第六章 全国ネット! 初めての漫才!! (14)
奈々子は、
「その前に今回の台本とか出来てる?」
ボルテージが上がり調子の相沢に聞いた。
同時に止まった。
嘘のように、ピタリと止まった。
どんなに高性能のビデオカメラでも、こうも完全な一時停止をやれる機種はない。
「どなんや。ウチも聞きたいな」
静香も聞いた。
相沢は立ち上がり、
「そんじゃ、僕も勉強を... ... ... 」
「待ちや」
去ろうとするが世の中甘くない。
ガシッと、静香に捕まる。
「出来てないんやな、台本」
「だいたい出来てるだけでもいいから。後は私も手伝うから」
二人の迫力が迫る。
相沢は覚悟を決めてバツが悪そうに言った。
「台本、書いてない」
「なんやて!?本番まで一週間しかないんやで」
静香が声を張り上げた。
奈々子も「あちゃー」と、頭を叩いた。
「どうするの、圭介!!瑠伊さん、てっきり圭介が書いているものだと思って受験勉強に専念してるのよ!!」
奈々子は大真面目に激怒した。
僕は書いてるなんて一言も言ってないぞ。
相沢はそう言いたかったがそう言った場合の二人の追求と瑠伊の鉄拳があまりにも恐ろしかった。
「でもさ」
この場合、二人で話し合うのがと言いたかったが、言う前に静香が突っ込んだ。
「つべこべ言う前に早急に仕上げや」
「まさか、ぶっつけ本番でどうなるかと思ってるんでしょうね」
奈々子は指摘した。
ギクリ。
相沢は冷汗をかいた。
「そ、そんな冗談」
かなり動揺している。
二人は確信した。
これはやっていないな、と。
相沢も確信した。
取りつく島がない、と。




