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ロリババアって〝職業〟なの??  作者: 森羅 葉
序章〝転生者〟
5/29

4の世紀を跨いだ“ロリババア”さん

あの歓喜と悲痛の叫びから実に四三〇年の月日が経過した。


あれからというもの、“彼女”―――もとい、ロイリーヌは自身の持つ魔力を表す『MP』の向上を目的として、様々な方法を試していった。

元々の身体の持ち主だったものも似たような行動をすでに幾重にも起こしていたようで、しばらくの間は特に変わりもなく時間だけが刻々と過ぎて行く日々が続いていた。


しばらくして、このログハウス付近で魔質に身を落とした生物が蔓延るようになってからは、それらの対処にも追われることになり、身の危険も迫る中で研究に没頭する日々を送る。

それから徐々にではあるが、おそらく元の持ち主が成し得なかったであろう成果を出し始め、二〇〇年を経過する頃には魔質化を鎮静する薬剤を生み出し、生物の命を奪うことなく魔質の軽快化あるいは除去をするまでに実力を積み重ねていった。


四〇〇年の経過が間近になった時にはログハウス内はおろか、その近辺までを快適に過ごせるように整備を進行し、ようやく自身の魔力操作にも自信を持ち始めており、前回時点での魔力数値を劇的に向上させることに成功していた。

下記の通り魔力値が表記されているが、誤記や誤植でないことは先に明記する。


≪MP 65536/ 65535≫


この頃には、紫黒色のローブを基調に、温暖期でも寒冷期でも快適に過ごせるよう温度自動調節機能を魔法で定着させた下着類を、さらにローブが不意にはだけ落ちても問題ないように機能性を重視した女性用衣類を、元の世界の女性が来ても何ら違和感のないデザインに拵え上げた上でそれぞれ着用している。


また、元々汚れに汚れており衛生的に問題だらけだったログハウスの二階部分は、今や年季の入った汚れ一つ存在しないほどに清潔な印象を醸し出すまでに綺麗な状態へ生まれ変わった。

真ん中にドカンと置かれていた壺は一旦、壁の端に押しやって中身を浄化させてから、ロイリーヌの衣類洗浄に一役買う洗濯機のような役割を与えられている。


紫黒色のローブは予備も含めて清潔にした以外は特に手を加えてはいなかった。

これは以前、ロイリーヌ本人の魂が愛着していたものであるが故の、元の魂が持っていた尊厳を尊重した上での対応だった。



四三〇年あまりを経過した現在でも、ロイリーヌの身体に成長の片鱗を感じることはなく、姿形は当時のままである。

ただ、彼女の周囲が彼女の努力や研鑽によって激変した通り、彼女の能力が当時のままであるわけではない。


当時歓喜に打ち震えておきながら、事実に直面してすぐ悲痛の叫びを上げていたあの時とは違う。

今なら≪創造:Lv8≫を思う存分使えてしまうのだ。ただ、あの頃と比較して、創造のレベルも上がっていることだろう。



「ふー。今日はこんなところじゃの」

 (ふぅ…今日はこんなもんかな)


慣れた手つきでステータスウィンドウを表示し、今日の成果を確認するようにステータスを眺める。



≪名前 ロイリーヌ・ベルブラッド・アウレニゾフ≫

≪職業 ロリババア≫

≪年齢 674≫

≪加護 【創造神アーシア】≫

≪称号 転生者 / 創造者 / 魔を究めし者 / 五系を極めし者 / 命を生み出せし者 / 生を慈しむ者≫

≪ラテロ 創造:Lv14-OverMAX / 浄化:Lv10-MAX / 製薬:Lv10-MAX 他≫



「うむ、いつ眺めてもよいの。最大化したラテロも増えておるのじゃ」

 (うん、いつ見てもいい。スキルレベルMAXも増えてきたな)


ここで『ラテロ』という聞き慣れない単語があることに気付くだろう。


前回では便宜上『スキル』と表記した箇所があったのだが、この世界ではスキルのことを『ラテロ』という分類で呼称していることを、ロイリーヌは当時、元の記憶から引っ張り出したのだ。

その記憶によって、正式な名称を理解するとともにおかしかった部分も正常化され、ウィンドウ上の項目は正しく表記されるようになった。

これに則って、スキルのことを以降は『ラテロ(スキル)』と表記する。


称号についても色々数が増えているのだが、二つ目の≪創造者≫については想像に難くないので今は説明を省くとして、四つ目の≪五系を極めし者≫が一際目立つのではないか。


詳しい説明は然るべき時まで置いておくとして―――

一先ず簡潔に説明すると、この世界に於ける『属性』の概念は五つの系統に分けられており、それらを一括して『五系』と総称している。

ロイリーヌ曰く「ラ行を知り得ておれば造作もない」とのことらしい。



「向こうの農作物は三月みつきほど後…彼奴等からの勿怪もっけもまだ起こっておらぬ…かの」

 (あっちの作物はあと3ヶ月…生物の異変は今のとこなし…と)


日々の成果を着々と上げてきたロイリーヌからすれば、今のこの環境はまさしく『スローライフ』と言ってもいい。

むしろ元々は“彼”だった頃、ロリババア系を主体にしたアニメが唯一の楽しみだったほど、精神的に疲弊していたからこその叶わぬ夢物語であった。

まさか自らが事故死という憂き目にあってから、その夢が叶うとは想像だにしなかっただろうに。


「此処に訪れてから人間と顔を合わせることもないからのぅ。今頃になって突如鉢合わせることがあっては困るがの」

 (ここに来てから今まで人と会ってないからなぁ。まぁ、今更ばったり会っても困るけど)


ただ、大体のライトノベルやなろう小説の場合、こういう時にフラグが建ったりするものである。

今のロイリーヌの発言も、例外ではなかった。


脇の草陰から木の葉が擦り合う音がした。

先立って気配を察したロイリーヌが、音と同時に勢いよく音の方へ振り返ると、一人の女性が現れた。



「……あ、貴女は…!?」



この女性は一体何者なのだろうか―――




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