第六章 全国ネット! 初めての漫才!! (13)
「あ、紺野さんもいたんですね」
「いたとは失礼やな、漫才師。ウチはマネージャーやで、色々と打ち合せもあるんや」
「アルバイトでしょ?」
「それを言われちゃあ、それまでやろ」
奈々子は相沢を捜してユメノ荘を歩き回った。
真っ先に物干し台、次に相沢の部屋、しのぶの部屋、自分の部屋、キッチンルームとユメノ荘ランナウェイをして辿り着いたのがリビングであった。
リビングのテレビが静香の好きなお馬ちゃんレースのチャンネルになっているが、これは皆が分かり切っている事なので、真面目な奈々子も黙認している。
奈々子は静香の隣で悩んでいる相沢に、
「圭介、どうしちゃったの!?」
ポンと愛敬で背中を叩いた。
だが、反応がない。
普段であれば「晩ご飯、どれかな」とかでボケてくれるのに、俯いたまま沈黙していた。
奈々子はてっきり、
『瑠伊さんとやる漫才ネタでも考えてるのかな』
と思って相沢の視線を追ったが、コンマ三秒で訂正した。
ソファーに胡座をかいでいる先には雑誌が散らばっている。
どの雑誌にも相沢と瑠伊の写っている写真があるが、どうもそれに不満があるらしい。
「いい加減、諦めや。本番の視聴率を考えれば、仕方のない決断やったんや」
静香はビールを飲んで鯣を噛っていた。
相沢にも鯣を噛らすが、
「何故、こうも待遇が違う!畜生!!お笑いの男の扱いなんて所詮この程度なのかっ!!」
真っ赤な目を見開いて相沢は吠えた。
真剣に雑誌を見ていたのだろうが、所詮お笑いの扱いというのはこんなものだ。
瑠伊に比べてアップで写っているページが少なくても、談話している部分が一ページも満たなくても、お笑いのキャラクターなら覚悟の上なのだ。
「こんなものやな。組んでる受験生がああも美人やと雑誌の編集かて選ぶのは当たり前や」
「ああ、ド畜生!!絶対に見返してやる!!一年後、必ず後悔させてやるっ!!」
鞭を打つ静香に相沢は更に吠えた。




