたというのだ。いや違うな、そなたらの品位は所詮その程度というわけか」

「ご無礼をお許しください。残念ながら我々は人間から戦争の仕方しか学んでいないのです」

「そうか、ならば今から戦争をしようと言うのか?」

「いえ、今から行うのは戦争という大それたものではございません。単なる“蹂躙”です」

「それはまた“大それたこと”を。戦争と言っておけば大義名分が通用するというのに」

「それは誰に向けた大義名分なのでしょうか。人間同士の戦争ではないのですよ」

「あくまでも『神による人間への制裁』という解釈か。それならこちらは、人間として反逆の意思を示すとしよう」

「そんなこと言っているとバチが当たりますよ。そうですね、例えば神でも神徒でもない、ただの人間によって心臓を切り刻まれるとか、ですかね」

「人間。この場所に人間がいるというのか。それは想定──」

 ザシュッ。

「──死ぬとこだったぞオリーブ」子×12は切り刻まれた左腕を再生させ、斬られた左の髪を左腕で愛おしそうに撫でる。「今日は左腕がよく飛ぶ」

「避けるか、さすがは公共ゲキドクだ」オリーブは剣を払い血を落とす。「今生きていることを奇跡と思え」

「奇跡、わらわの大好きな言葉だ」

「最期に奇跡がおきてよかったではないか」オリーブは剣を強く握る。「奇跡は一度しかおきないから奇跡なのだ」

「そうだな、そなたは実に賢い。だがわらわは既に、神樹を見つけたこととオリーブの攻撃をかわしたこと、ふたつの奇跡を経験した。奇跡のオンパレードだ。さて次はどんな奇跡が待ち受けているのか、楽しみだ」

 オリーブは鼻で笑う。「──奇跡、嫌いなんだろ。私と同じにおいがする」

 子×12は感心したように頷く。「あぁそうだよくわかったな、わらわは奇跡が嫌いだ。大嫌いだ。だからこそ皆が寝静まった夜中にこうして歩き回り、奇跡が落っこちていないか探し回るんだ。奇跡が嫌いなやつほどそれを期待している。不幸なものだよ。……そうか、そなたも人の子というわけか。そなたは何を探しているのだ?」

「この世界をひっくり返せるやつを探している」

「そうか、それはご苦労。残念ながらそなたに奇跡はおこらなかったようだ。他を当たってくれ」

 オリーブは斬りかかろうとしたが、空間の裂け目から何者かの侵入を感じ取り、動きを止めた。オリーブは考える。この膨大な閾、どこかで見たことがある。どこだ、誰だ、私はあれを知っている。かつての私が、別様の私が知っている。オリーブの鼓動がはやくなる。世界から消された者が世界をひっくり返しにやってきた。これを奇跡と呼ばずしてなんという?

 オリーブが神徒たちに向かって叫ぶ。

「今から戦争がはじまる! 全身全霊で敵を撃て!」

 何者かの気配を察知したのはオリーブだけではない。子×12も神徒たちも、そして神樹もそちらの方に識閾を集中させたが、識閾の波が反射されず、閾でそれを認識することができなかった。その者は子×12に手を振り、叫ぶ。

「狐ちゃーん、助けに来たよー!」

 子×12は目を凝らし、その者が小柄な女性で銀髪であることを確認した。

「? はて、わらわに銀髪少女の知り合いはいたかな。ってあれ、鳥籠の中、いつの間に」

 気づいたときには子×12は鳥籠の中に入れられ宙に浮いていた。


 神樹は何者かの気配を察知した。“それ”は確かにそこにいるのだが、その存在を識閾で確認することができない。確認済みの未確認者。そういう“不自然な存在”こそ「恐怖」と呼ぶに相応しい。

 神樹の前に恐怖が訪れた。その者を決して生かしておいてはならない。その存在を真の眼で確認するために幹を裂き、こじ開け、顔をのぞかせる。烏が鳴き、瞬間、地平から朝日が差し込む。果たしてそこにいたのはかつて没収した書籍姫の面影を持つ少女であった。その女性は朝日を背に浴びながら宙に浮いていた。彼女は銀髪をなびかせ、獲物を見据える猛禽類のようにその緋い眼で神樹を見、それからゆっくりと地面に降り立ち、次のように言った。

