虐待
2045年2月某日 二人は最高級ホテルのスイートルームのソファーに向かい合って座っていた。
「「いじめ新法」が施行されてから1か月経つが、成果の方は上がってるかな?」
「はい、この一か月でいじめの報告は全く上がってこなくなりました。」
「うん、ただ奴らは隠ぺいするのが得意だからな。報告書だって平気で改ざんするからな、用心した方がいいぞ。」
「はい、監視員をさらに監視させています。さらに省庁内にもスパイを潜り込ませてありますので大丈夫だと思います。」
「分かった。じゃあ監視の対象をさらに広げよう。出来る限り広げていってくれ。」
「分かりました。」
「そうやって徐々に範囲を広げていって最終的には国中を徹底的に監視するんだ。別の犯罪防止にも使えるしな。」
「分かりました。」
「うん。ところでこの国に来て半年位になるが何か気になった事はないか?」
「はい、今、気になっているのは、この国は虐待のニュースがやたらと多いなという事です。」
「うん。」
「しかし、この国の国民は同胞を殺すだけではなく、我が子まで殺してしまうんですね。もはや異常ですよ。」
「そうだな。しかし家庭は学校以上に入り込みづらいからなー。対策が取りづらいんだ。各家庭にまで監視カメラを設置する訳にはいかないからな。」
「そうですね。何か良い方法はないんでしょうか?」
「うん。この国の虐待の問題は構造的な問題だという事は分かっている。」
「すみません。もう少し分かりやすく教えてもらえませんか。」
中略
「出産の許可制?」
「出産を望む夫婦には適性検査を受けてもらう事になる。夫婦の適性テスト、DNA解析、育った環境、・・・等のいろいろな調査して、虐待の可能性が低ければ出産の許可を出す。そんな制度だ。まあ、ほとんどの夫婦はテストにパスするだろうがな。できれば、そんな馬鹿げた政策はやりたくないがな。」
「・・・・はい。」
つづく