第六章 全国ネット! 初めての漫才!! (17)
お月様が沈んでお天道様が顔を出す。
見事すぎる快晴だ。
主役の二人も楽屋にいた。
ついに本番、二十分前!!
瑠伊は楽屋の時計を見た。
いつもなら緊張なんて微塵もしないキャラクターなのに、この日は特別な緊張感があった。
手の平に人という文字を書いては飲んでいるが、緊張という鎖が外れない。
一万人は飲んでいるのに。
錆もつかないチタンで出来ているかもしれない。
本当にそれぐらいの緊張である。
「瑠伊さん、瑠伊さん」
「あ、はい!」
角田に声をかけられ瑠伊は我に返った。
「本番の五分前には舞台裏でスタンバイですから」
「はい」
「相沢君も。頼んだよ」
「ええ、任して下さいよ。今日から僕と先輩の伝説の幕が開かれるのです」
完全にボルテージが上がっている。
「今日限りです!!冗談じゃないわ、勉強もあるのに」
「そう言わないで下さいよ、篠原先輩」
「ぶっつけ本番で本当になんとかなるでしょうね!?」
「当然です!篠原先輩は僕のリードに合わせてくれればいいのです」
ドン!
相沢は胸板を叩いた。
しかし力加減をしなかったらしい。
「ゴッホ、ゴッホ」
思い切り咳き込んだ。
瑠伊は呆れ、角田は安心した。
「じゃあ、お二人とも頑張って下さいよ」
それだけ言い残して角田は楽屋を出ていった。
「ところで先輩、コンビ名ですけど」
「コンビ名?ドアに張りつけてあった、ドリームズのこと?」
瑠伊はドアを指した。
「ええ」
「なら、いいんじゃない。意外と合ってるかもよ」
と言うよりも、そのままだ。
「目指す道は違うけど夢を追ってることに違いないから」
「そうですよね」
瑠伊の意見に同意した。