「やぁ姉ちゃん久しぶり」

 神樹は彼女のことを知らない。それもそのはずで、彼女は能力を使いすぎた代償によって“世界から存在を消された存在”になっていた。

 彼女はオリーブに手を振る。「おはよう、アンタも早起きなんだね」

 オリーブは既に臨戦態勢である。右手の剣は日の光を受けて金糸雀色に輝く。

「構えろ。大切な人を失いたくないのであれば、私の全てを受け止め、生きろ」オリーブは剣を強く握る。

 西羅は驚いたような表情をする。「面白いこと言うじゃん」

「これが私の〈正義〉だ」

「じゃあウチがアンタの正義を実現させてやるよ」西羅がへへっと笑う。

 神樹の幹の裂け目から、淡墨桜の花びらが風に吹かれながら舞い落ちるように、神徒たちが次々と出てくる。皆、桃色の瞳と風になびいて揺れる桜色の髪、端正な顔立ちで、薄桜の着物のような服を着ているが、小柄な者、長身の者、気性が荒い者、既に臨戦態勢の者など様々おり、それぞれが打刀、薙刀などの刀や金棒、更には弓や銃などの武器を持つ。数千の神徒たちをまとめる長らしき者が言う。

「神に似たるものは誰か、神を司る者は誰か、そして神を裏切る者は誰か。親愛なるあなた、世界にとって不都合なあなたという存在を、残念ながら私たちは許すことができないのです。どうか、お許しを」

 西羅は肩まで伸びた髪を白い花がついたヘアゴムで結ぶ。「ごめん髪結んでて何も聞いてなかった。最初から言って。神に似たるものは、から。さんはい!」

「……」

「なんだよ、じゃあウチのこと許してくれるってこと?」

「いいえ許しません」

「そんなぁぴえんぴえーん、とか言ってるうちに準備が整いましたとさ」西羅は肩を回す。

 神樹、神徒たち、オリーブ。

「この空間女性しかいないじゃん、ってデコポンだったら喜びそう」

 女性はニヒッと笑い、言う。「しっかりと覚えておけ模造品ども。私は西羅せいら、アンタらが愛してやまない〈オリジナル〉だ」


 オリーブが瞬時に間合いを詰め、西羅に斬りかかる。西羅は紫電でこれを防ぎながら、神徒たちが放つ弓矢や銃弾をノールック斬閾で破壊、神徒たちの刀や万力鎖の攻撃にも小柄な体格ゆえの素早い動きで対応し、神徒たちを西羅の能力〈空論創造〉で創り出した鳥籠に閉じ込めて無力化する。神徒たちを閉じ込めた鳥籠は次々と消えていく──西羅の体内に連れ込まれて閾で圧死させられ、西羅の養分として吸収されたのである。

 閉じ込められた神徒たちの中には亜空間移動を使って鳥籠から抜け出す者もいた。西羅は金棒を振り回す神徒の前に移動させられた(亜空間移動は自分自身以外の人やものにも適用可能)。神徒は金棒を軽々と振り回す。

「鬼は外!」

 西羅はポケットに入っていた石ころを神徒に投げつけ、神徒の身体を貫通させる。金棒を斬閾で破壊、神徒の足を紫電で斬り、倒れたところに十字架を背中から刺して動きを封じる。

 西羅の刀さばきと連斬閾で神徒たちの首が次々ととんでいく。西羅は宙に浮かび、神徒たちの首に閾を流し込んでオリーブに向けて投げつけて爆発させる。オリーブは剣を大きく振り、西羅は足を斬られたがすぐさま再生させ、斬られた足を神徒たちに投げつけて爆発させた。

 神徒たちは神樹の幹の裂け目から次々と湧き出てくる。空を飛ぶ神徒たちが西羅を追いかけ、多彩な色の小雷砲を放つ。

「いでよ、魔法のほうき!」

 小雷砲は西羅を自動で追撃するが、西羅は空論創造で創り出した魔法のほうき(普通のほうき)に乗ってこれを避けていく。

「魔法使いといえばやっぱ杖だよね。そういやいい枝拾ったんだった」

 西羅はポシェットからかっこいい木の枝を取り出す。「呪文はええっと、あまざけたらば!」

 甘酒を飲んだ巨大なタラバガニが暴れ回る。

「あれ、なんか違うけどまあいいや」

 空を飛ぶ神徒たちに対しては連斬閾を放ち次々と撃ち落としていく。小雷砲のひとつがオリーブと入れ替わり、オリーブはほうきを剣で破壊、西羅は閾で身体を浮かせ、オリーブと西羅は空中戦を繰り広げる。その間も次々と神徒たちが小雷砲を放ち、地上の神徒たちも閾で身体を浮かせて西羅に斬りかかる。神徒たちは能力を発動する──「飛花ひか夢見ゆめみ玉響たまゆら百年ももとせ幾星霜いくせいそう、いまゆくすえは神ぞ知るらん」

 空間が歪む。空間そのものが西羅を滅ぼす意志を持った。空間をすりぬけるように翼の生えた神徒たちが現れる。広げた翼は十メートルを超え、頭の上には刺々しくも神々しい光輪が浮かんでいた。

「桜花の覚悟を受けて死ね」西羅に向かって複数の桜花雷砲おうからいほうが放たれる。

 神樹の裂け目から顔をのぞかせる巨人は、上半身を這い出して西羅を見つける。口を大きく開けて西羅に向かって最上大雷砲を放つ。

 オリーブは剣で斬りかかる。「影は鋭利に空を断つ」

 西羅は「旧約くやく新たなり」とつぶやいた。西羅はニヒッと笑う。

「最高の創造を!」

 人から造られた者のみ使用できる奥義あるいは必殺技、臨毒りんどく。西羅、臨毒の発動。すなわち、一時的に西羅は西羅自身をその内に創造した。

「臨毒。珀沙天蓋はくしゃてんがい

 神樹の巨人が倒れ、衝撃音とともに地面を揺らす。神樹は動きを止め、神徒たちも湧き出てこなくなった。

 オリーブは傷を受けてなお西羅を縦半分に斬り裂こうとしたが、西羅が身体の向きを変えたため西羅は上半身と下半身で真っ二つになった。西羅はオリーブの腹に十字架を押し当て(貫通させようとしたがオリーブの身体が硬く貫通させられなかった)、目の前で連斬閾を発動する。下半身の方は、近くの神徒を斬閾で斬ってその上半身と無理やり癒合させ、操り、神徒たちを次々と葬っていく。


 オリーブは西羅の上半身とともに落下する。十字架は消え、下半身が再生する。「〈空論創造〉があるからいいけど、ないと下半身すっぽんぽんになっちゃうんだよな。それだけが不都合だよねぇ」西羅は屈伸して脚の筋肉をほぐす。

 オリーブはよろめきながら立ち上がる。傷はまだ癒えない。「ここまで追い詰められたのはいつ以来か。なかなかやるではないかクソガキめ」

「えへへ、照れちゃうぞ」西羅が笑う。(作者「かわいい」)

「ここからは私もフルパワーでいかせてもらう」

「ぶぇっ」

「自分の強さを誇れ。今目の前にいる私は世界最強の“オリジナル”のオリーブだ」

「そうか、“本物”だったのか。だとしてもやることは同じだよ」

 西羅はふと思う。「そういや、オリーブはなんで神樹なんか守ってんの?」

「……自分自身を守るためだ。神樹を守るための守護ではない、自分を守るための、利己的な守護だ」

「アンタも大概人間だね。安心したよ」

 西羅はニヒッと笑い、緋色の瞳を輝かせる。「行くよ、第2ラウンド!」

 ──第22話「誰がための命」に続く

 戦場の桜花は愚者の血肉を吸い上げ、かくも美しく咲き乱れております。命の消費は合理と献身の結論であり、目的を果たした血肉は芸術として昇華されるのです。それが戦場における世の理であり、それ故にあなたがたには死んでもらわなければなりません。許してくれとは言いません、愚かな自分を呪いなさい。

 次回、第22話「誰がための命」。命が儚く散ることで世界は彩られる。

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